第二十六話
その夜、今日のことを引きずりながら夕食を作っていた。自分が骨折しているときに手伝ってもらったことで真心はある程度できるようになっていた。同じく手伝っていたはずの愛は全くダメ。にんじんの皮むきを頼むとどどこまで剥いたのかわからないのか何周もする始末。最終的には半分くらいの暑さになるニンジン。にんじんがかわいそうになる。
さくらの状況が頭の中から離れず集中力が足りていなかったのか料理中に珍しく自分は左の人差し指を切ってしまった。
「寛、大丈夫?」
隣で作業していた真心が珍しく大きな声をあげた。すぐに止血に入ったがかなり深く切ってしまって血がなかなか止まらない。すぐさま日向さんに母さんが連絡を取り、病院で縫うことになった。
「ずいぶん深く切ったね。」
日向さんが直々に処置をしてくれた。というよりも日向さんしか手の空いている人がいなかったらしい。元看護師の母さんのもとしっかりと止血はしたものの怪我は結果的に4針縫うことになった。
「めまいとかはない?しっかり止血はしてあったけど今縫ったばかりだからあまり動かせないと思うけど、激しく動かなければ日常生活には支障はないから。抜糸は1週間後かな。状態を見てからだけど。後は残るけど今体調が悪くなければ問題ないよ。菌も入ってないみたいだから。お母さんに感謝だね。」
「ありがとうございます。」
「そんな顔だからある程度状況は掴めたけど考えすぎないようにね。特に刃物を扱っているときは危険だから。」
自分がどんな顔をしているのか分からなかったが、おそらくみんなに心配されるような顔だということは確かだろう。
「夜遅くにありがとうございました。」
「はい。御大事に。」
自分は診察室を出た。診察室の外にはここまで連れてきてくれた真心が待っていた。
「大丈夫だった?」
「問題ないってさ。日常生活にも支障はないって。」
「そっかよかった。」
真心と手をつなぎながら帰路についた。もちろん右手で。途中、集中治療室の近くを通ったときに自分は無意識に立ち止まってしまった。
「どうしたの?」
「ああ、なんでもないよ。帰ろっか。」
誤魔化すようにその場から少しだけ急いで離れた。
家に着くと、愛が心配している顔で駆け寄ってきた。
「そんな顔しないで。大丈夫だから。」
迎えてくれた愛の頭に右手を優しく置いた。食卓を見ると宅配ピザが置いてあった。
「頼んだんだ。」
「そりゃそうよ。食材はあんたの血で使い物にならなかったから。自分の血がたくさんついたものなんて食べたくないでしょ。それに私たち2人で作るより美味しいからいいでしょ。」
愛と並んで母さんが胸を張って笑顔で答える。自分としては2人でも美味しく作ってくれるようになってくれたら嬉しいのだが。




