↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/14

最終話 その名はレオセヴン


ななみさんがレオセヴンの力を失ってから、もうすぐ、丸3日になる。

あれから、私はななみさんに会えていない。

ななみさんは今日も学校を休んでいた。


あのとき、ななみさんが攻撃をうけたのは、私を庇ったからだ。


ななみさんが、ああなってしまったのは私のせいだという罪悪感から、

どうしてもななみさんの家にも行けず、

部屋に仕掛けたカメラもチェックすることができなかった。


明日から中間テストが始まる。ななみさんは大丈夫だろうか。



――あの後、私たちはハカセにストーンを作り直せないのか聞いた。


「ベルトとストーンを作り直す事はできないんですか?」

ずっと魂が抜けたような、

放心状態のななみさんに代わって、私がそう訊ねると、


「ベ(・)ル(・)ト(・)な(・)ら(・)、作り直すことができるわ。

でも、それはストーンの力を利用する為に私たちが作ったものだからよ」

そんな風にハカセは言って、話を続けた。


「正直なところ、ストーンについては何もわかっていないに等しいの」


「私たちにわかっているのは、ストーンは太古の昔に存在したとされる、

とある種族が作り出した何らかのエネルギー結晶だという事だけ」


「でも、ストーンは他にもたくさんあるじゃないですか」


私がそう口をはさむと、ハカセは、少しだけ躊躇うような素振りをみせてから、

「……サンストーンはね、他のストーンとは違う特別なストーンなの」

と言って、サンストーンについて解っていることを教えてくれた。


「ストーンを研究し始めて驚いたのは、そのエネルギー量。

そのままでは取り出す事はおろか、とてもじゃないけれど制御なんてできない」


「そんな所に発見されたのがサンストーン。

サンストーンはエネルギーが安定していてね。

我々はサンストーンの研究だけに心血を注いだわ。

その結果、サンストーンを媒介にすることで他のストーンの制御に成功したの。

そして出来上がったのがサンストーンの力で6つの石の力を制御するセヴンバックルと、

それを操るレオセヴンスーツだったわけ」


「サンストーン、セヴンバックル、そして、それを使えるななみちゃん。

全部揃っていたのが奇跡のような状態だったのよ。

だからね、ななみちゃん。無くなったからと言ってそんなに気負う事はないのよ。

ノイヅと戦える他の方法を模索しましょう」


ハカセがそういってななみさんを励ましたけれど、

暗い顔でぼんやりと聞いていたななみさんは、


「ごめん。私には無理」


そう言い残して研究所を出ていったきり、戻らなかった。



ハカセは少し寂しそうな顔をしたけれど、ななみさんには何も言わなかった。

ななみさんはもう充分戦ったのだ。私達がどうこう言えるわけがない。


ハカセは私の方に向き直ると、そっと肩に手をかけた。


「翔子ちゃん。貴女も元々は無関係の人間よ」


「……ななみちゃんも居ないし、ここに残る理由はないわ」

「いいえ、理由はあります」


ハカセの言葉を遮って私は答える。

「私の全部はななみさんの為にあります。だから、私は戦います。

ななみさんの笑顔を邪魔する存在を放っておけはしません。」


ななみさんについていくだけが愛じゃない。

離れたところでこそ、示せる愛があるはず。


「……ふふ。やっぱり翔子ちゃんは翔子ちゃんね」

「わかったわ。正直、貴女がいてくれてよかった。」


「それで、ななみさん抜きで、私達はどうすればいいんでしょうか」


そうね、とハカセは言って、

ついてくるようにというジェスチャーをしてから研究所の廊下を歩き始めた。

「レオセヴンの力が無くなった今、私たちにできるのはノイヅを封印すること」


「翔子ちゃんがあの女王ノイヅの所にドローンを残してきてくれたおかげで、

今、あの場所の融合係数がどうなっているかモニターすることができているわ。

本当にファインプレーだったわね」


「あの場所が現実世界と完全に繋がるまでの猶予は、

楽観的に見てもあと一週間。女王ノイヅは仲間を集めると言っていたのよね?

