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異世界転移し続ける『罠師』勇者ケンの英雄譚  作者: 茉莉多 真遊人
第3部1章 『罠師』、大森林で獣人に会う。

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3-10. 『罠師』、毒を語る。

約3,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ケンは目を閉じて、自分の身体に意識を集中させる。すると、彼の身体の至る所から何かしらの変化が現れる。


 ある場所からは蒼色の液体が水のようにさらさらと流れ落ちて、また別の場所からは碧色の液体が纏わりつくように身体を覆い、さらに別の場所からは紅色の液体が血のようにぼたりぼたりと垂れていく。その上で、指先や頭頂部から紫煙まで出しているのだから、彩り豊かとも言えるが、いずれも毒々しい様相で鮮やかとは形容しがたいものだった。


「僕の身体はこの世に存在するあらゆる毒物を生成できるようになったようだね。もっと言うと、独自の毒も生成できるようになったようだ」


「えっ……」

「えっ!?」


 ケンの言葉に、彼を抱えていたミィレやソゥラは目の前で無秩序に放たれる毒に恐怖を覚えたようで、即座に彼から離れていく。


「……ひどくない?」


 支えを急に失って危うく後頭部から地面に激突しそうになったケンが、ドン引きで離れていった2人に不満を漏らす。


「味方の近くで毒をばらまき始める人に言われる筋合いはないわ」


「そうだあ、そうだあ!」


 しかし、2人も負けじと不満をケンにぶつけていく。


 2人に組まれてはケンも為す術はない。


「……まあ、そうだろうけど」


 ケンはそれ以上2人に何かを言うことはなかった。


 すると、会話の区切りと見たか、ファードが少し近付いてケンへと話しかける。


「ケン自体はなんともないのか?」


「そうだね、体内は自然と中和をしているようだね。もちろん、中和成分も体外に出現させられる。つまり、『毒生成』は『毒無効化』とも言えるかな。まあ、さすがに、毒も中和も無尽蔵に使えるわけじゃなさそうだけど、代償はこれから調べないとね」


 ケンは自分の能力を掴み損ねていると言わんばかりに、両手を握ったり開いたりしながらその手をフッと微笑んで見つめている。


「じゃあ、とりあえず、とばっちり受けないように、近付かなきゃいいか」


「……ひどくない?」


 ファードも微笑み、目を静かに閉じた。言葉そのものは疎外感のあるものだが、端々に安堵が見え隠れてしている。


 ケンもそれが分かっていて、ぼそりと呟いた。


「ケンさん、毒は、たとえば、植物に効くような毒もありますか?」


 アーレスやメルは距離感を掴めていないようで、ミィレやソゥラ、ファードよりもずっと遠いところからケンに話しかけている。


 その露骨なまでに遠すぎる距離に、ケンはくすりと笑っていた。


「あははっ、もちろん。あらゆる生命に対して、有効な毒の成分を出すことができるね。それと先ほども言ったけど、独自の毒も生成できるようになったから、まあ、大抵の敵には何かしらできるんじゃないかな」


 ケンは『罠師』があり、『観察眼』があり、ほかにも脅威となるスキルを持ちながら、さらに『毒生成』というスキルまで手に入れた。


 力を持たざる者からすれば、魔王にも匹敵する畏怖や恐怖の対象である。


「そうですか……チートですね……」

「へえ……すごいなあ……」


 アーレスとメルが後退って、部屋の出入り口付近まで歩いていった。


「聞いてからさらに離れるの、ひどくない? そんなに離れるのって、コントか何かかな?」


 メルは口をへの字にして、ふるふると首を横に振った。


「安全が確認できたら元通りだから」


「早く安全を確認してもらえるように善処するよ。あ、それと、こういうこともできるようだ。ソゥラ……僕の指を舐めてごらん?」


 ケンはアーレスやメルから一度視線を外して、再びソゥラを見つめて、自分の右手の人差し指を彼女に向けて、舐めるように促した。


 指示されたソゥラだけではなく、ミィレやアーレス、メルまでビクッと身体を跳ねさせて、わずかながらも頬を赤らませる。


「え……いくら私があ、『色欲』だからって、白昼にみんなの前で、指舐めなんてプレイを……ケンたらあ♡ 夜で2人きりのときがいいなあ♡」


 ソゥラは恥じらいを見せつつも、断れば次にミィレが指示されると理解しているので、すぐさまケンに近付いて、決して離さないとばかりにケンの手をそっと両手で優しくしっかりと掴む。


