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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第3章 封印の謎

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第91話 ニトの街の依頼(1)





 ニトの街の領主、シュトロード公爵家の屋敷に、泊まらないかと誘いを受けたが、連れがいるので、と断りニュイとマーレの待つ『ワキ毛のアン』に帰る。


 すると、そこには店の手伝いをする2人がいた。


「あっ、パパ帰ってきたの? 」

「お帰り……」


 俺を見つけた2人は、そう話しかけてきた。


「あら〜〜、貴族様、お帰りなさいませ〜〜。この子達手伝いたいって言うから少し頼んじゃったわ〜〜ん」


「それは、構いませんが……」


 女装オッさん店主のアンさんは、何故に腕を組んでくるのだろうか……


 店の常連客からニュイとマーレは、人気があるようで2人も楽しそうに働いていた。


 まぁ、楽しいなら問題ないか……


 このまま、2人をアンさんん任せ、俺は依頼の手紙を回収しにいく。

 何せ、この街だけでも10件の依頼がある。


 少しでもこなせる依頼があれば、早く片付けたい。


 1軒目の依頼は、街の南西方向にある一軒の家だった。

 農家のような家で庭の畑には、作物が育っている。

 軒にからはみ出す笹に手紙が吊るされている。


 内容を確認すると、

………………………

 使者様


 お母さんの病気を治して下さい


 サミー

………………………


 と書かれていた。

 気配遮断と隠密を重ねがけして家の中に侵入する。


 そこには高熱を出していた女性が寝ていた。

 付き添いは旦那さんらしいが、依頼主の子供は別の部屋で寝かされているようだ。


 見たところ普通の風邪のようだが……


 鑑定で確認して呪詛などの特別な要因がない事を確認し、手紙と共に回復薬をテーブルに置いておく。


 そして、子供を起こして、


「依頼は聞き届けた。テーブルの上に薬を置いておく。直ぐに飲ませてやれ」


 俺の姿が見えない子供は、キョロキョロ辺りを見渡していたが、誰だかわかったようで、


「ありがとう、使者様」


 誰もいない空間に話しかけた。

 俺は、子供が大きな声で騒いで薬と手紙を持って父親のところに行き、母親に薬を飲ませるところまで確認する。

 熱が下がり、顔色が戻ったところで家を出た。


 手紙には『報酬として畑の作物を少しもらい受ける』と書いておいた。

 白菜のような野菜を3つ程頂く。


 良し、次だ……


 次は、街の南側にあるスラム街のようなところだ。

 あばら家が何軒もたっている。

 その家の1つに屋根から吊るされた糸に手紙がある。


 中身を確認すると、

………………………

 使者さま


 おっかーが帰ってきません。

 見つけて下さい


 レギー

………………………


 これだけでは、情報が足りないな……


 再調査をする事とし、次の依頼を確認しに行く。


 今度は、その場所から直ぐ近くの一軒の家だ。敷地は割と広く井戸まであるが、家は、ボロボロだった。


 家の物干し竿に手紙が5つも吊るされている。

 ひとつひとつ中身を確認すると

………………………

 ししゃさま


 肉が食べたい


 ディス

………………………

 ししゃさま


 お腹いっぱい食べれますように


 オンズ

………………………

 ししゃさま


 ステーキが食べたいです


 リリー

………………………

 ししゃさま


 一日中食べれますように


 ミル

………………………

 使者様


 子供達が元気で過ごせますように


 セリエ

………………………


 孤児院のようだな……

 この建物では夜も寒いだろうに……


【わかった。その願い聞き届けよう……】


 俺は、衛星で確認して近くの森を探す。

 お目当てのビックボアを発見した。

 直ぐにその場に転移して風魔法で首と胴体を両断する。

 足を持ち上げ木の枝に吊るせば血抜きも出来る。


 すると、森の中に魔獣が騒いでいる箇所を発見した。

 冒険者達がいるようだ。

 ブラックウルフの群れに囲まれている。


 仕方ないか……


 俺は、その場に転移して風魔法ででウルフを吹き飛ばす。

 群れが崩れたウルフ達は、右往左往している。

 女性の冒険者を筆頭に掛け声がかかった。


「今だ! せんめつしろーー! 」


 鑑定で覗くとCランクパーティーらしい。

 俺は、脅威となりそうな魔物を片付ける。


 あとは何とかなりそうだな……


 血抜きが終わったであろう、先程倒したビックボアのところに戻る。

 その遺体を亜空間収納にしまい、さっきの孤児院まで戻った。


 ビックボアを取り出し、さっき報酬として頂いた野菜を置いておく。

 手紙には、【腹一杯食べろ】と書き込んでおいた。

 5人なら2週間は持つだろう。


 さて、次の依頼だ。


 あと三件……


 今度は、街に流れる川沿いの家だ。

 家の下は川と繋がっているようで、船が置いてある。

 その家の窓から手紙が吊るされていた。


……………………

 使者様


 最近、運んだ荷物が盗まれる事件が

 起きています。

 衛兵にも伝えましたが、犯人は捕まっていません。

 どうか、犯人を捕まえて下さい


 ミサリー

……………………


 これも情報を集めないとダメなようだ……


 要検討として、次の依頼の場所に向かう。

 今度は、湖のほとりにある大きな屋敷だった。


 手紙は、きちんと笹竹に吊るされていた。

……………………

 使者様


 今度の芸術祭で優勝出来ませんように……


 ピセニー

……………………


 優勝出来ますようにならわかるが……


 この件も調査が必要のようだ。


 最後は、あの公爵家の屋敷に掲げられている手紙だ。

 シュトロード家の誰が依頼を出したんだ?


