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再始動勇者20

 翌日、黒焦げになってしまった魔術機械の眠る、地下研究施設への扉は固く閉ざされることになった。

 事情は身分を明かしたアルト達が説明し、複製人間に対する警戒が、国王から、全国民へ呼びかけられた。

 まだ不安はあるものの、これで複製人間側も簡単には動くことは出来なくなった。

 しばらくは、この件に関して、膠着状態が続くだろうとの見方だ……。

 結局おじさんは、家には帰ってこなくて……そのまま、行方不明になってしまった。

 もし僕が、ジョシュア・シアセンを追いかけていくのなら、また、どこかで会うかもしれない。

 今度はどんな風に再会するんだろうか……。

 あんまりいいイメージは湧かない。

 アルトが陰で連れてきていた(まだ姿も見たことがない)お供の人達は、この街に駐留し、複製人間の動向を監視することになるらしい。

 城の内部の人間のどこまでが複製人間なのかわからない以上、そうする方が安心だろうという話だった。

 どうにかして見分ける方法がわかれば、劇的に対処しやすくなるんだけど……。

 アルトは荷物を纏め、いつでも国へ帰れる状態になっていた。

 後は僕の動向次第という状況で……また、話し合いの席が設けられる。

「……そういうわけで……一連の事件は、一応の終わりが見えたっていうことになるのかな」

「まだ終わってないけどな」とアルト。「とりあえず、打てる手は打っておいたというだけで……根本的な問題解決に近づくには、まず、複製人間自体をちゃんと調べてみなければならないと思う」

