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猫憑き少女とタソガレ探偵喫茶【連載版】  作者: 島田莉音
猫憑き少女とタソガレ探偵喫茶の店長
3/4

第2話


楽しく読んで頂けたら幸いです‼︎

よろしくどうぞ‼︎






タソガレ探偵喫茶から帰宅した美琴は、神妙な顔で階段を上がる。



普通の一軒家である田村家は、二階に部屋があるのだ。

早々に自室に入った美琴は、何も考えずにベッドにダイブした。


「はぁ……」


今の美琴の心境はなんとも言えないモノだった。

探偵喫茶にいた時は、緊張していて……この現状をどうにかできると思って話をしていたが……冷静に考えると、自分の話は酷くおかしいと思う。

常識人ならば気狂いに思われるだろう。

猫耳と尻尾なんて美琴にしか見えないのだから。


(あぁ……でも。有人さん達はこの猫耳を見て普通にしてた……。何も言わずとも猫憑きって判断してたし……大丈夫なの、かな?)


もしあの噂が嘘だったら。

彼らは美琴のことを頭のおかしい子だと判断していたかもしれない。

そうならなかったのは、その噂が本当だったから。

でも、今日の会話では彼らがどんな人達なのかは聞かなかった。

地道に調べるとは言っていたが、具体的には聞いていないし、どうやって解決するのかも分からない。

いや……自分の話をするのだけで一杯いっぱいで。

そこまで頭が回らなかった。

猫耳と尻尾が生えるなんていう非現実的なことが起きてから、彼女の思考は停止しがちだ。

現実逃避の、一種なのかもしれないが。


「って……あぁっ⁉︎」


そこで美琴は飛び起きる。

その顔は青くなってきていて。

美琴は頭を抱えてベッドに再び崩れた。


「連絡先……教えてないのに……どうやって連絡取ればいいの……」


なんだかもう、散々な感じだった。



しかし、美琴の不安は……次の日、とんでもない結果で解決することになる。






*****




昨日のことが嘘のように、次の日はいつも通り変わらなかった。



美琴の頭や臀部には変わらず猫のソレが存在するし、家族はソレが見えないらしい。

いつも通りに学校に向かい、授業を受ける。

昼休みはいつも通り、教室で友達と昼ご飯を食べる。

話題はいつもと違ったけれど。



明るめの茶髪を二つ縛りにして、メガネをかけた友達の明石あかし菜々子ななこは、オカズを口に放り込みながら聞いてきた。


「で?噂の探偵喫茶には行けたの?」

「まぁ……うん」


美琴は菜々子にだけ、自分の状況を説明していた。

菜々子にも猫耳などは見えていないのだが……美琴の話を信じてくれたのだ。

その理由は簡単。


『えっ⁉︎そのラノベ展開めっちゃ面白いじゃん‼︎』


と、軽く受け入れたのだ。

流石にこの時の美琴は驚きを隠せなかった。

普通は信じないと思っていたから。

まぁ、そんなこんなで。

菜々子にだけは、噂のタソガレ探偵喫茶に行くことを告げていた。

美琴は昨日、探偵喫茶に行けたことを肯定したがその顔は晴れない。

彼女の顔色を見た菜々子は首を傾げながら、更に聞いてきた。


「なんで行けたのにそんなに不安げなの?」

「うん……まぁ、その。自分の話をするだけで一杯いっぱいで。これからどうするかとか何も話してないんだよね……」

「あー……美琴、なんかちょっと抜けてるもんねぇ」


馬鹿、という訳ではないのだが……どこか抜けているのも美琴の悪いところだ。

そんな風にもぐもぐとお米を噛んでいたら、「痛いっ‼︎」と目の前で悲鳴が挙がった。



何事かと思ったら、菜々子の頭に手が生えていた。



「えっ⁉︎」

「ちょっと‼︎誰よっ‼︎チョップ噛ましてくるのは⁉︎」


ガバッと菜々子が振り返るとその手が浮かぶ。

自分の頭に猫耳が生えたからか……チョップした手を生えた手と間違えたらしい。

美琴は自分の思い違いに恥ずかしくなりながら、彼女の後ろに立っていた人物に視線を向けた。

短めの髪に、爽やかな顔立ち。

学ランの似合う彼は、ニカッと笑って手を挙げた。


「大丈夫か?田村。なーんか凹んでるみたいだったから、菜々子に虐められたのかと思って」

「友達なのに虐める訳ないでしょおっ⁉︎」


彼の名前は、宝井たからい奏太そうた

名前の順で席が近かったことから仲良くなったクラスメートだ。

そして、菜々子の幼馴染でもある。


「うん、大丈夫だよ。少し自分の抜けてるところを反省してただけだから」

「そうか?なら良いけど……」


奏太は近くにあった椅子を引っ張り、手に持っていたコンビニ袋からおにぎりを取り出す。

どうやら一緒に食べるつもりらしい。