……だとするなら、もっと早まる可能性が高いわ」



第2実験室と書かれたドアの前で立ち止まったハカセは、

トビラを開けて、私に入るように促す。

そこでは白衣を着た沢山のスタッフが、

アンテナの付いたバズーカ砲のようなものを中心に、忙しく動き回っていた。


「私が研究を続けていたノイヅ封印装置、まだ未完成だけど、コレを使うしかないわ」


どういう代物なんですか?と私が尋ねると、

研究員の一人に指示を出して、仕様書を見せながら説明してくれた。


「これはね、ある種の電磁パルスをノイヅにぶつけ続けることで、

半永久的にノイヅを活動停止させようというものよ」


私もななみさんのために身につけた科学知識がある。

ある程度は仕様が理解できた。


その無理やりさも。


「なるほど、ストーンのエネルギーを開放して、ゆらぎ全体に流す。

そのごく一部を指向性にしてノイヅに照射すると」


「……これは、うまくいっても、いかなくても大変なことになりそうですね」


「いくつかの段階を飛ばして、もう実用化を進めているの」

「鍵を握るのは猫弐号よ。猫弐号で敵に照準を合わせて、トリガーを引く必要があるの。

あなたが去るのなら、私が装着するつもりだったけれど、」

そこまで話してから、ハカセは私の方に向き直り、私の目を見る。


「大丈夫です。私はゆらぎを出(・)入(・)り(・)できます。

それに、私のほうが実戦経験があります。すこしでも成功確率は高いほうがいいですよね」


「……ありがとう、翔子ちゃん」


「それじゃあ、私は猫弐号の改修にとりかかります」

さっきの仕様書を読む限り、猫弐号にも防護措置が必要だ。

今は時間が惜しい。すぐにでも取り掛からなければ。


私のさり際、ハカセがふと、独り言のように呟いた。


「本当はまだ希望は残っているけれど

……それを今のななみちゃんに言うのは酷な話よね」





「おっ、ななみじゃん。久しぶり!3日も休んでテスト大丈夫?」

クラスの友達が話しかけてくれる。

「うん、なんとかね」

それから、休んだ理由とか、私には全然関係ない話とかを振られたけれど、

適当に話を合わせて私は自分の席についた。


今日から中間テストが始まる。

流石に休む訳にはいかなかった……というよりも、

もう家でじっとしていられなかった。


最初は外に出たくなかった。

外を歩いていると、

もし、今ノイヅが襲ってきたら、

もし、前を歩いてる人がノイヅに襲われたら、

そういうことをイヤでも考えてしまう。


そして、そうなったとき、私には何もできない。

レオセヴンじゃない私には。


だから学校を休んで家にこもっていた。


今日は休みたいと言ったら、

ママは、そう。と一言いっただけだった。


チエにゃんからも、メッセが数件来ていたけれど、

既読スルーしたら、そのまま催促もなにも来なかった。

チエにゃんはそういうやつだ。


何かを話したかったわけでもないし、聞かれたとしても何も話せない。

だから、すごく助かった。


だけど、なにかが解決したわけじゃなかった。


それから今日までずっと、ゲームしたり、教科書読んでみたり、

気を紛らわせて来たけれど、もう限界だった。


だから、テストを受けなければいけないと、自分に言い聞かせて登校してきた。


先生が現れて、少ししてから始業のチャイムが鳴る。

ザワザワしていた教室が一気に静まり返る。


先生がプリントを配り始める。


すくなくともテストを解いている間は、なんにも考えなくてすむ。




午前中のテストが全部終わって、お昼休憩になった。

足はどうしてもいつもの場所に向かう。


部室棟、最上階の非常ドアの前。

お昼はいつもここ。チエにゃんと、私と、翔子。



階段を登りきると、やっぱりチエにゃんはそこにいて、

いつもどおり、にやにや笑いを浮かべて、

何事もなかったかのように声をかけてくれた。


「おそかったじゃん。テストどうだった?」


お昼を食べている間、

私達は本当にいつものように、くだらない雑談をして、

笑い合って、楽しく過ごした。

思えば二人でお昼を食べるのは久しぶりかもしれない。


そして、お弁当箱を片付けて、なんとなく静かな時間が生まれたとき、

チエにゃんが真剣な顔で、私に聞いた。


「それで?今日はどうして翔子ちゃんがいないの?」


にやにや笑い無しのチエにゃんを見るのは、数えるほどしか無い。

いつも、私が本当に困っているときだ。

そして、そういうときにチエにゃんがする質問は決まって、

私が一番してほしくなくて、一番してほしい質問。


「……たぶん、翔子は今も私のために動いてくれてるんだと思う」


そうだ。翔子は多分、戦えない私に代わって、戦おうとする。

なんにもできない私と違って、翔子は強いから。

私は所詮もらった力を使ってただけ。

でも、翔子のは違う。努力して自分で手に入れた力。

なんのために?

私のため?

どうして?



「……変な話していい?」


「あんたの話が変な話じゃなかった試しはないわよ」


「もう!いっつもそうやって馬鹿にして!」

さっきの真剣な顔はどこへやら、もういつものに(・)や(・)に(・)や(・)がもどってる。

だけど、おかげで肩の力が抜けて、自然とチエにゃんに話をすることができた。


「もし、さ、チエにゃんに突然すごい力が湧いてさ、

それで困ってる人を助けられるとしたらどうする?」


「全然ピンとこないんだけど。お金の話とかじゃだめ?」


「えぇ、じゃあそれでいいけど」

なんか急に生々しい話になるわね。

まあチエにゃんらしいか。


「うーんと、じゃあ、もしチエにゃんが突然大金持ちになって、

そのお金で困ってる人を助けたりとかしてたとするじゃん。

でも、ある日突然、そのお金がなくなっちゃって、元の生活に戻っちゃったらどうする?」


突拍子もない私のただの仮定の話に、チエにゃんは、しばらく考えたあと、

一瞬だけ真顔になって、すぐに(・)や(・)に(・)や(・)を戻して答えた。


「……ななみならどうなの?ななみはお金持ちになったから人助けしてたの?」

いつものにやにや笑いを浮かべているけれど、その声は真剣そのものだった。


私は少しだけ考えるふりをした。

ホントは考えなくてもわかってたのかもしれない。


「……違う。ううん。最初はそうだったかもしれないけど、今は、違う」

チエにゃんの問いかけに――私の問いかけに――答えているうちに、考えがまとまっていく。


「力があるから助けてたんじゃない。"私"が助けたいから助けてたんだ」


もう、仮定の話じゃなくなっていた。

口に出すと、なんだか心がスッキリした。


そうだ。もらった力だったとしても、それを使ってたのは私。

たとえその力がなくなったんだとしても、私の心は変わってない。

翔子が私のために全力をつくしてくれているように、

私も、私を信じてくれている誰かの為に、全力をつくす!



