表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

11話 放課後コーヒータイム

「翠君、このあと時間ある?」


 バイトをしている汐咲さんと違って、部活もバイトもしていなかった僕はその言葉を否定する理由を持ち合わせていなかった。


「あっ、はい」


 そして女子から誘われることに慣れていなかった僕には、その誘いを拒否する勇気もなかった。


 あまりにも突然だったのでまた敬語がでてしまったが。



 そして現在、僕たちは学校近くの喫茶店にて熱いコーヒーを乗せたテーブルを挟んで座っていた。


「翠君はミルクいる?」


「うん、貰うよ」


「だめ。私が全部入れる」


 じゃあ何で聞いたんだよ......


 雫さんは器に入っていた全てのミルク、そして角砂糖を3つ自身のコーヒーカップに入れると、スプーンでかき混ぜた。


 彼女はかなりの甘党のようだ。


 想像しただけで胃がもたれそうなコーヒーに口をつけると、眠そうな顔をした彼女は少しだけ微笑んだ。


「ところで、何で僕をここに誘ったの?」


 コーヒーを飲むだけで口を開かない雫さんにしびれを切らした僕は、単刀直入にそう切り出した。


「安心して、別に取って食おうなんて思ってない。それに心美にも内緒にしておくから、この密会は浮気にはならない」


「別にそんなこと心配してないよ!」


 なんだ浮気って、そんなこと言われたら逆に変な罪悪感が湧くじゃないか


「冗談。君とはちょっと話がしたかっただけ」


 彼女はふっと小さく笑う。


 もしかしたら僕の緊張を解くためにわざと変なことを言ってくれたのかもしれない。


 そう考えたら冷静になれた。


「それで、話って?」


 僕は彼女に話を進めるよう促す。


「話って言うのは心美(あのこ)のこと」


「汐咲さんのこと?」


「うん。君はずいぶん気に入られてるみたいだから、知っておいた方が良い」


 彼女は今までのボーっとした顔を止め、真面目な顔でそう言った。


「心美の()()()()()()()



 そう前置きをして雫さんは語りだす。


「心美の家はね、ちょっと複雑なんだよ」


「ああ、小さい頃にお父さんが出て行ったって......」


「そこまで聞いてたんだ。じゃあ話は早いね」


 彼女は話を続ける。


「今までは美琴(みこと)さん...心美のお母さんは一人で心美を育ててたんだけど、最近になって男を見つけたらしくてね」


 それも聞いたことがある。


 そいつを避けて汐咲さんは外でご飯を食べることが多くなったんだっけ。


「その男がかなり怪しいやつでね。心美は美琴さんにそのことを言ったらしいんだけど、それが原因で揉めちゃったの。」


 そのことを聞いてようやく昨日彼女があそこにいた理由が分かった。


 つまり彼女は母親と喧嘩して家に居づらくなったから家から遠い場所でバイトを始めたんだ。


 だけど今また新しい疑問が湧いた。


「なんでそんなこと僕に話すの?」


 そんな重い話、昨日初めて話した僕が知ってもいいんだろうか。


 たとえ雫さんが汐咲さんの親友だからと言って、好き勝手に誰かに言いふらして良い内容だとも思えない。


 僕のそんな疑問に雫さんは少しばかり考えて


「......昨日君が心美を助けてくれたって聞いたから」


 そう答えた。


「それは汐咲さんが他に当てが無いなんて言うから......」


「うん、いつもは私と一緒にいるんだけど昨日はちょっと野暮用があってね」


「ああ、友達は彼氏とデートしてて頼れないって汐咲さん言ってたね」


「まぁそれは嘘だけどね」


 嘘!?


 雫さんは悪びれもせずにそう言い放った。


「本当の理由は何だったの?」


「それは言えない」


 僕が気になって聞くと彼女はハッキリと断った。


 まあ、汐咲さんにも嘘つくぐらいだし僕には教えられないか。


「でも僕が助けたことと汐咲さんの家庭環境ってなんか関係ある?」


 ここまで話を聞いていても、結局僕にこんなことを話す理由にピンとこない。


「......そうだね。ここからは私の個人的なお願いになる」


 雫さんはそう前置きすると、コーヒーを一口飲んでから僕の目を見た。


「どうかこれからも心美を助けてあげて欲しい」




 雫さんのお願いはこうだった。


「これから忙しくなる雫さんの代わりに心美の面倒を見て欲しい」


 雫さんは困惑する僕に丁寧にそう伝えると、「それじゃ」とだけ言い残して店を出て行った。


「そんなこと言われたってどうすればいいんだよ」


 急に現れた難題に、僕は困惑して頭を抱える。


 すると僕のズボンのポケットが震えた。


 どうやらスマホに誰かからの連絡がきたらしい。


 こんな時に誰だ?

 

 普段は公式アカウントからのメッセージか両親からの現状報告しか来ないため、僕はあまり期待せずに画面を見た。

 

『やっほ~☆さっきは長話聞いてくれてありがとね( ¯꒳¯ )b✧ 初めて二人っきりで話すから緊張しちゃった(*/∇\*) ♡お願い♡聞いてくれてありがと!突然だけど今日から頼むね(*^▽^*)ゞマタアシター』


 なんだこれ、迷惑メールかな?


 突然の顔文字や絵文字の羅列に目がチカチカする。


 僕は目をこすって送り主の名前を確認した。


 そして再び目をこする。


 しかし何度目をこすっても送り主の名前は変わらなかった。


 "雫ちゃん"


 送り主の名前は先ほどまで一緒にいた眠い顔をした女子と一致していた。


「えええぇぇぇぇ!」


 今日一番大きな声が出た。


 


 

完読ありがとうございました!

少しでも面白いと思って下さったら下の☆を★にしてくれると嬉しいです!

次回にもどうぞご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