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Tarot Quest  作者: KINSYO
12/21

放課後の仕事

皆様少しぶりです。

いつも見ていただいている皆様には感謝しております。

これからもよろしくお願いします。

それではどうぞ。

「その様子だと知っているみたいだな。あれは一体なんなんだ?」

こちらの狼狽えぶりを鑑みないで凛が言葉を次ぐ。

「まさか先生もあの世界へ?」

「ああ、困ったモノだよ」

凛はため息を一つついて肩を落とす。光真の方も担任までもがあの世界へ連れて行かれたという事実を整理する事ができないでいる。

「済まんな、突然過ぎて驚かせてしまったかもしれない。私も焦燥に駆られていたんだろう。詳しい事はあちらで話そう」

「ええ、わかりました」

光真はそう返事すると、静かにドアを開けて出て行った。


心ここにあらずといった状態で学校からとぼとぼと歩いて家に戻る。

もちろん母親はまだ帰って来ていない。鞄を部屋に放り投げて光真はベッドにうつ伏せになる。フォーカスオンバーチャルを開くと、『Tarot Quest』の起動画面が開かれる。陰鬱な気分のまま意識が飛んで行く感覚に身をやつす。

「やあ、来たのか」

再び目を開くとそこは昨日ぶりの中世パリの街並みだった。ログイン情報が伝わったのだろう、雪菜が早々に通話をかけて来る。

影の一日(シャドウ・デイ)じゃなくてもログインはできるんですね」

「そうみたいだ、もっともクランに入っている者は領土の外に出る事ができず、領土の外にいた者は最寄りの自分の都市に飛ばされるらしい」

「じゃあ領土戦は基本的に影の一日(シャドウ・デイ)の間に決着をつけなければ元の場所に戻されてしまうという事ですか。」

確かに次にログインをした時はいきなり敵の目の前からスタートなどは困った話である。それに領土の外に出る事ができないというのも、日常ログインができる人とできない人との差が出ないようにするための措置なのだろう。影の一日(シャドウ・デイ)の間に敵に迫っておいて、始まったと同時に攻撃などもはや卑怯の部類に入る。

「うちのクランは今何人くらいログインしてるんですか?」

光真が尋ねると、フォーカスオンバーチャルを操作する電子音が聞こえて来る。

「ざっと2000人くらいかな。それがどうかしたのか?」

「いえ、今のうちにワンドソード聖杯カップ硬貨コインなどを集めておきたいですからね。恐らく運営側の意図はこの期間に物資を集めさせることでしょう」

「流石クランマスター、いろいろ考えているんだな」

雪菜の声には納得と感心の響きが含まれている。あまりにも手放しの賞賛に光真はこそばゆい感覚を覚えた。

「と、とにかく皆にモンスターを倒して来るように指令をかけて下さい」

「わかった、わかった。やっておくよ。マスター」

光真の照れに気づいたのだろう、雪菜は小悪魔的な声で光真をからかう。

光真はどうにも調子の狂う思いであった。


光真は通話を切ると〈暁の幻魔団〉と激戦を繰り広げた北門から外に出る。あれ程双方が火花を散らして戦ったのにも関わらず、クリスタルをとった事によってそれが嘘であったかのように石造りの街はすっかり元に戻っていた。

門を出てすぐの所にわざわざやられるためにいるようなモンスターはいない。家の前で待ち構える空き巣がいないのと同じだ。それで光真は北の方へ歩を進める。行きすぎると〈暁の幻魔団〉との国境までたどり着いてしまうが、そこに行くまでにはモンスターも出現するだろう。

しばらく名も知らぬ草の上を通っていくと、早速昨日出会ったゴブリンが一体目に入る。相変わらず残念な顔面だ。

向こうもこちらに気がついたのか、棍棒を振り上げて襲いかかって来る。

光真の武器は昨日と違って短槍である。通常の槍に比べれば長さは及ばないものの、剣や棍棒などに武器に比べればかなりの長さの差がある。

そのリーチを生かしてゴブリンが棍棒を振り下ろすのに合わせてカウンター攻撃を繰り出す。その穂先はゴブリンの眉間に突き刺さり、緑色の体液が吹き出した後どさりと倒れる。レベルアップや槍の威力のおかげで数発当てなければ倒せなかったゴブリンが一撃のうちに沈んだ。