「ありがとうチエにゃん。私、いかなきゃ」


突然、立ち上がった私にチエにゃんは驚く様子もなく、ただ、


「気をつけてね」

とだけ言った。







私が研究所に飛び込むと、翔子が3だか4だかの猫弐号を整備しているところだった。


「これ、もう動かせるの?」


「え?ええ、今丁度改修が終わって格納ロッカーに戻しているところです」


それを聞いた私は、猫弐号のパーツがすべて格納されるのを見届けてから、

作業台の上においてあった、翔子の猫弐号ターゲットバックルを装着し、

格納ロッカーの前のステップに乗る。


「え?え!?まってください!ななみさんが装着するんですか!?」

「なに?私には着れないの?」


「い、いえ、スーツは体格に合わせて伸縮……ってそういうことじゃなくてですね!!」


「そんな装備では危険です!なにより、今回の任務はイチかバチかの賭けみたいなものなんです!」


「あんただっていつもこの装備で戦ってくれてるじゃない」

「それに、その賭け、あんたがやるつもりだったんでしょ?」


「そんなこと!私とななみさんでは命の価値が違います!」


「――バカ!人の命に優劣があってたまるもんですか!」


翔子があんまりにも間抜けなことを言うものだから、

思わず声を大きな声を出してしまった。


「でも、今のななみさんにはレオセヴンの力が……」


「翔子、私はね、レオセヴンだから戦ってるんじゃないの」

「私は、優桐ななみだから戦っているのよ!」


「獣同!!」

いつも翔子がやっているように叫びながら、バックルのレバーを捻る。


――スキャニング コンプリート


ベルトからオールレディという音声が流れると同時にロッカーが開き、

猫弐号のアーマーが私に装着されていく。

身長は伸びないし、髪の毛の長さもそのままだけど、

すこし厚底の靴と長い足パーツのおかげで、若干背丈は高くなる。

ヘルメットをかぶって、バイザーを下ろすも、頭が良くなった気配はない。


「獣同完了!!猫弐号!!」

翔子のマネして叫んでみるけど、冷静になるとちょっと恥ずかしい。


ふと、翔子をみやると、顔を抑えてうずくまっている。

「え?なに?どうしたの?」

「すいません。ななみさんがあまりにカッコ良かったのと、

私が着た直後のスーツをななみさんが着ているという事実に感極まってしまって……」


「そういうのヤメて。マジで。」

やっぱり翔子は翔子だった。





「そんで?作戦があるんでしょ?なにをどうすりゃいいわけ?」


翔子からの連絡で、ガレージに来たハカセに私は作戦を聞いた。



「なるほどね。イチかバチかの賭けってそういうこと。

とにかく、当たるまで撃てる使い捨てのバズーカで、ノイヅをバンバン撃っていけばいいんでしょ?」


「バズーカではなくて送信機、正式名称は対ノイヅ用指向性EM……えー、まあ、そいうことよ。

バンバン撃っちゃってちょうだい。」


なんとなくバカにされたような気もするけど、まあこの際よしとしましょう。


「翔子から大体のことは聞いたわ。時間がないんでしょ?」

もうすぐにでも女王ノイヅのところへ殴り込みに行くつもりで準備した私。


「それなんだけど、もう少しだけまって頂戴」

「もうすぐ6本目の送信機ができるわ。送信機は1体のノイヅを封印するのに1本必要よ。

現在確認されているノイヅは女王を含めて5体。ピッタリの数では心もとないわ」


もう。締まらないわね……せっかく猫弐号スーツ装着したのに。

仕方ない一旦脱ごうかしら。



「いい、ななみちゃん。この際、全部のノイヅの相手をしなくてもいいわ。

なによりもゆらぎの世界と現実世界の融合を阻止することが急務よ」


「ということは、とにかく女王を封印すりゃいいわけね。まかせといて頂戴」


ふと、翔子が思いつめたような顔で、私に駆け寄ってくる。

「ななみさん、私も……」

「いいえ、翔子。今回ばかりはここにいて」


翔子なら生身だろうとついてくるって言い出すかと思ったけれど、

意外にも素直に、引き下がった。

もしかしたら、私が攻撃を受けたのは自分のせいだと思っているのかもしれない。


「自分が足手まといだと思っているなら違うわよ。

あんたがいてくれなかったら、たぶん私、ここにいないもん。……サポート、期待してるわよ」


「……!!……はい!まかせてください!!ここから全力でサポートします!!」





改めて猫弐号スーツを装着した私は現実世界のフォーミュラカーゴの隣に立った。

「よし、そんじゃ行ってくる」

通信室に居る翔子たちにそう言って、ゆらぎの中に入った。


実は、レオセヴンの力がなくなった今、ゆらぎに入れるのか不安だったけれど、

とくに問題なかったみたい。どうにもゆらぎを出入りできるのは私の力らしいわね。

そういえばハカセも最初にそんなこといってたっけ。


猫弐号スーツを着るのは初めてだけど、意外と思い通りに動く。

バイザーにはいろいろな情報が表示されてるけど、なにがなにやらさっぱりわかんない。

その中の一つに、通信室の様子が映し出されている窓があって、翔子とハカセが映っていた。

『聴こえますか、ななみさん』

「うん、ばっちり聞こえるわよ」


「それで、このごちゃごちゃした表示消してもらえたりする?」

『あ!はい!すぐに消しますね』


どうやら通信室から猫弐号を操作できるみたい。

翔子が何かカチャカチャやったら、翔子たちが映ってるヤツ以外は全部消えた。


