#27 だって、オレの願いでもあるんだよ!
胃が荒れていたことなんてすっかり忘れて、出された料理は全部食べてしまった。さすが王様、どれも食べたことのない絶品でした。ごちそうさま。
オレがせっせと食べてる間、ブランカとプレーナは例の魔法酒をちびちび舐めていた。ブランカ、大丈夫なの? かなり薄めてあるとは言っていたけど。
呑むと本性が現れるのは人形も同じなのか、ブランカはとろんとした目で静かに、プレーナはハイテンションでオレに絡んできた。王様の視線が痛いんですけど。
「あの、王様はなんでオレ達が門の外にいるってわかったんですか?」
「途中まで乗り合い馬車に乗っていただろう? その乗客たちが噂していたよ」
あ、口止めするの忘れてた。王様が敵だったらやばかったな。
「きれいな女の子の人形と聞いて、絶対にプレーナだと思った。すぐにでも駆けつけたかったんだけどね」
王様だし、そういうわけにもいかないよね。大変だ。
「ところでハヤ君、お礼は何がいい? ブランカちゃんも」
ん、今さらじつはオレ達がプレーナを見つけたんじゃなくて、プレーナの方から来たとは言いにくいな。プレーナが研究所を破壊したことも知らないみたいだし、説明しにくい。
「……オシャ・レイ陛下……お願いがあります」
珍しくブランカが自己主張してる。なんだろうと思って見ていたら、いきなり席を立って部屋を出ていった。
少しして、スーツケースを抱えて戻ってきた。もしかして。
「これを……元どおりきれいに直していただけませんか……?」
スーツケースから取り出したのは、焼け焦げた服……オレがプレゼントした服だ。
「プレーナの顔を直したみたいに……」
「ん、いいよ」
王様はにこにこ笑って服を撫でた。手が光って、みるみるうちに服はきれいになって、まるで新品みたい。すごいな、魔法。
「これでいい?」
「はい! ありがとうございます……っ」
ブランカはうれしそうに服を抱きしめて、満面の笑みを浮かべた。オレもうれしい。
「で、ハヤ君は?」
この王様なら、本当になんでも願い事を叶えてくれそうな気がして、オレは勇気を出してお願いしてみた。
「えっと……ブランカの情報の容量を、プレーナくらい大きくすることはできますか?」
「ハヤ? それは……」
あなたのことではない、と言いかけたブランカに目配せして黙らせる。だって、オレの願いでもあるんだよ?
「ふむ……プレーナの設計図は保管してあるから、新しい研究所を作れば可能かな。時間はかかるけど」
「や、そんな大掛かりでご迷惑ならいいんです。すみません」
「迷惑ではないよ。どちらにしても、プレーナの定期検査のために必要だし」
まさかこんなにスムーズにいくと思ってなかったから、ちょっと拍子抜け。時間なんてどれだけかかってもいい。それでブランカがもっと自由にいろんなことを感じて、人間に近付けるなら。
「……ブランカの心の容量を大きくして、どうするつもり?」
「プレーナ?」
「私から、ブランカの情報を抜き取って、戻すのね! そんなのイヤ! これはもう私のよ!」
プレーナが殴ったテーブルが真っ二つに割れた。なんて力だ。椅子を掴んでオレの方に投げつけたのを、王様が魔法の壁で防いでくれたけど、でもそのすきに羽交い締めにされてしまった……!




