第九話 初陣!猫弐号
「――トドメだ」
右手でサンストーンを回転させ、
エネルギーを解放してスライディングキックをお見舞いする――
クモ怪人のノイヅに掴まれ、
中庭に落とされた俺だったが、
むしろ獅子島君を気にせず戦えて好都合だった。
クモ怪人は、そこら中に糸を吐き、
「どうだ、これで動けまい」と、勝ち誇った顔をしているが、
俺にとって、こんなものは何の障害にもならない。
「多獣装!!」
そう叫びながら、
最も攻撃力の高いサターンフォームにチェンジして、
円形状の大鎌 "サターンリング"を飛ばして周りの地形もろともクモ怪人の糸を切り刻む。
ゆらぎの世界は一定時間で元に戻る。遠慮は無用だ。
こちらに切断系武器があったのは想定外だったらしく、ヤツに為す術はない。
そのままサターンリングで、ヤツから新たに繰り出される糸を切り裂き、
接近して打撃を織り交ぜつつ、攻撃を続ける。
懐に入った俺は、サンフォームに戻り、打撃主体の攻撃に切り替えて戦う。
クモ怪人の6本の腕を掻い潜り、その体に一撃一撃に力を込めた拳を打ち込んでゆく。
――充分にダメージを与えたことを確認した俺は、
バックルのサンストーンについたギアを回転させ、ストーンのエネルギーを開放する。
クモ怪人に向かって走り、直前でスライディング。クモ怪人を蹴り上げる。
ちょうどクモ怪人が、
俺のスライディングキックによって、
外部から与えられたエネルギーでオーバーロードして
光とともに弾け飛ぶ瞬間。
窓から獅子島君がこちらを覗き込むのが見えた。
軽く手を上げて挨拶しそのまま踵を返して中庭を離れる。
我ながら、少しカッコつけすぎたかもしれないな。
憧れの獅子島にテンションが上がりすぎたのかもしれん。
変身解除っと。
えーと、変身前は何をしてたんだっけ。
あ、そうだ次の体育の授業を見学に行く途中だった。
まあどうせ見学だし、遅刻しても問題ないよね。
というわけで体育館に向かって廊下を歩いていると、
後ろから聞きなれた声が。
「ななみさぁーん!!大変です!!ノイヅが!
ノイヅがこの辺りに出るってさっきハカセから連絡が!」
「おっそいわよ翔子。もう倒した」
「えー!なんで声かけてくれないんですかぁ!せっかく一緒に変身するチャンスだったのに!」
この子は蜂羽翔子。私のストーカーで、相棒。
私に救ってもらった恩があるとかで、ずっと私を監視してたらしくて、
私がピンチになったときに、さっそうと助けに現れた。
そんでもって、ある朝突然、私のクラス前に現れて、
「ななみさん!後輩の翔子です!!これからよろしくお願いします!!」
なんてやるものだから、しばらく噂になって大変だったのよね。
それにしても、まさか一緒の高校だったとはね。
まあ1個下の学年なんて知らない子の方が多いから。
あれからひと月くらいかな?