そして、翔子が場所を設定して、私の乗り込んだフォーミュラカーゴは目的地、

前回ノイヅと戦ったあの工場が見える場所へと到着した。


『おそらく敵は、我々人間を軽く見ています。

ここまで近づいて姿を見せないのがその証拠です』


とはいえ、と、ハカセが口を挟んだ。

『ノイヅ封印装置を起動して、ストーンの力をゆらぎ全体に開放すれば、

さすがに黙ってはいないでしょう。くれぐれも気をつけてちょうだい』



『それじゃ、フォーミュラカーゴに設置したノイヅ封印装置の本体を起動します!!』

そう宣言して、翔子がスイッチを押す。


その瞬間、

フィーンという甲高い音が鳴り響いて、

フォーミュラカーゴの荷台が光ったと思ったら、

ばっと光が弾けて、世界全体に光がひろがったようにみえた。


「うっ。なんか、すっごい動きにくい。」

一瞬、猫弐号スーツのディスプレイがチカチカしたとおもったら、

さっきまで軽やかに動いていたスーツが、急にすこしだけ重くなった。

その、ほんの少しが引っかかってすごく動きにくい。


『これは、予想以上の負荷です!

猫弐号スーツは思ったよりも持たないかもしれません!』


「大丈夫。気合でカバーしてみせるわ」


そんなことを言いながら、背中のバッテリーにケーブルを接続していると

ノイヅの気配が近づいてくるのを感じた。


「みんなの予想通り、ノイヅが来たわよ」


レオセヴンに変身できなくても、

いままで私が身につけた能力がなくなったわけじゃない。



ほっそりとした、二足歩行の枯れ木みたいな見た目のノイヅが、

ボクサーのような動きで、シュッ!シュッ!と

パンチを繰り返して私の前に立ちふさがった。


そして、一瞬で目の前まで距離を詰めてきたかと思うと、

回し蹴りを繰り出してきた!


その回し蹴りを、とっさに身体をのけぞらせてかわす。

直後に左手を地面についてハイキック!


「いける!」

身体がレオセヴンの動きを覚えてる!


敵が腕を振り回す。

右、左、左!


どっちから攻撃がくるのか手に取るようにわかる!

スーツの動きにもなれてきた!

次は右!!

予想通り、右から来た拳を、左手で受け流して、

相手のパンチの勢いを利用した正拳突きをボディに!!


相手がよろけるけど、やっぱりパワーが足りないみたい。


「なら、数で勝負よ!」

ぐいっと、一気に近づいて、パンチを連打する。

「えいえい!えいえいえい!!」


相手に攻撃のスキを与えない!

「トドメよ!!」


最後に思いっきりためた右のパンチをお見舞い!


ノイヅは吹き飛びこそしなかったけど、ドサリと地面に倒れた。


『ななみさん!今のうちに封印を!!送信機を射出します!!』


そうだった、倒せないんだったわ。

後ろのフォーミュラカーゴからカチャリと音がして、どこから出てきたのか、

バズーカみたいな送信機がバシュッとこっちに飛んできた。


「よっと」


うまいことキャッチした私は、送信機を、

今にも動き出そうとしているノイヅに向ける。


「おやすみ!!」

カチッとトリガーを引くと、バシュッと空気の流れみたいなのができて、

ノイヅの動きが止まった。

どうやら、うまく機能したみたい。


『そのまま、送信機をノイヅの目の前に固定して頂戴。』

ハカセから指示されるまま、ノイヅの目の前まで近づいて、

送信機を置く。足の生えた送信機は、

天体望遠鏡みたいにけっこうしっかりと地面に立った。


『次の送信機をだしますね』

翔子がそう言って操作すると、

こんどはカーゴの後ろのドアが開いて、そこに送信機が入っていた。



突然、

すごい気配を感じて、

ばっと気配がしたほうを向くと、


「ほう、人間の分際で我々を動けなくするとは、面白いことをするじゃないか」


すこし離れたところに、

例の女(・)王(・)ノ(・)イ(・)ヅ(・)が立っていて、

私に話しかけてきていた。


「んん?お前はレオセヴンと一緒にいた人間か?」


「へぇ。そっちから出てきてくれるなんて、探す手間が省けたわ」


軽口をたたいてみるけど、内心冷や汗が流れている。



「なんだ、レオセヴンの皮を被っていた小娘か」


「今度は前のようにはいかないわよ」

そういいながらも、身体はすこし震えている。

私にできるだろうか……

いや、私がやるんだ。


『そこから離れてください!カーゴや送信機を壊されるわけにはいきません!』

「了解!」


私はそう言いながら、送信機を女王に向けてトリガーを引く。


――が、


「外れた!」


女王はひらりと身をかわし、

どこか優雅にこちらに歩いてくる。


『やはり動きを止めてからでないと!』

「気をそらすのが目的よ!」


言いながら、

私は背中のケーブルを切り離して、カーゴとは逆方向に走る。

女王は私の考えに気づいているのかいないのか、

やっぱりどこか余裕を感じさせる動きで、こっちに向かってくる。


バシュ!バシュ!と、

走りながらも、女王に向けて送信機のトリガーを引きまくる。


――けど、ぜんぜん当たらない。


もう一回、と思って振り向くと、目の前に女王ノイヅの”脚”が迫っていた。

「うわっ!」


とっさに手に持っていたモノ――送信機でガードするけど、


あわれ、送信機は遠くの方にすっ飛んで行った。


「あぁ!まずい!!」


いいえ!落ち着くのよ優桐ななみ、

送信機はまた翔子に発射して貰えばいいし、

今は、女王の動きを止めるチャンスだわ!