「父の――複製人間の死体は?」

「保管済みだ。何かわかればいいんだが」

「何にしろ複製人間を生み出す大元がどこにいるのかもわからないし、後手後手で対処していくしかないわけで……」

「まあ、大掛かりな装置が必要だから、その場所を特定して潰して回ればかなり抑制可能だ」とアルト。「私は自国へ帰ってその辺を何とかしなければならないわけだが……」

「僕はアルトに協力する」と僕はいう。「まあ……正直、そうすることは決まっていた気がする」

「では、ワシも同行しよう」とバヌガス。

「バヌガスは、自分の国のことはいいのか?」

「もうしばらくは、何とか堪えてもらうしかありますまい。それに……ワシ一人が帰ったところで、状況は変わらんでしょうからな」

「すまない」とアルト。

「そもそも今回の件で最も活躍なされたのはアルト姫一行であって、優先順位は何も間違っていないのでは?」

「まあ、私はヒロカズが決めるのが一番いいと思う」とアルト。「どうする?」

「アルト、バヌガス、の順で行こうと思う。いいかな」

「もちろんですとも」

「わかった」とアルト。

「――で、他の人達だけど……」

「私は同行する」とシアーがいう。「興味があるんでね」

「私も……行っていいんでしょうか」とシスター、メイが遠慮がちにいった。

「基本的に、行きたい人間は全員連れていくよ」と僕。「もちろん、大変だと思うけど……」

「アキはどうするんだ?」とアルト。

「もちろん行きますよ。だって……寂しいですし。前はそういうのも耐えられましたけど、多分、今はもう、耐えられないですから」

「そういう理由ということだけど、良いのか? ヒロカズ」

「問題は無い。アキのことはみんなで助ければいいし……そもそも、根性はある」

「旅は慣れている方なので、大丈夫だとは思います」

「ミライは?」

「私もヒロカズについていきます。理由は……わかりません……」

「じゃあ、ミライも……。全員で行くとなると、家を空けることになっちゃうけど、アルトの護衛の人達をここに住ませたらいいと思わないか?」

「いいと思うぞ」

「決定だな」

 それから三日後……全員旅立ちの準備が整い、自宅前に集合する。

「結局、この家で暮らしたのもほんの短い間だったな」と僕。

「正直、気に入ってたんだがな……」とアルト。「まあ、仕方ない。いつまでもここでのんびりしているわけにはいかないから」

 複製人間の話は国中に広まって……一応、手柄は僕、ということになっている。

 複製人間の話自体がやや難解なこともあって、いまいちピンと来ていない人も多いけど……一応勇者としての尊厳は取り戻したといってもいい。

 逆に、白の会は今後、立場は危うくなっていく……。

 大丈夫かな……あの子。

 一応気にかけてくれとは話してあるが……。

「また白の会のことを考えているのか?」とアルト。「自業自得だから放っておけといいたいところだが……悪いようにはならないさ。多分」

「そうだといいんだけど」

「どちらにしろしばらくは複製人間への疑心暗鬼でそれどころじゃない」

「そうかもしれない」

「しかし、折角お前への支持が高まってきたところでここを去らないといけなくなるなんてな……」

「まあそういうものだよ。勇者っていうのは」

「そうなのか?」

「世界を全て救うまでは振り返らないものさ」と僕。

「……微妙にかっこいいと思ってしまったぞ」

「流石ですな」とバヌガス。「最初に会った時と比べると本当に頼もしくなられた」

「これが自然体ですよ」と僕はいう。「最初の萎縮しきった僕と比較すれば、多少は頼もしく見えるのかもしれませんが……多分、僕は相当普通です」

「でも、普通というのが一番いいのかもしれないぞ」とアルトがいう。「普通でない状態を続けていれば、いつか、必ず破綻するからな」

「頭が良すぎておかしくなるのと一緒かもしれない」と僕。

「まあ……近いのかな」とアルト。「頭がいいのに破綻する……というのは、どこか……矛盾している気もするが」

 破綻しているのはこの世界なのか、それとも、ジョシュア・シアセンの新世界の方なのか……。正直、わからないところはある。

 ただ……ジョシュア・シアセンをまともだと思えない気持ちはある。

 逆にいえば――ジョシュア・シアセンから見たこの世界は、まともじゃないのかもしれない。

 だから、今現在破綻しているこの世界を、創り換えようとしている。

 といっても、相当少数派だろうけど……。

 ほとんどの人間は、普通なわけだから……ジョシュア・シアセンの考え方は理解できないということになる。

 だから……ジョシュア・シアセンは、普通の人間を全て強制的に創り換える方法を取るわけだ。

 説得も何もあったもんじゃない。

 一方的な殺戮と同じ感覚でそうしているだけだ。

 さあ、ジョシュア・シアセンがまともであるか、考えてみようか。

 まあ、まともだと考える人は少ないだろうけどね……。

「ジョシュア・シアセンの新世界がまともだったとしても、アプローチがまともじゃない」と僕はいう。「そっちの世界がいいっていうんなら、正々堂々開け広げにして、支持を集めればよかったんじゃないか? だから……もしその新世界がまともだったとしても、既に終わってるんだよ。ジョシュア・シアセンは」

「ああ、頭がいいのに破綻している例だな、それ」とアルトがいう。「なるほどな……」

「ジョシュア・シアセンも、勇者に一本取られましたな」とバヌガス。

「でも、しぶとそうだけどね……実際は」

 無限に生き返ってきそうな、そんな予感がする。

 いや……実際生き返る……。

 想像しただけでうんざりする。

「装置を破壊し続ければいつか収まるさ」

「無限に鼬ごっこをさせられる羽目になるけどね……」

 ジョシュア・シアセンに何でそんなアプローチを取ったのか問いただしたところで、お前らが愚かだからだとかいいだすところが目に見える。

 自分が受け入れられないということを先に理解してしまい、その努力もしない。

 強制した方が早い。

 そういう結論だ……。

 要は、馬鹿にしてるのさ。

 普通に生きている人達全員を。

 だから、そんな真似が出来る。

「じゃ、そろそろ行くか……」

 実際本人に会って確かめるまでもないのかもしれない、と思い始める……。

 それでも、行かないわけにはいかなかった。

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