みんな、休み時間のたびに翔子が私のところにすっ飛んでくるのにもなれて、
話題にもならなくなった今日このごろ。
なんの面白みもない午前中の授業が終わって、
学校唯一の楽しみであるお昼休みの時間がやってきた。
お昼はいつも決まった場所でお弁当を食べるのだ。
屋上への階段を登った先、屋上に出るドアの前。
ドアの横のおっきな窓から光がさしていて、今日もすごくいい雰囲気。
私と、親友のチエにゃん、そしてすっかりなじんだ翔子。
もう最初からいたような気すらする。
「――でね、そうしたら獅子島くんがね。」
「もう、今日もななみは獅子島くんの話ばっかり。あんた最近ほんとに獅子島くんにお熱ね」
せっかく私が今日の獅子島くんの様子を語ってるのに、
チエにゃんが興味なさげに話を遮った。
「なんてったって、みんなの憧れ獅子島くんよ?高身長で、優しくて、イケメンで――」
「あー。はいはい。で、話しかけたの?」
「え、いや、まあ、それはその。ほら、恋はしてる間が楽しいって言うか……」
実際のところ話しかけたといえば話しかけたんだけど、
私じゃなくてレオセヴンだったしなぁ。
そんなことを思っていると、
翔子がぼんやりとした表情でパンを片手につぶやいた。
「でもいいなぁ、獅子島さんって人。あーあ、私も男だったらなぁ」
「ん?翔子、私は愛に性別は関係ない派」
私は卵焼きを口に運びながら、翔子の言葉に反応する。
「え!?それじゃあ!?」
それを聞いた翔子は満面の笑みをこちらに向ける。
どっからくるのかしらこの自信は。
卵焼きを飲み込んだ私は、手を振りながら返答をかえす。
「それじゃあもなにも、ないでしょうが。愛が」
「えっ!?ないんですか!?私はこんなに愛しているのに!!」
そこにチエにゃんが神妙な顔でツッコミをいれる。
「翔子ちゃん。相手への愛の大きさが必ずしも相手からの愛の大きさと比例する訳ではないのよ」
「ならば!愛し続けます!ななみさんからの愛が返ってくるその日まで!!
いいえ、たとえ愛が返ってこなくとも!!」
「えっ。こわ。」
「あ!でも勘違いしないでくださいね!私はななみさんの恋、応援してますから!」
「もしお二人が結婚されたら、是非私をメイドとして雇ってください!!」
翔子がメイド……?
『おかえりなさいませ、ご主人様、旦那様。お風呂にしますか?ご飯にしますか?それとも……!?
もうお布団はご用意しております!!カメラもバッチリです!いつでも始めてください!!』
……絶対にイヤだわ。
と、突然私の胸ポケットでハカセの発明した最新の通信端末、"ネオベル"こと、
ネオ・ポケットベルが振動を始めた。
青白く光るディスプレーには、ノイヅの発生した座標が表示されている。
「ごめん。また公務員の叔母さんから呼び出しだわ」
またなの?とチエにゃんが呆れたようにいう。
「今日はあと一限で終わりなんだし、終わってからいけば?」
「それがそういうわけにもいかないのよねー」
チエにゃんはただの手伝いだと思っているけど、
実際は誰かが怪人に食べられるかもしれない非常事態なのだ。
同じようにネオベルで通知を受け取った翔子がそわそわとこちらを見ている。
「そうね。翔子が来てくれたら早く終わるかもね」
ぱっと明るくなる翔子。
「はい!もちろんです!がっかりはさせません!!」
「それにしてもちょっと最近多すぎじゃない?いくら公欠になるからって。
叔母さんも叔母さんよ。ななみに頼りすぎなんじゃないかしら」
「えっと、ほら、それは……」
チエにゃんのいいぶんも、もっともだ。
いい言い訳が思いつかなくて言いよどんでいたら、
翔子が助け舟を出してくれた。
「今は丁度消費税が上がるタイミングで書類整理が増えてるんですよ。それに、ななみさんの叔母さんは将来ななみさんを自分の地位につけたがっていて、今のうちにコネをつくらせたいらしいですよ」
……よくもまあこの一瞬でそんなそれっぽいことが言えるものだと感心した。
「ま、まあそんなわけだから、ちょっと行ってくるわね」
「まちなさい」
「放課後、プリン食べに行く約束。忘れてないでしょうね」
「もちろん。ちゃっちゃと終わらせて放課後までには帰ってくるわよ」
チエにゃんにそう言い残して私たちは憩いの場を後にした。
階段を降りながらゆらぎに入った私たちは、誰もいない校庭に出た。
「待ってくださいね、今、フォーミュラカーゴを呼びますから」
翔子がそう言いながら、ネオベルを操作している。
そういえばハカセに乗り物を作ってもらったんだった。
とはいえ、正直、本当に必要かといわれると微妙。
