#28 オレは覚悟して目を閉じた!
背骨が折れるんじゃないかと思うくらいきつく締められて、声を出すどころか息すらできない。油断した。王様といちゃいちゃしてるから、落ち着いたと思っていたのに。
「ハヤを離しなさい!」
ブランカが叫んで手を振り上げる。勢いよく道化人形が飛び出して、ナイフを構えた。や、こっちに向けないで!
「あなたから情報は抜き取らないと言ったでしょう!」
「だって……!」
問答無用と道化人形が斬りかかる。ひぃっ! オレを締め上げたままプレーナは後方に飛び退き、割れたテーブルを蹴り上げてナイフを弾いた。
君たち、戦闘用じゃないよね? なんでそんなに戦い慣れてるの?
「私、消えたくない……胸のあたりがほんわりするこの気持ち、消したくない!」
だから、消さないって言ってるじゃん! 消す前提で作られたことがトラウマになってるのか?
「ちょっと話が見えないんだけど、二人とも落ち着きなさい」
王様が両手から光の輪を出して、ブランカとプレーナを拘束した。……あの、オレもプレーナと一緒に拘束されてるんですけど。
「情報がどうのって、なんのこと?」
説明したいけど……しゃべれません……
いつものブランカならすぐに冷静になってくれるんだけど、今は酒が入ってるからなあ。光の輪をはずそうともがいたり、指先だけで道化人形を動かそうとしたりと、とてもじゃないけど話はできそうにない。
「ん、ブランカちゃんもけっこう力があるね」
王様が真剣な表情になる。ブランカは、人間には危害を加えない……はず……
「うう、ハヤを、助けなきゃ……!」
渾身の力で光の輪を砕いた。しゃがみ込んだ王様が腕を押さえてうめいてる。大丈夫? 吹っ飛んでない?
って、もう目の前にブランカが迫ってる。オレは覚悟して目を閉じた。
耳元で重い金属がぶつかるような音がして、身体が軽くなる。おそるおそる目を開けるのと、ブランカが抱きつくのとが同時だった。
「ハヤ、どこも痛くない?」
「う、ん、大丈夫」
プレーナはどうなったんだろう。振り返るのが怖い。
「ハヤ……もうプレーナに優しくしないで」
「え?」
オレ、プレーナに優しくしたっけ? 二人にケンカしてほしくないと思ったし、まあ生い立ちはかわいそうだなって同情はしたけど。
「ずるい、ブランカ。私だって、ハヤのことが好きなのに!」
「それは私の記憶を取り込んだから、そう思っているだけよ。辛いなら、消せばいいじゃない」
相変わらず容赦ないな。でも、たしかにその通り。
「プレーナには王様がいるじゃん。王様を好きになれば、もっとほんわりした気持ちになるんじゃない?」
「でもでも……」
「ごめん、プレーナ。オレは、ブランカが好き。君がブランカと仲良くしないなら、君のことはきらい」
ちょっとキツイ言い方だけど、嘘とかが通用しないんだよね、たしか。これで伝わったかな。
プレーナはがっくり肩を落として泣きそうな顔をしてる。ほんと、ごめん。
「ん、きちんと説明してくれるかな。プレーナは、ブランカちゃんから情報を盗んだの?」
「あ、盗んだわけじゃないんです。容量がいっぱいになって動けなくなったブランカから情報を抜き出して……」
「勝手に自分に取り込んだのよ」
やっぱりもう魔法酒を飲ませるのはやめよう。憎しみを込めて言うブランカが、苦しそうだ。理性では抑えきれないほどの感情が溢れ出してるんだ。
「ごめん、ブランカ。ずっと我慢してたんだね」
「……」
髪を撫でてあげると、オレの胸にすがるようにしてうなずいた。
「えっと、プレーナがブランカちゃんの情報を取り込んで、自分の情報と混ぜちゃったんだね? だからプレーナ、少し落ち着いた雰囲気になっていたのか」
え、じゃあ、昔はもっと暴れん坊だったの? そりゃ、一緒に遊ぶなら鍛えないとだ。王様の強さと魔法のすごさの理由がわかった気がする。
「だったらさ、プレーナの情報を複製して、一つはプレーナに戻して、一つはブランカちゃんの情報を分離させてブランカちゃんに戻したら?」
「そんなこと、できるんですか?」
「さあ? やったことはないけど、そういうことだろ?」
王様、最高。オレ、あんたのために何でもするよ。だから、ブランカを助けて。
「プレーナ、私がハヤ君よりも幸せにしてあげるよ」
「幸せって何? 好きよりいいもの?」
「そうだよ」
見てるこっちが恥ずかしくなるようなことを、この王様は平気で言うんだな。
オレも、負けないもんね。
って、ブランカ寝てるし!(人形って寝るの?)