私は女王とまっすぐ対峙して、ファイティングポーズを取る。


にらみ合うようにお互いの動きが止まる。


「先手必勝よ!!」


私は地面をけって、

ノイヅに正拳突きをお見舞いすべく、突っ込んだ。


バシッ!っと、

女王の手のひらに当たった私の拳は、

そのまま掴まれて、


――投げ飛ばされた。

「うわぁ!!」


「ーーっと!!」

なんとか空中で姿勢をもどして、着地。


したところに、

女王が瞬間移動でもするみたいに、

すごいスピードで現れて、パンチを繰り出してくる。


わかっているけど、

身体がついていかない!


バキッ!!

かろうじて腕で防いだけど、

次が来る!

「――ッ!!」

こんどはなんとか手のひらで受け流せた。

でも、喜んでいる暇はない。

次々に繰り出される攻撃を必死に受け流したり、かわしたりを繰り返す。

時折、ボディに命中し、スーツが嫌な音を立てる。


戦いの最中だと言うのに、女王は余裕の様子だ。

「ふぅ。所詮この程度かい。これなら放っておいてもよかったくらいじゃの」


そういえば女王は腕を例の針に変化させる様子はない。

完全になめられてるというわけね。


でも、実際これはキツイ!

反撃のスキが全然ない!!


『ななみさん!スーツ動力部への負荷が急激に上昇しています!!』


『このままでは危険です!!』


翔子がスーツの状態を報告してくれるけど――


「そんなこと!言ったってねぇ!!」


攻撃を受け流すので精一杯だ。

でも確かに、このままじゃジリ貧だわ。


イチかバチか、

女王が攻撃をしたタイミングで大きくしゃがみ込む。


そのまま、ジャンプの勢いを乗せて、

手のひらで女王を突き飛ばす!


当たった!


その勢いで私も後ろに飛び跳ねて、

なんとか距離を取ることに成功した。


けど、大きく動きすぎたせいか、

猫弐号スーツのあちこちから煙が出始め、

画面もチカチカし始めた。


『エネルギー回路がオーバーロードしそうです!もう持ちません!!』

『爆発する前にパージしてください!!』


翔子の悲痛な叫びが聞こえる。


「ここまでみたいね……」

バックルのレバーを捻りアーマーを強制パージする。


各部のアーマーが前後に分かれ、その場に落下して煙を上げる。


残ったベルトも投げ捨て、

身軽になった私は、生身の体で改めて女王ノイヅと対峙する。


不思議と恐怖はなかった。


女王が呆れた様に言う。

「ふん。ただの小娘が何をしようというんだい?」



――そう。"私"はただの小娘。


――"俺"とはちがう。


レオセヴンに変身すると頭が良くなる。

筋肉がついて力が強くなる。

まるで私じゃないみたいに。


だからこそ、私は無意識に口調を、

一人称を、変えたんだと思う。


変身して、"私"とは違う、強大な力をもった恐れを知らない戦士になる。

どこかでそんなふうに思ってたんだと思う。


だけど、今は違う。


"私"が守りたいものがあって、


"私"に戦う理由がある。



「私」は「俺」

「俺」は「私」



「――違う。ただの小娘じゃないわ。」


「私が、レオセヴンなのよ!!」



――その瞬間。

身体に熱いものがみなぎるのを感じた。


その熱いなにかは私の腰に集まってく、


そして、

それはベルトのバックルとなって現れた。


「バカな!そのベルトは!!」

女王がうろたえた声を出す。


壊れたはずのセヴンバックル。


でも、その材質は以前のようなプラスチックじゃない。

石のようにも、未知の金属のようにも見える。


そして、手には失われたはずのサンストーン。



「どういうことです!?ななみさんの身体からベルトが出てきましたよ!?」

モニターを見ていた翔子が慌てた様子でハカセに聞く。

「あれは……本物のセヴンバックルよ……」

「本物?」

「私達の作ったセヴンバックルはあれを模して作ったもの」


「……覚醒できたのね」




私の身体から現れたベルト。

復活したサンストーン。

なぜだか、驚きはなく、むしろ当然のことのように感じる。


いつものように、サンストーンを太陽に掲げて、

新しいバックルにセットする。


「させるか!!」

女王が腕を針に変形させて、こっちに突っ込んでくる。

だけど、もう遅いわ。


友達が、いいえ、親友が考えてくれた変身の掛け声を叫ぶ。


「 ―― 獣 装 !!」



その瞬間。

私の身体は光りに包まれ、

身長が伸び、筋肉が付き、頭が冴え渡る。


女王は光にたじろぎ、動きを止めた。


私の皮膚が金色の装甲に変質してゆく。

私の髪が伸びて、真紅に染まる。


ーーーーー!!

私は雄叫びをあげ、有り余ったエネルギーを発散し、叫ぶ。


「獣装超人レオセヴン!!見参!!」


「私こそが、あんたを倒すもの、レオセヴンよ!」



「ありえん!本物のレオセヴンだと!?」


どうやら私は「本物のレオセヴン」とやらになったようだ。

確かに、今まではハカセが作った機械装甲だったけれど、

今、私の身体を纏っているのは私の皮膚が変質した生物的な装甲だ。

サイの皮膚や蟹の甲羅、そういったものを思わせる金色の装甲。


「ええい!お遊びは終いじゃ!!」

そう言って、女王が手を大きく上にかざすと、

背後の工場から、光が伸びて、フォーミュラカーゴが爆発した。


「やってくれるじゃないの」

第2射を警戒するけど、すぐに撃ってこないところを見るに、

チャージにある程度、時間が必要なタイプのノイヅの攻撃だろうと思う。


「ふん!まずは外に出るのが先決じゃ!」

そう言って、工場の方へ向かう女王。

「まちなさい!!」

追いかけようとしたものの、

女王と入れ替わるように

工場から現れたノイヅが、行く手を阻む。


おそらく、"壁"に干渉していたノイヅだ。


「なるほど、勝率が下がったから役割を交代したってわけね」


いいわ。全部さっさと片付けて、女王をボコりに行くわよ。

今の私なら何でもできる気がするわ!


