悪魔
「アハハハ!!両親相手には手が出せませんか!?」
笑い、叫ぶ男
「さぁ!殺して差し上げますよ!!」
男が刃影に近づき、銃を構える
「腐れ野郎が」
ヒュン!!
刃影が短刀を振り回す
しかし、コレを男は躱す
「危ない!危ない!!」
「両親に対するショックで、動けないと思いましたよ!!」
「俺をそこのヘタレと一緒にするな」
「それは失礼」
「ですが、コレはどうでしょう?」
男が銃を刃影の母親の頭に押しつける
「ククク…」
パァン!!
頭から血を噴き出し、地に墜ちる刃影の母親
「さぁ!どうです!?」
「…」
平然としている刃影
「親の死に悲しまないのですか!?」
「非情な子供ですね!!」
「さぁ!さぁ!!」
男が刃影の母親の頭を掴むと、母親の傷は治り、また立ち上がる
「クハハハッハハ!!」
パァン!!
また、頭を撃つ
「…はぁ」
ため息をつく刃影
「どうしたのです!?」
「悲しみなさい!悲しむのです!!」
また、男が刃影の母親の頭を掴む
「父親も殺して欲しいのですか!?」
パァン!パァン!!
刃影の両親を撃つ男
「何故です!?何故、悲しまないのです!?」
「さぁ!さぁ!!」
傷を治しては撃つをくり返す男
それを何度もくり返す
「何故ですか!?」
「何が、だ?」
「この2人を見たとき、アナタは沈黙した!!」
「殺した両親を見たから!!」
「何故、悲しまない!?何故、私を憎まないのです!?」
「お前はバカか…?」
ため息をつく刃影
「そんなゴミみたいなの殺して、楽しいか?」
「…ゴミ?」
「俺が沈黙したのは、ゴミを見たからだ」
「お前も、ゴミを見て、良い気分にはならないだろう?」
「な…!!」
「ゴミなんだよ、所詮は、な」
「ならば!両親を殺してみなさい!!」
「出来るはずがありません!もし、出来るのならば、アナタは正真正銘の悪魔…」
その言葉が言い終わらないうちに、刃影は両親の首をはねた
ゴロゴロ…
男の足下に、2つの頭が転がる
「---ッ!!」
「悪魔だと?」
「面白いこと言うじゃねぇか」
「俺は、悪魔だ!!」
「外道だ!!」
「クズ野郎だ!!」
「カスだ!!」
「最低野郎だ!!」
「その、悪魔以上の悪魔が生み出した記憶のゴミなんざ…」
「切り捨てるのに躊躇すると思うか!?」
爆笑する刃影
「…秋雨君」
「…何ですか?」
「ここからは見ない方が良い」
「?」
「目の毒…って言うか、人生の毒だから」
「…はい」
秋雨は目を閉じ、耳を防いだ
その後、秋雨に聞こえたのは、刃影の笑い声と何かを切り刻む音
しばらく、叫び声が聞こえていたが、それも聞こえなくなっていった
「もう良いよ、秋雨君」
首狩の一言で秋雨は目を開けた
「…首狩さん」
秋雨の目の前には、暗闇でよく分からない何かと下を向く刃影
しかし、その刃影の顔は笑みであふれていた
「…」
「行こう、秋雨君」
「…はい」
リムジンに向かう3人
「終わりました」
「おお!ご苦労様です!!」
「執事さん、本家に急いでください」
「次、何かが急襲してくるかも知れませんから」
「は、はい!!」
その後、リムジンは何事もなく本家に着いた
「ご苦労様でした!」
そう言って、豪勢な身なりの男が走ってきた
どうやら、本家の主人らしい
「護衛、ご苦労様です!!」
そう言って、主人は美海を抱き上げた
「これは、報酬金です」
袋には、大量の札束
「では、失礼…」
「ちょっと待て」
刃影が主人を呼び止める
「その美海という子供、アンタの子か?」
「はい、そうですが…」
「両目の色が違うな」
「はい…、生まれつきの病でして」
「病?それは違うな」
「!?」
「今回襲ってきたヤツの目的は、アンタに対する復讐ではなく、美海の誘拐」
「そうだろ?黒幕の執事さん?」
「!?」
辺りが騒然とする
「何を仰るのです!?お嬢様を誘拐など…!!」
「あの男は、お前が雇ったヤツだな?」
「計画も、お前が立てた」
「違うか?」
「いえ、その様なことは…」
「あの男は、俺達の誰にも触ってないのに天鹿和を幻影として召喚した」
「それは、俺達の所に依頼に来たアンタが天鹿和を見たからだろう?」
「見ただけでは、天鹿和の特性は解らなかった…」
「だから、あんなヘマをした」
「道にしても、幻覚を見せられていたって事は、道も見えてない、と言うこと」
「そんなヤツが、事故も起こさず、道を走れると思うか?」
「…恐ろしいですね」
「そこまで解るとは」
「執事の爺さん、アンタは美海を救うつもりだな?」
「…はい」
「どういう事だね!?」
主人が叫ぶ
「「美海を救う」など、戯れ言もいい加減にしたまえ!!」
「いい加減にするのはテメェだ!!」
「その子からは、微量だが、生命エネルギ-が放出されている!!」
「両目の色が違うのは、体にエネルギ-をブチ込んだからだろう!!」
「突然変異で、目が変色した!違うか!?」
「何を、戯れ言を…」
「実の娘にそんな事…」
「娘より、金が大事なんだろう?」
「その実験の結果を裏社会の連中に売れば、膨大な金が手に入るはずだ!!」
「人工的に能力者を生み出せるからな!!」
「この地位までのし上がったのも、金が必要だったからだろう!!」
「そこまで言うなら、証拠は有るのかね!?」
「キサマに踏み潰された奴らは揃って言うんだよ!!」
「あの男は「悪魔だ」って、な!!」
「踏みつぶした奴らの言葉など、世間は信じない!!」
「だからって、そいつらに、ネタばらしをしたのが間違いだったな!!」
「まさか…!!」
「そうだ!キサマが俺の親が勤めていた会社を踏みつぶした!!」
「ま、そのおかげで、ゴミの駆除も出来たがな…」
「さて!今、この計画を諦めたのなら黙認してやる!!」
「ただし、金は貰うがな!!」
「仕方ありませんわね…」
3人と執事の背後には、貴婦人が立っている
「全員、構えなさい!!」
大量の銃口が、3人と執事に向けられる
「主人ともあろう者が、とんだヘマをしましたわね…」
「す、すまない」
「いえ、良いですのよ」
「ここに任務に来た3人は、娘を守って戦死した」
「執事も娘を守って、死んだ…」
「立派な死に様じゃなくて?」
笑みを浮かべる貴婦人
「…秋雨君、君は執事さんを守るんだ」
「え?」
「おい!クソババァ!!」
刃影が叫ぶ
「まぁ!何て汚い言葉使いでしょう!?」
「能力者を舐めんなよ…?」
刃影と首狩が武器を構える
「失せろ!悪魔夫婦!!」
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