邂逅
皆様実にお久しぶりです。
テストを終えての復帰第一話です。
短めですが、これから頑張りますのでどうかご容赦を。
〈フランス パリ〉
見張り台に登った光真らの目の前に広がる敵の波。
モンマルトルの丘から撤退してパリの城壁の中に押し込まれるような格好になったまま、数刻が過ぎる。
〈閃光の師団〉はもちろん、〈暁の幻魔団〉といえどパリの城壁を自力で突破することは難しく両軍睨み合ったまま戦況が動かない。
「あの数の隙を突いて脱出するのは至難の技です、とはいえ時間を取られると南からも敵がやって来て挟撃されます。そうなればもはや脱出など夢のまた夢です」
半蔵は眼下の敵を睨みつける。
「今頃はルーアンの方でも雪菜さん達が〈魔弾の射手〉相手に奮戦している所だろう。今はとりあえず皆に動揺が走らないようにだけしておいてくれ」
数人の返事の後、石の階段を小突く音が数回鳴り渡る。
緊張感を途切らさないまま、〈閃光の師団〉は城壁の上から、〈暁の幻魔団〉は矢の届かない城壁から少し離れた所から、来たる開戦に備える。
〈フランス ルーアン〉
海からはさほど大きな船ではないものの、圧倒的な数の船舶でルーアンという小島を飲み込まんとする波のように敵が押し寄せる。
〈魔弾の射手〉率いる水軍はルーアンの目の前の海岸に陣取って上陸作戦とり、既に何度目になろうか、波状攻撃をしかける。
ある者は城壁を登るのに邪魔にならないやや短めの長さの剣を構え、ある者は城壁にかけるためのロープを持って、ルーアンめがけて殺到する。
対峙する〈閃光の師団〉の軍も雪菜、和泉の指揮のもと城壁にかけられたロープを切断し、雨のように矢を浴びせながら一歩も譲らない防衛戦を展開している。
しかし幾度とない〈魔弾の射手〉の攻撃に弓を引く兵士にも流石に疲労の色が見え始める。それと共に城壁での攻防の距離も徐々に城壁側に近い所のものとなってくる。
「全員踏ん張れ!パリでも同じように仲間が戦っているんだぞ!」
雪菜は目の前のロープを切断しながら必死に皆を鼓舞する。しかし肉体的にも精神的にも追い詰められている〈閃光の師団〉の兵士達にはこれ以上の奮起はできそうもなかった。
そんな時沖で待機していた〈魔弾の射手〉の艦隊の列が突如崩れ始める。
雪菜も遠目で船から投げ出される〈魔弾の射手〉の兵士が見える。不審に思い、艦隊が崩れて行くポイントを見ると南から〈魔弾の射手〉に勝るとも劣らない数の大艦隊が次々と矢を放って、不意を突かれた〈魔弾の射手〉の船を次々に沈める。
「エンプレス様あれは一体……?」
雪菜の近くにいたまだ少年の域を出ない兵士がわずかな喜びを顔に浮かべながら震える指で沖の方を指す。
「お前の予想通りだ。〈鷹の城〉からの援軍だ」
その声を聞いていたものから歓喜の声が上がる。戦いぶりから先ほどまでの疲労も雲散霧消し、士気も大いに高揚したのが伺える。
ほどなくして〈魔弾の射手〉の本隊は陸上で交戦している部隊を置き去りにしたまま、イギリスの方に撤退する。
残された陸上の部隊は見捨てられたことに困惑したまま〈閃光の師団〉と〈鷹の城〉の挟み撃ちを受けて先程までの威勢はどこへやら、あっという間に全滅する。
雪菜、和泉らは数名の兵士を連れて〈鷹の城〉の大艦隊から降りてきた、笛裏らと海岸とルーアンのちょうど間の所で出迎える。
「このような大艦隊の派遣、誠にありがとうございます」
笛裏がこちらに来るや否や深々と雪菜は頭を下げる。笛裏はそれを見ると雪菜が頭を下げる眼下に手を差し伸べて握手を求める。
「同盟クランとして当然のことです。同じ船に乗る者としてこれから一緒に戦って行きましょう」
顔をあげた雪菜の前には穏やかな笑みを浮かべた笛裏がいる。雪菜は差し出された手をがっしりと受け止める。
「ああ、まずはお手数を掛ける」
「つまり、今はパリで包囲されているということですね」
「ああ、戦闘員だけならまだしも非戦闘員を連れての包囲網突破は難しい」
長机を挟んで笛裏ら〈鷹の城〉の重臣と〈閃光の師団〉の雪菜、口羽、和泉らがパリ救援についての意見を交わす。
「そればかりか、南からも敵の軍が迫っているという情報もある」
「でしたらやはり、外と中で挟み撃ちをしつつ迅速に非戦闘員を避難させるという手が最善ですかね」
顎に手を当てて考えている笛裏の仕草から真剣に〈閃光の師団〉を救おうという意志が伺える。
「口羽さんの言っていたマスターがいかなる人物か早く見たいものです」
そこからもう少し話を詰め、ルーアンから〈鷹の城〉と〈閃光の師団〉の連合軍がパリめがけて進軍を始めた。
お疲れ様でした。
新たな小説の方も鋭意製作中ですので、是非ご期待ください。