私の前に立ちふさがったのはゴリラのようなノイヅ。

図体の割に素早い拳をこちらに叩き込んでくる。


どうやら以前戦ったときよりも傀儡の精度が上がっているようね。

ぎこちない動きも無くなって、

格段に、速く、強くなってる。


だけど、

レオセヴンに変身した私には、全部見える。


――見えるだけじゃない。


すべての打撃を手の甲で滑らせるように弾いて、受け流す。

柔よく剛を制すってね。


そのままゆらりと敵の懐に入って、掌底を食らわせる。

ゴリラノイヅは面白いぐらいに吹き飛んで、壁に叩きつけられた。


どうやら、私のパワーも以前より上がっているみたい。


いつものようにサンストーンのパワーを開放しようとして、

ギアダイヤルが無いことに気づいた。

だけど同時に必要ないことも理解った。


ノイヅに向かって走り出すと同時に、

サンストーンに意識を集中させる。


サンストーンが輝きを増し、

エネルギーが開放されて、光が迸る。


私の通った場所が光の道を形成する。


姿勢を低くして、スライディング。


そのまま火花を散らせて地面を加速し、


――ゴリラノイヅにキックが命中する。

と、同時に光が弾けて、ゴリラノイヅは跡形もなく消滅した。


立ち上がった私の視界の端に、

キラリと光るものが見えた。


さっきの光線だ!


とっさに大きく上に飛び上がる。


フォーミュラカーゴを爆発させた光線は、

はるか下で地面を爆発させていた。



これはもう空を飛んでると言っても過言では無いくらいのジャンプ力だわ。

いや、過言か。

カッコつけておちてるだけってやつね。



着地した私に火炎放射が浴びせられる。

「――ッ!!熱いじゃないの!!」


回し蹴りの風圧で炎を避け、距離をとる。

全身が燃えたぎるノイヅが手当たりしだいに火を放っている。


火には水ね。

フォームチェンジしようと、

ストーンを探しかけ、


突然、


気づいた。

理解した。


……そうか。ストーンは器に過ぎないんだ。

そしてベルトはただの中継装置。


なら、

ベルトは。


ストーンは。


私の……!


バックルに手をかざし、力を込める。

すると、サンストーンの隣に空いた窪みに青色の宝石、

マーキュリーストーンが現れる。


エネルギーバスを繋ぐ必要も、

指でサンストーンを回す必要もない。


ただ、ベルトに意識を集中させるだけ。

サンストーンとマーキュリーストーンが共鳴し、

発光して、エネルギーが生み出される。


「多獣装!!」


私の身体は変質し、

全身の鎧が青色の鱗で覆われたような姿へと変化した。


ふたたび火炎放射が来る。

だけど、マーキュリーフォームになった私に炎は無力よ。

私が手をかざすと、瞬時に水が集まって分厚い壁になり、炎を防ぐ。


壁を解くと同時に、一本の水流をノイヅめがけて打ち出す。

――と、私の背後から殴りかかる気配を感じ、

振り向きながら回避をしつつ蹴りを入れる。


こいつは――さっき私が猫弐号で封印した枯れ木のノイヅだわ。

そうか、ストーンを乗せたカーゴがやられたから封印が解けたのね。


しかし、どうにも打撃力の低い水のフォームでは相性が悪い。

と、思うけれども、さっきの炎のノイヅが起き上がって、

また懲りずに火炎放射を続けている。


!、そうだわ。

ストーンが私の力だとするなら、


「こういうことが――できるはず!!」


私の意識がベルトを通じてストーンへ。

青色だったストーンの色に赤が混わる。

ストーンのエネルギーがベルトを通じて全身に伝わり、私の体表は変化する。


「重多獣装!!」


青い鎧に赤のラインが入り、そのラインが炎を纏う。

「マーズ・マーキュリーフォームよ!!」


両手を広げ、それぞれの腕から、

枯れ木ノイヅには炎を、

燃え盛るノイヅには水流を

同時に放出する。


「最大出力!!」


ストーンの力を開放した私の炎は

一瞬、真紅になったあと、青白い光線となる。


同時に水流は威力を保ったまま、一本に収束し、

鋼をも切り裂く硬度となって、

二つのエネルギーは同時にノイヅを貫く。


2体のノイヅは、ほぼ同時に消滅した。


すかさず私はフォームをチェンジする。

ストーンが紫色になり、

腕に円形の大鎌、サターンリングが装備される。


「そろそろね」


工場から三度目の光が見える。

「あんたの攻撃は、すでにお見通しよ!!」

光線をかわして、その光線の根本、

すなわち発射しているであろうノイヅに向けて、

ストーンの力を乗せたサターンリングを投げる!


