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Tarot Quest  作者: KINSYO
19/21

局地戦と大局

皆様ご無沙汰しております。

いよいよ戦いが始まります。

しばらく続く、戦いを是非お楽しみください!

〈パリ内部〉

戦線を狭めるために領土を切り捨てる事にした〈閃光の師団〉の首都パリでは北門以外の全ての門が開かれて、トゥール、ポワティエ、オルレアンなどから退避してきた人で溢れ返っている。パリを目指して蟻のように人が門に詰め掛ける様はまさにこの危機を象徴するように見える。

「半蔵、避難の様子はどうだ?」

北門の城壁に立ってじっとブリューゲルの方を見つめる光真は隣の忍者の衣装に身を包んでいる半蔵に首を動かさずに尋ねる。

「南の遠方はあらかた片付いています。近隣についてはまだ完了しておりませんが、じきに完了すると思います」

「そうか……皆に迷惑をかけたな」

悔しさのこもった声で呟く。仕方がないとはいえ領土を失い、民衆が避難しなければならない事態に追いやってしまった事が光真には辛い事であった。

「ここの皆は優しい。誰も光真君の事を悪く言わないわ」

半蔵とは光真を挟んで反対側に立つ千鳥が自身の体験した人の温かみを語る。

「ありがとう」

素っ気なさそうに答える、しかし重くその言葉を光真は胸に刻んだ。

「もぐもぐもぐ、敵が国境を越えて来たようですよ~。そろそろ準備しましょう」

ハンバーガーのようなパンに肉を挟んだようなものを食べながらシャルルが後ろの階段から上がってくる。

「お前はいつも通りで助かるよ」

シャルルの美しいプラチナブランドの髪をわしゃわしゃと撫でる。シャルルは気持ちが良さそうに透き通った青みがかった瞳を光真に向ける。

「緊張しているのですか?」

このような危機にも関わらず、いつも通りののんびりとしたシャルルの鈴を転がすような声が光真の耳で響く。

「ちょっとだけな」

シャルルの髪を撫でる手を止めて半蔵、千鳥と共に階段を降りる。なぜか不機嫌になった千鳥をなだめながら戦場に繰り出して行った。


〈閃光の師団〉の一団は〈暁の幻魔団〉の『皇帝騎馬隊』に対抗するため、長槍部隊を平坦な地に三列に並べ、モンマルトルの丘という小高い場所に弓部隊、歩兵部隊を配備した。騎馬隊の一番秀でる部分はその機動力にある。そのため長槍で動きを制限しつつ、弓と歩兵で一気に殲滅するという作戦を光真と天方との話し合いのもと立てた。長槍部隊は光真、ダッサンが、弓部隊はシャルル、天方が、歩兵部隊は千鳥、半蔵が率いている。雪菜、和泉は避難民の防衛に当たっているためこの戦闘には参加していない。

「皆、この作戦はいかに長い間俺たちがここで敵を食い止められるかが作戦の成功の鍵だ。〈閃光の師団〉の精鋭として役割を果たしてくれ」

長槍部隊の戦闘に立つ光真が後ろを振り返って皆を鼓舞する。それに応えてダッサンを始め全員は鬨の声を上げる。目には決意が宿っており、命を投げ打ってでもパリを守る、そんな覚悟が見て取れた。

ふと遠くから雷鳴が轟くような音が聞こえてくる。光真が北の方に振り返ると遠目に数匹の馬がこちらに向かって疾走してくるのが見える。その数は時間と共に増えていき、その嗎声いななきごえと騎乗者の掛け声が波となって押し寄せる。

「槍を正面に構えろ!全員の呼吸を合わせろ!」

全員がすり足で一歩一歩と歩を進める。そして、ぶつかる。

〈閃光の師団〉の側は数十人が肩などに振り下ろされた剣を受けてその場に倒れる。〈暁の幻魔団〉の側でも数十人が胸に長槍が突き刺さって動きを止める。

攻撃範囲の広い長槍に機動力のある騎馬、お互い精鋭という事もあり前にいる兵士からばたばたと倒れていき、消耗戦に突入する。

「第一陣退け!第二陣交代!」

光真は目の前にいる騎馬兵を槍を棒高跳びのように使って飛び、その顔面に蹴りを叩き込みながら大声で叫ぶ。『皇帝騎馬隊』の攻撃は凄ましいもので、今まで戦って来た相手のように一筋縄では行かず、何度も突撃を繰り返して長槍部隊の槍を弾き、手に持った長剣を力の限り振り下ろして槍兵を仕留めていく。劣勢の中で〈閃光の師団〉は傷つき、疲弊した第一陣が列の隙間から後ろに下がっていき代わりに第二陣が突出する。このように代わる代わる戦っていくと流石の『皇帝騎馬隊』の動きにも疲れから動きが乱れてくる。

光真はそれを見逃さず、長槍部隊に合図を送って三メートルほどの距離を敵との間に開ける。騎馬兵も戸惑いを隠す事ができず、その場に間抜けにとどまる事しかできない。

「今だ撃てぇ!」

フォーカスオンバーチャルを通してあらん限りの大声で光真が叫ぶと、馬上で呆然としている敵兵の横から無数の矢が飛んで来てある者は落馬し、ある者は矢が刺さって暴れた馬に振り回される。

「歩兵部隊攻撃!長槍部隊突撃!」

丘からは千鳥率いる剣を装備した歩兵部隊が猿のように疲れの見えてきた『皇帝騎馬隊』に襲いかかる。押されていた長槍部隊もここぞとばかりに突撃して槍を敵に突き刺す。再び阿鼻叫喚の戦いが繰り広げられ、二方向から攻撃され、動きを封じられた『皇帝騎馬隊』は進むも退くもならず攻撃の受けるままに倒れて行く。

間もなく殲滅かと思われたその時、北から大部隊がパリをめがけて行軍しているのがわかる。

「た、大将!あれは〈暁の幻魔団〉の第四皇帝率いる本隊です!一度パリに撤退を!」

焦燥に駆られて乱戦のさなか半蔵が大急ぎで光真の元へ駆ける。

「仕方がない、全員速やかにパリに退け!」

敵味方問わず、光真の指令に疑問を感じたが北の方に見える大部隊を見て〈閃光の師団〉は撤退し、〈暁の幻魔団〉は馬に乗って体制を立て直す。

勝ち戦にもかかわらず、撤退しなければならない状況に光真は心の中で強く舌打ちをした。








お疲れ様でした。

今回はやや短かったですが、次は性根いれて書きますのでご勘弁を。

ではではまた次話で!

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