……なかなか来ないし。
「本当に来るの?この間に走った方が早くない?」
「だって、私のスーツ入ってるんですから、あれが来ないと私変身できません」
「だから私だけで十分なんだって」
そんなやりとりをしているうちに校庭にエンジン音を響かせて、
ぶかっこうなクルマが入ってきた。
二人乗りのF1カーみたいな運転席の後ろにトラックの荷台がくっついている。
改めて見るとでっかいわね。
とりあえず、運転席にふたりで両側から乗り込み、
シートベルトを締めて……「どうやって動かすのこれ」
運転席にはハンドルもないし、ペダルもついてないみたい。
「あ、これ、ナビで座標を入力すれば自動で動くみたいです」
言いながら翔子が助手席側のモニターを操作してノイヅの座標を入力したらしく、
車……なんてったっけ?フォーミュラカーゴ?がブルン!ってエンジン音を響かせて発進した。
ノイヅが発生するとハカセが予測したショッピングモールに到着した私たち。
確かにノイヅの気配を感じる。
「今のところ付近に人間の生体反応は無し。被害者は確認されていません」
「それは好都合ね。ノイヅが誰かをゆらぎに連れ込む前に倒すわよ」
さっとシートベルトを外して車を降りながら、ベルトを装着する。
「いま、猫弐号スーツを装着しますから少し待っててください」
翔子が車から降りて、荷台の方、変身タラップに向かう。
「残念だけど、そうも言ってられないみたいよ?」
私は、気配を感じた建物の影を見やる。
そこから、全身に毛が生え、腕をだらりとさげた、犬のような人影があらわれた。
ソイツはキバをむき出しにして、唸る。
飛びかかってくると思ったけど、以外にもその口からでたのは質問だった。
「小娘。なぜこちら側にいる」
「さあね。なんでだと思う?」
「知ったことではない。腹が減っているんだ。エサが目の前にあるなら食うだけだ!」
……やっぱり飛びかかってきた。
「じゃあ最初から聞かないでよね」
私は、ベルトにサンストーンをセットする。
「獣装!!」
その瞬間。ベルトから出た余剰エネルギーが
飛びかかってきたノイヅを弾き飛ばす。
俺の身体は瞬く間に変化し、
金の装甲を纏った屈強な戦士の姿へと変身した。
「獣装超人!レオセヴン!!見参!」
弾き飛ばされたノイヅは
態勢を立て直してこちらの様子を伺っている。
「貴様、ホントにさっきの小娘か?」
ノイヅのその質問は無視して、俺から奴に問いかける。
「こちらからも質問だ。なぜ人を喰らう」
ノイヅはフンと鼻で笑って答えた。
「それこそ知ったことではない。
目が覚めて、腹が減っている。
そしてそれを満たす方法がわかっている。
――ただそれだけだ!」
再びこちらに飛びかかってくるノイヅ。
今度は左右に飛び回りながら向かってくる。
その様子は常人ならば、さながら分身した様にみえるだろう。
が、そんなものに惑わされる俺ではない。
ヤツが俺をその鋭い爪で切り裂こうと、
地面を蹴り、
空中に踊り出したところで、
その腕を持ち上げる様に払って、
みぞおちにアッパーカットをお見舞いする。
すこし離れたところに、どさりと落ちるノイヅ。
が、すぐに起き上がると、狂ったように爪を振り回してこちらに向かってくる。
トン、トンとリズムよく後ろに下がってその爪を避けた俺は、
半回転しながら飛び上がり、ノイヅの後ろに回り込んで、その背中を蹴り飛ばす。
ズザーっと腹ばいに地面に倒れ伏すノイヅ。
動きは単純。知恵もなさそうだ。
「たいしたことはないな」
どうやら翔子の出番は無いらしい。
と、思っていた矢先、
起き上がったノイヅが咆哮をあげたかと思うと、
その身体がみるみる大きくなってゆく。
そして瞬く間に俺の背丈をゆうに超え、
見上げるほどの怪物へと変貌した。
「そうきたか」
たしかに、これがゆらぎに取り込まれた一般人ならば
強い"恐怖"を覚えるだろう。
――そこへ、
「すいませーん、ななみさーん!おそくなりましたー……ってデカっ!!」
緊張感のかけらもない間抜けな声が響き渡った。
「遅いぞ翔子。その手に持っているのはなんだ」
装着型強化装甲、猫弐号スーツを装着した翔子が
手になにやらアタッシュケースの様なものを抱えている。
「すいません!OSがバッテリーを認識しなくて再起動を……あ、これはですね。
中に新開発の武器が入ってるんですよ!パスコード認証付きで安全安心です!」
悠長に話す翔子だが、突然現れた翔子を警戒していたノイヅが動いた。
右の大振り。
俺たち2人をまとめて殴り飛ばす魂胆だろう。
……が!