ノイヅの光線で地面が爆発すると同時に、工場でも光が弾けるように消えた。

どうやら命中したようね。


このあたりにもうノイヅの気配は無い。

残るは女王だけ。

私はフォームをサンフォームに戻し、工場へ急ぐ。


中に入ると、もうそこはすでに現実世界と見分けがつかないくらい、

くっきりとした視界が広がっていた。

「マズいわ。はやく女王を止めないと……!」


気配をたどって、たどり着いた先は、工場の屋上。

そこで私は再び女王と対面した。

女王の背後にはもうほとんど見えなくなった"壁"がそびえ立っている。


こちらを睨みつけるように立つ女王の、その右腕は針状に変化していた。


「どうやら本気を出してもらえるみたいね」


「我らにとってレオセヴンは畏怖の対象、恐怖すべき存在」

「だが、それは記憶に刻まれた錯覚に過ぎん!」


女王が隙きを伺うように移動する。


私も隙きを見せないよう、同じように、向きを変えていく。

互いににらみ合うように膠着状態が続く。

ここで先手必勝などと言って考えなしに突っ込んでいくような馬鹿はいない。


先に動いたのは女王。

「ただの小娘がレオセヴンの名を語っているだけだ!!」

「そんなものに妾の野望を止められるものか!!」


あの時のようにベルトを狙って真っ直ぐ飛んでくる。

――が、途中で女王は軌道を変え、視界から消えた。


だけど、私には女王の気配が残像のように見えていた。

左から回り込んで後ろから来る!


私は振り向きざまにルナフォームにチェンジする。

金の装甲の表面が銀色に発行し、周囲に銀の光が舞う。

その光、シルバーエネルギーを右腕に集めると、

白銀の実体剣が顕現した。


この間、0.02秒。


私の剣が女王の針のような腕を弾く。


剣を構え直して、今度はこちらから斬りかかる。

だけど女王も素早い動きで私の剣を弾いて、

さながらフェンシングのように執拗に突きを繰り出す。


幾度となく剣と針がぶつかり合い、

甲高い金属音がゆらぎの中、静かな工場に響く。


「レオセヴン!なぜ我らの邪魔する!!」

私の急所を狙って、突きを繰り出しながら、女王が口を開く。


「なぜ?面白いことを訊くわね!」

攻撃を払って、斬り返しながら、私は答える。

「私達人間は黙って食べられるのを待っていろってわけ?」


「私達人間。それがわからぬ。強者であるお前が、何故弱者の味方をする」

私の剣を絡め取るように女王は針を動かし、そのまま私の顔を狙って突く。


首を捻って、突きをかわす。

間一髪。

頬をかすめた女王の針が空をきってヒュンと音を立てた。


「人ってのはね、力の強さだけじゃないのよ」


払いのけられた剣を握り直し、

少し踏み込んで、畳み掛けるように連撃を繰り出す。


「人は誰でも心に強いものを持っているわ。

そしてその強いものでお互いに助け合っているの」


「人はみんな、弱者であると同時に強者でもあるのよ!」


女王が一度、大きく針をしならせた隙きを見逃さなかった。

剣で弾くと同時に、女王に蹴りを入れる。


女王が吹き飛び、その体は"壁"に打ち付けられた。


その瞬間、突然辺りが騒がしくなる。

鳥の声、遠くに聞こえる自動車の喧騒、何処かのサイレン――


これは――!


「フフフ、最後のひと押しをしてくれてありがとう」

起き上がった女王が不敵に笑う。


「最初からこれが狙いだったってわけね」


ゆらぎと現実世界が繋がってしまった。


だけど、私がエネルギーを加えたとはいえ、

女王自身のエネルギーも相当消耗したはずだ。このまま押しきれば!


そう思ったものの、

女王は踵を返すと、屋上から真っ直ぐに飛び降りていく。


「力をつけるまでは撤退じゃ!此処なら餌には困らんからの!」

現実世界で無尽蔵に人を襲う。そんなことを許すわけにはいかない。


「逃さないわよ!!」

サターンフォームにチェンジして、

リングを投げかけた所で――


――此処が現実世界だと言う事実が、私の手を止める。


ここで物を壊すと元には戻らない……

あの建物にも、その建物にも、人が居るかも知れない。


その一瞬の躊躇いの間に、

女王は今まさに角を曲がり、逃げおおせようとしていた。


――が、そうはならなかった。


バキッという音とともに、女王は角から、跳ね返るように戻ってきた。


「レオセヴンさん!!よかった!間に合った!」

「しょ……猫弐号!!」

「壱号です!!」


角から現れたのは、いつぞやの超重装甲パワードスーツを纏った翔子だった。

「この地区の住人の避難は完了しています!!こんな事もあろうかと、というやつです!!」


「ええい!邪魔だ!!」

「わわわ!!」


立ちふさがる翔子に蹴りを入れる女王。

あの巨大なアーマーがいともたやすく吹き飛ぶ。


「翔子!!大丈夫!?」

サンフォームに戻り、慌ててそちらの方へ駆け寄りながら声をかける。


「――私は大丈夫です!!それよりもノイヅを!!」

地面に仰向けに倒れたままの翔子が応えた。


「周囲に生体反応はありません!!存分に戦ってください!!」


わかったわ、そういうことなら!

私は逃げ腰でこちらを見る女王を睨みつけ、構える。

女王の腕は普通の腕に戻っている。

どうやら、針を維持するエネルギーはもう残っていないらしい。


「なぜだ、なぜ操らずにヒトを従えるのだ!」


「従えてるんじゃないの。支え合ってるのよ!!」


私は一気に距離を詰め、右足で回し蹴りを放つ。

女王の腕に阻まれるも、

反動を利用して反転、左から回し蹴りを決める!!


