第十五話
粗方全員が書き終えたのを確認した。
「じゃあ自分と年齢の近い子たちとグループになって。保護者の人も自分の子ではないグループに入ってください。できれば自分の子供とは年齢が違うグループに入って来ださい。自分のお子さんとは授業後に見せてもらって復習のつもりでお互いに意見交換するのもいいと思います。」
大概こういった指示を出すとグループにならずに指示が出るまで待っているクラスが多いが、いつも一緒の空間で集団生活しているためか早く動いてくれる。3つのグループに分かれた。各5人ずつ、高学年は隼人を入れて6人。きれいに分かれた。
「これから発表してもらうけど、それには司会者決めないとね。低学年と中学年は先生方に入ってもらって、高学年は隼人に任せるからよろしくお願いしますね。」
隼人に睨まれた気がするがこれから授業に参加するなら他のこと交流することも必要になってくるから無視した。
「他の人の意見で気になった言葉とかキーワードがあったら積極的にメモを取るようにしてね。」
各グループで発表が始まる。自分は携帯でメモを取りながら各グループを回る。発表が終わっても話は尽きてなかった。
「発表も終わったことだし、じゃあみんな前向いて。実はこの問題は年齢ごとに答えが大きく違ってくるの。大きく分けると4つくらい。」
自分はホワイトボードに書いたものに注目させた。
「1つ目は、桃太郎が主人公のままでハッピーエンドのもの。帰って来た桃太郎がその後幸せになって暮らしたっていう終わり物語。これは低学年のグループに多かったかな。」
保護者と先生がうなずいていた。子供たちは自分がどの分類に入るのか自分の書いた物語を見ていた。
「2つ目は、桃太郎が主人公のままでバットエンドの物語。鬼ヶ島から持って来たお宝をめぐって争いが起きるとかそんな感じの物語。これはどの学年にも多い傾向があるね。」
様々なところで声が上がる。自分はどうなのか他の人のものを見て比べていいた。今までは、低学年に体を向けて話していたがここからは体の向きを変えて話す。
「3つ目は別の何かに視点を移してハッピーエンドのもの。桃太郎の視点ではなく、鬼や犬、猿とかキジの立場になってもう一つの物語が進んでいくもの。なおかつそれがハッピーエンドで終わるもの。これは、年齢を重ねるごとに書きやすくなる。ここでいうと中学生くらいの子たちがそうなるかな。僕は視点を変えてとヒントを出した。このヒントでだいぶ書きやすくなったんじゃないかな?」
うなずく子もちらほら。自分がグループを見に行った時、中学生のグループのほとんどが視点を変えて書いていた。
「最後に4つ目。視点を変えてバットエンドのもの。今日はいなかったけど実は僕がこれね。実はハッピーエンドかバットエンドかはその人がどちらの方が書きやすいかの違いだからそれほど重要じゃない。視点を変えるか否かでその人が何を見ているかがわかるんだ。」
低学年の子たちはキョトンとしている表情で自分を見る。
「ごめんね。今はお兄さんたちに向けての話だから、ちょっと我慢してね。」
低学年の子たちには少し早い内容であることはわかっていた。正直、年齢が自分から低ければ低いほど授業するのが怖い。自分の発言が直接影響を与えそうで。
「説明に戻るけど、高学年になればなるほど、ヒント後の方が書きやすくなったのはシンプルに見ている世界が年齢によって広がってくるから。選択肢が増え、いろいろなことについての感情も増える。人間として複雑になってくるんだよ。若い時には見えていなかったこと、気にも止めてなかったことが気になってくる。一番は自分以外の人間のことが気になり始めるんだ。自分が1人で生きていけないってわかってくるから。」
保護者はうなずいていた。
「桃太郎の物語はさまざまな登場人物がいる中で桃太郎以外になかなか焦点が行かない。もともと児童書として普及したものだから仕方ないところもあるけど高学年になると物足りなくなる。自然と物語のバックグラウンドが気になってくるんだよ。そうなってくるとこうも思ってくると思うんだ。桃太郎の行動は正しかったのかなって。」
ここからが本題。静かに聞いてくれているし、メモを取る子もちらほらいる。