拳には拳を!こちらも腰を入れた右フックを返す。
ぶつかる拳と拳。
拳の大きさは奴のほうが数倍は大きいが、所詮図体だけだ。
力は互角。
ぶつかり合った反動で、互いに軽く仰け反る。
「翔子!武器があるなら準備しろ!」
はいっ!と元気よく返事した翔子が
アタッシュケースのボタンをいくつか押している間、俺はノイヅを牽制する。
わざと大きな動きでノイヅを誘い、俺に攻撃を集中させる。
どうやらオツムは大きくならなかったようだな。
俺を叩き潰そうと必死になって、その巨大な腕で地面を叩き回っている。
そうして俺が時間を稼いでいる間に、
翔子が取り出したのは
片手で持てる大きさの剣の柄のような物だった。
「これはですね、刃の部分が何重にも折りたたまれていて――」
いいながら起動したらしく、
どこに収納されていたのか、瞬時に刃が展開され、
ロングソードのような風情になった。
「蜂羽翔子、猫弐号!!試作展開剣で行きます!!」
剣を構えた翔子は口上のような物を叫びながら、
ノイヅの足元に向かって突っ込んで行く。
「てーい!!」
勢いよくノイヅの足に剣を振り下ろす翔子。
だが――
「――あっ!?……折れちゃいました!!」
まあ、そうなるだろうな。
刃を折り畳み式にすれば可動部の強度が不足するだろう。
はなから翔子の武器の威力には期待していない。
が、ノイヅの気をそらすのには一役買ってくれた。
翔子が大げさに突っ込んでいってくれている間に、
俺はノイヅの股下をスライディングでくぐり抜け、敵の背後を取っていた。
そのまま飛び上がった俺は、奴の背骨目掛けて飛び蹴りをくらわせる
――はずだったが、
「速い!?」
巨大な図体からは想像もつかないようなスピードでこちらを振り返り、俺に向かって手を伸ばす――マズい。掴まれると思った瞬間、奴は大きく姿勢を崩した。
「ななみさん!!」
どうやら翔子がノイヅの足に正拳突きをお見舞いしたらしい。
お陰で俺の飛び蹴りは奴の鎖骨付近に命中。
反動を利用して宙返りをしながら、着地。
翔子も俺の隣に駆け寄ってくる。
ノイヅは片膝をついてはいるが、
まだまだエネルギーが残っているようだ。
かなりタフな相手らしい。
俺は翔子と連携して攻撃をすることにした。
事前になにも打ち合わせてはいないし、共闘するのも今日が初めてだが、
翔子ならやってくれるだろう。
そんな妙な信頼感があった。
「いくぞ翔子」
「はい!」
俺たちは左右に別れて走り出した。
ノイヅを中心に円を描くように走る。
奴の振り回す腕を飛び越え、掻い潜り、
俺が右から攻撃すれば、合わせるように翔子が左から攻撃をする。
翔子、もとい猫弐号の攻撃力はそれほどあるわけでは無いが、
オツムの弱いノイヅは片方の相手で手一杯になる。
それに、翔子は攻撃を的確にノイヅの腱や関節などの急所に当てている。
「翔子!!」
「了解です!!」
名前を呼んだだけで、翔子は俺の意図を理解して、こちらに走ってくる。
俺たちは、ノイヅの正面で合流し、同時に蹴りを放つ。
怖いくらいぴったりタイミングのあった蹴りに、
ノイヅの巨体がすこし宙に浮き、
そのまま地面に仰向けに倒れこんだ。
「みましたか!!これが必殺!愛の合体二重奏です!!」
今初めて聞く技名を叫んではしゃぐ翔子を無視して
俺はサンストーンを回転させる。
どれだけダメージを与えても、
俺がストーンのパワーを打ち込まなければノイヅを消滅させることはできない。
結局、ノイヅを倒せるのは俺だけなのだ。
