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侵略者に愛されて……  作者: 尾岐多聞
第1章 ソウルメイトはインベーダー!?
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第6話 影神団の妖姫②

 阿津間景之と久堂亜美紗の出逢いは4年前に遡る。

 当時福岡に拠点を構えていた彼は、闘主の指示によって鳳凰陣に次ぐ新たな傘下軍団を遠征長の帯刀匡三郎と二枚看板を張っていた副将格の紺堂武彦に率いさせることにしたのだ。


 もとより影神団の異空戦闘艦(バトルシップ)はただ1隻、白雷龍と同クラスの【シャドーロック】があるきりだが、白皇星(ライバル)とは異なり彼らには定期的な地上世界帰還という〈特権〉が与えられているため、交互に使用すればノープロブレムだ。


 さて、ほぼ同年代の若き総帥から()()()を持ちかけられた時、武彦の反応は意外なことに歓喜よりも困惑が勝っていた──実際、二人の関係は決して悪くはなく、むしろ共に死線をくぐり抜ける中で互いの力量を勝利…いや生存に不可欠の要素と深く認識するに至っていたのである。


 とはいえ、全ての異空遠征軍を統括する絶対者からの指令となればむろん従わぬ訳にはいかぬ──それに紺堂は密かに無二の戦友の流儀……特にそのファイトスタイルに不満がない訳ではなかったのだ。


 名は体を表すではないが、とある流派で免許皆伝にまで登りつめた剣士の末裔であることを最大のアイデンティティとする帯刀は、当然の様に命を託す武器としてひたすら刀匠である父が遺した日本刀【風牙(ふうが)】に固執し、白兵戦の命綱である戦闘服(バトルスーツ)も戦国武者の鎧兜をほぼ完コピする徹底ぶり──そして極めつけは艦内はおろか闘幻境(そと)においても、チームシンボルの金色の鳳凰と信条とする〈常在戦場〉の四文字を背中に赤く染め抜いた、幕末の浪士を思わせる和装を纏うコスプレ趣味であろう。


「──一体何時代人なんだよ、オマエは?」


 そう冷やかしている内はよかったが、次第にメンバーたちが匡三郎が標榜する〈武士道〉にかぶれ始め、嘆かわしいことに奇抜な服装をも模倣するに及んでからは、サングラス・革ジャン・バイクを〈三種の神器〉と心得る“世紀末バイオレンス派”の自分とはもはや水と油ほども異なる存在に成り果ててしまったと痛感する日々であったのだ……。


 そして決別を予感させる小さな綻びは、それから時を待たずして発生していたのである。


「そろそろ(タケ)さんも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だって我々大和魂漲る日本男児じゃないですかぁ……」


 ツートップを除く12人のメンバー中最も狂信的な帯刀信者であり、今やフラッグシップすら()()と呼ぶお調子者エンジニアの富川が執拗に絡んでくるのにとうとうキレてしまい、柔道技の大外刈りで食堂の床に叩き付けて白目を剥かせてしまったのだ。


「バカ野郎ッ、民族のアイデンティティってのはな、上っ面のファッションなんかじゃねえ、心意気に宿るもんなんだよッ!


 その証拠に今オレが使った技は何だ?

 れっきとした日本武道の技だろうがッ!

 浮ついたゴタクをグダグダ並べるヒマがあるんならな、黙々と後ろ受け身の練習でもやってろってんだッ!その方がよっぽどテメエらの常在戦場ってご大層な旗印にふさわしい行動だぜッ!!」


 騒ぎを聞きつけて駆けつけた匡三郎が代わりに謝罪してその場は事なきを得たが、もはやその配下たちとの関係は修復不能の域に達してしまったと武彦自身は認識していた──とはいえ、未だリスペクトを持ち続けている遠征長と(たもと)を分かつ気など微塵もなかったのであるが……。


 結局、肝心の戦闘面においても主敵のエクルーガよりもライバルである白皇星との鍔迫り合いに終止した2カ月ほどの実りなき遠征を終えて帰還した紺堂を、いつになく張りつめた表情の阿津間総帥が待ち構えていたのであった。


「ですが、問題はメンバーですよね──これから影神団の命懸けの任務に耐える若者を一人ずつ発掘するのも中々()だ……“一騎当千でありながら係累を持たぬ天涯孤独の若者(ツワモノ)”なんて都合のいい存在がそうそう転がっているものでもないし……」


 されど、男の自分から見ても思わず悩殺されそうな蠱惑的な笑みを浮かべながら景之は意外な事実を告げた。


「まあその点は任せてくれたまえ……とりあえず()()()()()()と真正面から対立しそうなコチコチ頭の面子でないことだけは請け合おう──かといって影神団きってのタフガイたる紺堂君にピッタリの親和性を有するとも思えないんだが、まあ仰せの通り世の中そんなに都合よく行くもんじゃないからねえ……とにかく一度彼らの()()()に会ってみないか?」


 かくて2日後、二人で赴いた市内のカフェにて武彦は全国屈指の美人の産地として知られる当地においても一際玲瓏な輝きを発散する22歳の久堂亜美紗に邂逅したのであった。


 


 


 




 

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