 一方のケンは、ソゥラに掴まれている手とは逆の手でポリポリと頬を掻いている。


「いや、そういうつもりじゃないんだけど……食べたことのある野菜の味がすると思うよ?」


「え? 野菜? なんですかあ?」


「物は試しだよ?」


 訝し気に問うソゥラに、ケンは四の五の言わさない雰囲気も出して、ずいっと人差し指をソゥラの口元へと差し出す。


 ソゥラはまじまじとケンの人差し指を見つめた後に、瞼を閉じ気味にして唇をぺろりと舐めてから、ゆっくりと焦らすように淫靡な様子でケンの人差し指を口の中へと迎え入れた。


「んあ……あむっ……んー……んっ!? 辛あっ!? もしかして、ネギですかあ?」


 ソゥラはケンの指を口から離し、舌を無防備にでろでろっと出して、舌先から涎の糸を引いたまま「ネギ」と答えた。


 ケンはニコッと笑う。


「正解。辛み成分も毒判定にできたから、味は分かりやすくするためのオマケだね。たしか無味だと思うけど、犬や猫に効く毒の成分も入れられているはず」


「ネギは嫌ですけど、でもじゃあ、甘みは中和ってことで、ここも甘いバナナのようにできるわけですね♡」


「……その発想はなかったよ?」


 ケンは下腹部を触ろうとするソゥラから腰を引いて避けつつ、彼女の言葉に静かなツッコミを入れる。


 その様子はまるでコントだが、ファードやミィレはその状況に騙されていない。


「独自の毒を作れるということは、食事に混ぜ込んだり、特定の人種だけ殺したりする手段もできそうだな」


「そもそも、人間が食べても平気なものだって、分量次第よ? 過剰摂取すれば死に至るものも多いんだから」


 ファードやミィレは、ケンが笑いでオブラートに包もうとしている『毒生成』の恐ろしさを看破している。


 それはアーレスやメルへの説明にほかならない。


「勇者と言うか……暗殺者向きですね」


 アーレスは冷や汗を垂らしながら、ぼそりとそう呟いた。


 しばらくケンとソゥラの攻防が続いた後、彼女が諦めたタイミングで、彼が今度はミィレを見て手招きをする。


「今度はミィレも舐めてみる?」


 ケンはソゥラが舐めた手とは、逆の手の人差し指を差し出して、ミィレを誘ってみた。


 ミィレは顔をゆで上がったかと見間違えるほどに真っ赤にして、眉根を上げつつ、ずんずんと彼の方へ歩いていく。


「わ、私にまで、そ、そういうプレイを要求するのね!?」


「プレイって……嫌なら別に——」


「あむっ!」


 ミィレがケンの命令だという予防線を張った直後に、見つめるような予備動作もなく口を小さくすぼませて指にむしゃぶりついた。


「言葉とは裏腹に、嬉々として受け入れているね……」


 ソゥラはねっとりとした舌使いをしていたが、ミィレは口をもごもごとさせながらチロチロと先端で指をなぞるように素早く動かしている。


「ん……んうっ……あむ……あむっ……ふっ……ふうっ……んんっ!? ん……んふう……っ」


 ただ舐めているだけのはずのミィレは、ガクガクと膝から崩れて膝立ちの状態となり、さらに目をとろんとさせて、徐々に甘い声を漏らし始め、その間も夢中でケンの指をねぶっていた。


「うん、やっぱり、いろいろな媚薬成分も毒扱いみたいだね。はい、おしまい」


 ケンはミィレの口から無理やり指を引き離すと、彼女の舌が彼の指を求めて口の中から飛び出していた。


「はひゅ……はひゅう……あ……これ……ズルい……もう終わりなんて……ひどい……」


「うわあ……ミィレさんがあんなに……」

「うわあ……仲間も実験台にするなんて……」


 身を悶えさせながらケンに縋るように彼の腰に手を回すミィレを見て、アーレスとメルが優しく微笑むケンにドン引きしていた。


「ちょっと! なんで私がネギで、お姉ちゃんは媚薬成分なんですかあ?」


 ソゥラは面白くないとばかりに、不敵な笑みを浮かべるケンに不平不満を言い放つ。


「ソゥラで媚薬なんて試したら大変なことになるからね?」


 ケンがそう言うと、彼とソゥラはすっと仲間の方に視線を移した。


「それはたしかにそうかもしれませんね……」

「それはたしかにそうかも……」

「それはたしかにな……」


 アーレス、メル、ファードがケンの言葉に賛同するように頷く。


「みんなまで!? むうううううっ! 私があ、『色欲』だけじゃないってことを教えてあげますからあ!」


 ソゥラは頷く周りに憤慨して、ケン同様に自分のスキルを説明することにした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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