「えぇ⁉︎奏太、また一緒に食べるの?」

「駄目なのかよ」

「駄目だよ‼︎私と美琴が二人っきりで食べてたのに……ていうかか、あんた、友達はいいの?」

「大丈夫、だいじょーぶ」


菜々子と奏太は、そのまま言い合いを始めてしまう。

ここ最近、奏太はいつも昼ご飯を食べてくる最中に参加してくる。

そして、こうやって菜々子と言い合いしているのだ。

内容は一緒に食べるの反対とか、菜々子の許可はいらないとかそんな感じのだ。



どうやら奏太は菜々子が好きらしい。



この光景が始まってから、クラスメート全員の共通の認識ゆえに、美琴は何度か二人っきりになれるように席を外そうとしたのだが……。

その度に二人に止められ、こうして三人でご飯を食べるスタイルが確立しつつあった。


「そーいえば。昨日、田村、路地裏に消えて行ったけど……どうしたんだ?」

「え?」


だから、奏太からそんなことを言われると思っていなくて、美琴は目を見開いた。

彼は美琴の様子に気づいて、慌てて弁明してくる。


「あ、違うぞ⁉︎たまたま見かけたんだ。そしたら、路地裏に入っていくもんだからどうしたのかと思って……」

「あ、うん……ちょっと、ね」


急に言われて美琴は動揺する。

特に隠している訳ではないけれど、なんだか少し……奏太に言うのははばかられた。


「田村?」

「えっ、と……」


動揺した美琴は更に何を言えばいいかかわ分からなくなってしまう。

そんな彼女を見かねたのか、菜々子が助け舟を出してくれた。


「奏太には話したくないんだよ〜。女の子同士の秘密だもんね〜」

「…………路地裏に行くのが?」



ぞわりっ……。



その声は何も変わりないはずなのに、美琴は肌が粟立つ感覚がした。

心臓がドクドクして、落ち着かない。

そんな彼女の様子に気づかず、菜々子と奏太は言い合いを続ける。


「え?何?奏太はそんなに美琴の行動を知りたいの?別に奏太には関係ないじゃん。それなのに美琴の行動、全部知りたいの?変態なの?」

「そういう訳じゃっ‼︎路地裏とか人が通らなくて危ないだろっ⁉︎だから……田村?」

「っっ‼︎」


ガタンッ‼︎

美琴は勢いよく立ち上がり、後ずさる。

しんっ……と教室が静まり返ったが、それでも美琴は何も言えなかった。

息が浅くなる。

なんだか分からないけど、恐い。

なんだか分からないけれど、ずっと我慢してたのをめたかのような……。


「美琴?大丈夫?」

「……だ……大丈夫、だよ……」


そう返事をするが、美琴の気分は優れない。

今までが嘘のように、彼に対する警戒心が上がっている。

なんだか分からない感覚に、顔色が悪くなる美琴は……明らかに普通じゃなくて。

菜々子は心配になって、彼女に言った。


「顔色、悪いよ?保健室行ったら?」

「………う、ん……」

「オレが送ってこうか?」


奏太に言われて身体がビクッと震える。

美琴はなんでもないように、答えた。


「大丈夫。一人で行けるから……」


お弁当箱を片付けて、美琴は教室を後にする。

教室から離れていくほど、徐々に心臓の音は収まっていって……さっきより気分がマシになっていく。


(さっきのは……?)


ゆらゆらと揺れる美琴の尻尾。




美琴は気づいていないが……それは何故だか、思いっきり逆立っていた。






*****





保健室に着いた時にはほとんど体調に問題はなかったが、微妙に顔色の悪かった美琴はそのまま少し休ませてもらうことにした。

休んで体調が回復した美琴は、最後の一コマの授業を受けることはできた。



そして放課後。

昨日の話の続きをするためにも、またタソガレ探偵喫茶に行こうかなぁ……と考えていたら、教室の女子生徒達が騒いでいる気がした。

何事かと思って視線を動かせば、彼女達は窓に寄って外を見ている。


(どうしたんだろう……?)


と首を傾げていたら、窓際にいた女子生徒の中から菜々子が美琴の元へとやって来て。

彼女達同様に、菜々子は興奮した様子で美琴の腕を引っ張ってきた。


「ねぇねぇ、来て‼︎美琴‼︎」

「えっ……ちょっと、菜々子‼︎一体、何⁉︎」

「校門のところにカッコいい男子がいるんだって‼︎」

「え?」


菜々子に引っ張られて、窓際に行くと……確かに校門のところに寄りかかる男子の姿。

スラッとした体型の、名門高校の臙脂えんじ色のブレザーを着た黒髪の美青年。



その姿を見た瞬間、美琴は固まった。



(あれって……萩原さんーーっ⁉︎)





そう……それは紛れもなく……。


タソガレ探偵喫茶の店長だった……。





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