ゴブリンはそれほど強いモンスターでもないので、死体が消えた後に出てきたワンドの数字は一で、ソードも一であった。

「こんなのをチマチマ倒してても大した稼ぎにならないな、もっと強いモンスターがでてくればいいんだけど」

ブツブツ不満を言いながら、光真はその二枚のカードを拾おうとする。

すると手を延ばした所を覆い被すように影が現れる。不審に思って顔を上げると同時、さっきのゴブリンの棍棒より遥かに大きな棍棒が振り下ろされ、光真の右腕のほんの手前の地面を抉り取る。

シンボルエンカウントでは良くあることだが、急に敵が湧き出てきたようだ。

光真は顔をあげるとそこには赤色の体表をしていて、山賊のように毛皮を纏った一つ目の巨人ーーサイクロプスがいた。

「なんでやねん……」

光真の倍近い体長のサイクロプスは不気味な笑みを浮かべると、力任せに棍棒をブンブンと振り回す。

何回も振り回すのを避けきれなくなって、槍の柄で唸りをあげて薙ぎ払われる棍棒を受け止める。しかし、その威力は受け止めることができず光真は後ろに投げ出されて地面に叩きつけられる。

サイクロプスはそれを見て満足したのか、バナナのような黄色っぽい舌を出して舌を舐めずる。光真をいたぶるのを楽しんでいるのであろう、その挙動には品性も何も無い。

サイクロプスは立ち上がった光真目掛けてその丸太のような太い足を踏み出して突撃する。光真はサイドステップでそれをかわすも、追撃の棍棒を受けて横に吹っ飛ばされる。だが今回はどうにかして受け身を取ることができた。

「やっぱ『愚者』じゃ勝てないか……誰もいないしこれを使ってもいいだろ……」

光真は左手にはめてある『分身の指環(ダブルリング)』をちらりと窺う。そして目を閉じて自分の意識の分割をイメージする。

「さあて、行かせてもらうぞ」

十の声が完全に重なり、一つの声として知覚される。サイクロプスの方もこの現象に面食らっているのか、さっきのように迂闊に飛び込んで来ない。

サイクロプスを取り囲むようにして十人を配置すると、向こうも焦っているのかせわしない動きで自分の周りを見渡している。

堪えきれずサイクロプスはそのうちの一体に殴りかかろうとする。しかし、一人に攻撃するということは残りの九人に背を向けるということに他ならない。一斉に九人の光真がその広い背中に槍を一本一本突き刺して行く。

サイクロプスはがくりと膝を折ってその突進を停止する。最後に狙われていた一人が猛然と手負いのサイクロプスに駆け寄ってドッジボール程もありそうな一つ目に槍をを突き立てる。そこが急所であったのだろう、手荒に槍を抜き取るとサイクロプスは断末魔の叫び声を上げ、ばたりと前のめりに倒れ伏した。

その死体も雲散霧消して代わりに数枚のカードに変わる。

ワンドが十三、硬貨コインが十二、聖杯カップが十三だった。

「今日のシャルルの飯代くらいにはなるかな……」

光真は分身の疲れを押し殺してカードを全て拾い集める。分身は知覚を何倍にも押し広げるようなものであり、その分疲労感も凄まじい。できる限りなら使いたくない手段だ。

「大将ーッ!ここにいたんですかーっ!」

忍者の格好に恥じないオリンピック選手並みの速度で半蔵がこちらに走って来る。

「どうした?そんなに焦って」

さっきの分身について見られていないか密かに探りを入れる。

「大将が自ら出て行かれるのにそれにお供しないのは臣下失格です」

どうやら機密は保持されているらしい。分身のスキルはこの世で”Light”以外使えないものだ。即ち見られてしまうと一発で光真の正体が知れてしまうのだ。

ここまで慕ってくれる半蔵を真実を話せないのは心苦しいが、仕方が無いといえば仕方が無い。

「ああ、ありがとう。それじゃあ一緒にモンスターを狩るか」

「はい、頑張りましょう!」

半蔵は手慣れた様子で腰にぶら下げているポーチから苦無をくるりと回して手に携える。その後数時間程光真と半蔵はパリ盆地にいる敵を倒し続けた。


〈kou〉 レベル4 体力:15 魔力:7 攻撃:10 防御:10 魔法攻撃:8 魔法防御:7

スピード:47 技術:42

〈hanzo〉レベル3 体力:26 魔力:16 攻撃:27 防御:17 魔法攻撃:16 魔法防御:14

スピード:29 技術:17





お疲れ様でした。

そろそろわかりにくい部分もありますし、用語集的なものを作ろうかなとも思います。わからない言葉などは積極的に載せて行きたいので、わからない言葉がありましたら是非お教えください。

次の話は結構話が進むと思います。

乞うご期待!

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