ブロック塀をぶち抜いて吹き飛ぶ女王。

女王は、なおも逃げようと、瓦礫の中から空中に向かって飛び出す。

だけど、今の私のジャンプ力なら!


飛び上がって空中で女王を掴んだ私は、

そのまま地面に向かって加速、

女王をアスファルトに叩きつける。


起き上がった女王が拳を構え、こちらに突っ込んでくる。


だけど、さっきまでの勢いはもう無い。

左手でなでるように拳の軌道を変えて、カウンターを打ち込む。

その場によろめく女王。


「終わりよ」


右腕にストーンを開放したすべてのエネルギーを集める。


「必殺、オーバーラップ・シャイニング・フィスト」


黄金に輝く私の右腕が、

ドン、という音とともに

女王の胸に命中する。


首を垂れ、その場に力なく立ち尽くす女王。


「負けるのか、妾が……」


その体に光が広がってゆく。


「……貴様の言うことはこれっぽっちも理解できん。この世は強いか弱いかだけじゃ。

そして妾は弱者の側であった。ただそれだけのこと」


女王は観念したようにそう言い残して、光とともに弾けるように消滅した。




「……おわった」


私は誰にともなくそう呟いて、ベルトからサンストーンを外して変身を解く。


私の姿は元の美少女に戻って、

手にしていたストーンとベルトは霧散するように消えた。


だけど、わかる。

レオセヴンの力は私の中に残ったままだ。


「ななみさぁーん!!」


後ろからの聞き慣れた声に、振り向くと、

「うわっと」

翔子が抱きついてきた。


「ななみさん!無事で!無事でほんとに良かった!!」

涙声で私に顔をうずめる翔子の頭をなでてあげる。


「ありがとう翔子。いろいろと心配かけたわね」


しばらく翔子が落ち着くまで、そうしていた。



「さて、それはさておき」

雰囲気で流してあげていたけど、

翔子にはどうしても言っておかなければならないことがある。


「……あんた、どさくさに紛れてお尻さわったでしょ」

しかもやたらといやらしい手つきで。


「え、いやぁ、ほら、その、」

私に抱きついていた肩がピクッとふるえる。


「こんな機会めったにないし、ちょっとくらいならいいかなって……」

「いいわけあるか!」

さっきまで撫でていた翔子の頭をぽんぽんとはたく。


まったく。


……ふふ、やっぱり翔子は翔子だわ。





それから数週間は、てんやわんやだった。

まず、中間テストは一日目の午後から欠席した上に翌日はノー勉で受ける羽目になったし、

ハカセには研究のためだって、わけのわからない検査を沢山うけさせられた。

私は一体何者なのか。

ハカセは、とある種族の血を引くどうのこうのっていってたけど、よくわかんない。

それを聞いた翔子は、「なるほど!最初から人工レオセヴンスーツはストーンではなくてななみさんの力を利用していたんですね!!」とかなんとか言ってたけど、やっぱりわかんない。

変身してたときには、いろんなことを理解したような気がするけど、変身を解除したら忘れちゃった。


幸い、テストの方はハカセがなんとかしてくれるって言ってたし、期待しちゃおう。

私の事はわかんなくてもなんにも影響ないしいいや。


そういえば、結局、ゆらぎと繋がってしまったあの場所は、

ハカセが翔子のドローンから手に入れた女王の"壁"への干渉方法を解析して、

逆パターンですこしづつゆらぎの世界を切り離しているらしい。


テレビでは、ガス漏れがあって大規模な避難が行われたとかなんとか言ってた。

実際に爆発もしたとか。ってそういえば、

どこかの家のブロック塀、派手に壊しちゃったわね……


でも、一番ビックリしたのは、翔子が持ってきた動画だった。


「――ななみさん!大変です!!これ見てください!!」

そういって翔子が差し出したタブレットの画面には、動画サイトが映っていて、

タイトルは『【陰謀】政府の嘘!?ガス漏れの真実【都市伝説】』とかなんとか。


その動画は、車か何かの監視カメラの映像で、レオセヴンと女王が戦ってるところが映っていた。

画質も悪いし、10秒も無いくらいの短い映像だったけど、紛れもなく私だった。

そんな動画が上がってからは、うちの学校でも、

前にもまして"レオセヴン"のうわさ話をよく聞くようになってしまった。



チエにゃんも、最近レオセヴンとか言うのがいるらしいわね。

なんて言っていて内心どきどきだったけれど、

チエにゃんは、私の正体にどれぐらい気づいているのか、

それとも全然気づいてないのかわからない。


チエにゃんも深くは聞いてこないし、私も詳しくは話さない。

それでいいのかもしれない。





――そんなことを考えていたら、4限終了のチャイムがなった。

よーし、やっとお昼。

おなかすいたー!

私はお弁当をもって、いつもの場所に向かう。

チエにゃんと、翔子。そして私。

さっきの授業で『平和』なんて言葉が出てたけど、

私にとっての平和はこの三人でいられるこの瞬間だ。



女王を倒したけれど、それでノイヅがいなくなったわけじゃない。

ノイヅはまた、現れるだろう。


私はこれからも、この平和のためにノイヅと戦っていく。



――優桐ななみとして、レオセヴンとして!







獣装超人レオセヴン(終)

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。

獣装超人レオセヴン。

はじめて小説というものを書いてみたので、拙いところもあったかと思いますが、

少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。


"この物語"の結末や、書ききれなかったエピソードのプロットはあるので、

もし反響があれば続きを投稿するやもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。