こちらは相手を倒すことが出来ないのに、
向こうはコチラを殺すことができる。
そんな状況に翔子を置きたくはなかったのだが。
「サン・トワイライトキック!!」
倒れた状態で起き上がろうともがくノイヅに
回転とストーンのパワーを乗せたかかと落としを打ち込む。
一瞬その身体が光に包まれ、弾けるように消滅した。
「どうですかななみさん!私役に立ちましたか!?」
ヘルメットを外した翔子が、期待の眼差しでぴょんぴょんと跳ねている。
「……翔子、お前は強い。これからも頼りにしている」
ぱっと、翔子の顔が明るくなる。
俺は思わず目をそらした。
「……帰るぞ。チエにゃんとプリンを食べにく」
「それ、私も行っていいですか!?」
「ああ。――もちろんよ。あんたがいると賑やかいしね」
「やっぱり帰りのこと考えるとフォーミュラカーゴも捨てたもんじゃないわね」
チエにゃんにメッセを送りながらシートでくつろぐ私。
今日は5限までだし、このまま授業が終わるの待ってからチエにゃんと合流しようっと。
「よし、どこのプリンにするか決まったわよ」
いいながら、フォーミュラカーゴのナビに行き先を入力する。
「駅前のハンバーガー屋っと。
ラッキー!ここはまだゆらぎの範囲内ね。
このまま乗っていきましょ。あそこ、ハンバーガーはマズいけど
サイドメニューのスイーツが最高に美味しいのよねー」
「あー!また私用につかっちゃって……また博士にぶーぶー言われますよ!」
「んー!おいしー!もー、今朝からプリン食べたくて仕方なかったのよねぇ」
チエにゃんと合流した私たちは早速テーブルについてお目当てのプリンを食べ始めたのだった。
「翔子ちゃんは結構ガッツリいくのね……」
同じようにプリンを食べてるチエにゃんが、意外そうに言うので、
となりの翔子のトレーを覗き込むと、
翔子はハンバーガーにポテトにプリンと、フルセットだった。
「はぃー。初めてななみさんのお手伝いをしたから緊張しておなかすいちゃって」
「へー。翔子はここのハンバーガー、イケる感じ?」
「はい。ちょっと酸味がありますけど、それがまたいい感じですよ」
ななみさんも一口どうぞ。はい、あーん。
なんてやり始めたから雑にあしらってプリンに集中する。
『もぉ、桜木さんってば〜』
ふと、聞いたことがあるような声に顔を上げると
向かいのテーブルで他校の女子高生2人が楽しそうに笑いあってた。
うーん。見覚えがあるようなないような……
でも、他校に知り合いなんか居ないし、気のせいかな。
「――ちょっと、ななみ。きいてんの?」
「え?あ、うん。美味しいよね」
「きいてないじゃないの」
「ごめーん。なんの話?」
「ななみさんは私とチエさんならどっちと付き合うかって話です」
「そんな話、してないわよね?」
真面目な顔で大ウソをつく翔子にすかさずツッコムチエにゃん。
「で、どっちなのななみ?」
そして、乗るチエにゃん。
「え、じゃあ、チエ、付き合ってください」
「そんなー!!」
大げさに嘆く翔子。
「お断りします」
笑顔で断るチエにゃん。
「ちょっとー!どういうことよそれー!」
チエにゃんが吹き出したのをきっかけに、自然と3人に笑いが広がる。
ふと、また向かいのテーブルの女子高生達が目に入る、
私たちもあんなふうに見えてるのかしら。
だとしたらこれこそが、私が守るべき光景ってやつよね。
残っていたプリンを全部くちのなかに放り込む。
うーん!あまくておいしー。しあわせー。
これからもこの幸せのために、がんばりますか!




