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第十四話

2回目の授業の日。


前回同様、なかなかの数の人が集まっていた。例の如く隼人もいた。さくらと一緒に。今回から本格的に授業に入っていく。自分が保護者の人に提案した授業の内容は『伝える力』と『想像する力』を持たせること。今日は『想像する力』の授業になる。やることは簡単で、誰にでもできる。


「今日から本格的に授業するわけだけど、必要なものはこっちで用意したから。」


そういうと、徐に鞄の中からスケッチブックとボールペンを1人ずつに渡した。もちろん隼人にも。


「いいのかよ。俺ももらって。」


「どうせ毎回くるだろ。さくらに会いに。だったら、ほぼ強制的に参加することになるからやるよ。」


「なんだよ、いきなりさくら呼びかよ。」


「いきなりじゃないもんなぁ。」


隣にいるさくらに同意を求め、目を合わせて笑い合った。実は3日前、愛と一緒に月に一度の館内の花を交換しに行った時にたまたまさくらと出会した。見た目の通り明るくて話しやすい子だった。時間の都合上、あまり長く話すことはできなかったが隼人という共通の話題もあってすぐに仲良くなった。連絡先も交換した。交換している時に隣にいた愛に「浮気?」とからかわれた。「捕まるわ」と反論するとさくらは笑ってくれた。


「2人の秘密だよね。」


さくらに話しかけると笑顔でうなずいた。隼人は少しムスッとした表情だった。


自分の授業は基本的に答えのない問題しか出さない。答えのある問題なんてつまらないし、この世界は答えのない問題の方が圧倒的に多い。子どもの頃から物事について自然に考えられる癖がつくと、リスクマネジメントも勝手にできるようになる。この授業は初歩の初歩。


「じゃあ、これから問題を出すから、配られたスケッチブックに答えを書いてね。書き方は自由だから、何書いてもいいよ。でもみんなに見せるから見やすいように書いてね。」


自分の前には装飾ができるようにいろいろなものを用意した。マジックペンからマスキングテープなど。あえてノートではなくてスケッチブックを配ったのはその方が見やすいということもあるが、自由に書かせるためでもある。人に見せるということを考えて、自分なりに装飾してもらうため。文字の大きさや色使いなどを見て性格を判断することもできる。さらに、これを見返した時に授業の内容を思い出しやすくする効果もある。等間隔にしっかり行の分かれたノートより圧倒的に利点が多い。


「今日はたった一つの問題を真剣に考えてもらうから。」


本格的に授業に入る。黒板の代わりに病院から借りたホワイトボードに問題を書く。それは「桃太郎の続きはどうなるのか?」ということだ。小学校から中学校高学年までいる子どもが一緒の内容で同じように考えられるものは何か自分なりに考えた答えだった。これは最初の自殺した父親が3歳ごろからに自分に行っていた教育法だった。もちろん答えはない。年齢や環境によって大きく答えが異なる。ハッピーエンド、バットエンド全てが考えられる。


「ここにいるみんな知ってるよね、桃太郎。桃太郎は鬼を退治して、おじいさんたちのもとに帰って来て終わってしまうけど、その後ってどうなったのかな?答えはないから自由に考えてみて。わからないことがあったら質問してね。」


なるべく口調は小学校寄りで強い言葉は使わないようにする。こういった問題の場合年齢を重ねれば重ねるほど難しくなる。案の定、小学校低学年はスラスラ書いている。もうすでに装飾に入っていて遊んでいる子もいる。しかし、中学年高学年、中学生に至っては全くペンが進んでいない。人は考える能力が高いほど、知識があるほど迷う。小学校低学年寄りに一見見える問題でだが、どちらかというと学年が高い子向けの内容だ。題材が童話というだけでかなり高度なことを自分は求めている。どうしてもペンが進まないのをみてヒントを出すことにした。


「どうしても書けないって子にヒントね。こういう問題は、桃太郎だけに目がいきそうだけど登場人物はそれだけではないでしょ。視点を変えたり、主人公を変えたりして考えてみて。」


このヒントで何人か書き始めた。簡単なことだが、意外とできる人は少ない。視点を変えるだけで世界は2倍に膨らむ。そこからは自分の想像しかその世界には入れない。故に、このアドバイスだけで書くことができる人が多い。それでも書けていない子のところに自分が行き、個別にアドバイスをしていく。何かきっかけを掴めれば、簡単に書き終える。隼人はその頃、さくらと一緒にお互いの答えを見合って笑っていた。別に相談してはいけないとは言っていなかったので、止めることはなくその光景を勝手な親心で微笑みながら見ていた。


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