 俺は、屋敷の窓から吊るされている手紙をそっと手に取り、屋根の上で中身を確認する。


………………………

 この世にいる使者とやら……


 私はどうしたら良いのだろうか?


 トーマス=シュトロード

………………………


 あの長男の子供か……

 もう、20歳のはずだが……


 何できちんと内容を書いてくれないのだろうか?

 これでは、どうしたいのかさっぱりわからない……

 貴族の依頼は厄介なのが多い……


 要検討だ……


 俺は、そのまま、宿屋『ワキ毛のアン』に戻るのだった。





「あら〜〜貴族様、お帰りなさ〜〜い」


 出迎えてくれるのはありがたいが、頬を寄せるのは勘弁してくれ……


「子供達は? 」

「さっき賄いをたくさん食べて今は、部屋で休んでるわ〜〜ん」

「そうか、助かったよ」

「貴族様も大変なのね〜〜、身寄りのない子供達を我が子のように育ててるなんて、立派だわ〜〜」


 そういう設定になったのか……


「そうでもない。それと、その貴族様というのはやめてくれないか? 」

「じゃあ、パパさんネ」


 どうしたらそうなるんだ?


「まぁ、いい。それより、軽く何か食べれるか? 」

「は〜〜い。ビアーと簡単な付け合わせでいい? 」

「あぁ、頼む」


 この世界のビールはビアーと呼ばれており、炭酸はあまり含まれていない。

 でも味は濃厚でアルコール度数も10パーセント程度ある俺のお気に入りの酒の1つだ。


 店主のアンさんが持ってきた付け合わせは、ターキーの肉と野菜を炒めたものだ。一口食べると、かなり美味しい。


「これも美味いな」

「そうでしょう? 私のオススメの1つよん」


 何故、隣の席に座る……


「店主、聞きたいことがある」

「いやん。アンって呼んで……」

「………店主、聞きたいことがある」

「もう、シカトなのね〜〜。まぁいいわ。何が聞きたいの? 」

「湖のほとりにある大きな屋敷は誰が住んでるんだ? 」

「あ〜〜あのお屋敷は、ピセニーちゃんとその家族よん」

「そのピセニーとやらは金持ちなのか? 」

「そうね〜〜お金はあるかもね。でもあのお屋敷は芸術祭で優勝したお金で買ったはずよん。大きな声で歌を歌っても大丈夫なように領主様が少し離れた場所の土地を紹介してくれたのよん」


 そうか、歌姫というやつか……

 では、何で優勝したくないんだ?


「そのピセニーとやらは、芸術祭に出るのか? 」

「そうよ。もう5年も優勝してる歌姫なんだから〜〜ん。出るのは義務みたいなものよん」

「そうか……」


 優勝したくないのなら出なければ良いのに、と考えたのは間違いのようだ。

 屋敷を紹介してもらった優勝者には、断れるはずがないのだろう……


「それと、この界隈で積荷が無くなってるそうだが、知っているか? 」

「あら、どこで聞いたの? 」

「先程、屋敷の衛兵が言っていたぞ」


 もちろん嘘だ……


「そうなのよ。この街は水路が発達していて荷物は舟で運びこんでいるのよ。最近、運んでいる途中で、いつの間にか荷物が消えちゃうらしいのよ」


「それって、人の仕業なのか? 」


「わからないわ。見てる目の前で消えてなくなるんですって。怖いわねん。きっと幽霊の仕業よ」


「そうなのか……」


 この依頼も面倒そうだな……


 俺は、店主の筋肉圧から早く解放されたいが為に、ビアーをほぼ一気飲みし、付け合わせの食事を食べて部屋に戻った。





 ニュイとマーレは疲れたようで寝ている。


 でも、何故マーレは全裸なんだ……


 俺の貴族相手で疲れ果てた。

 ベッドに入ると、いつのまにか寝てしまったようだ。



……翌朝……


「ねぇ、ライル、起きてよーー! 」


 誰かと思えばリールがいる。何故か同じ布団で寝ていた。


「リールか……何してるんだ? 」

「暇だから来ちゃった〜〜」


 う〜〜む。こういう会話は普通トキメクものらしいが、リール相手では家族に起こされたようで何のトキメキも無い……


「そうか……」

「何、その反応〜〜せっかく起こしてあげたのに〜〜」

「うむ。ありがとう」

「ったく! ライルってつまんない男だよね〜〜人魚のマーレ相手だと裸で寝かせて眺めてたのにね〜〜」

「リール、そんな事はしていない。こいつは裸族だ。ただ、それだけだ」

「もう、枯れすぎだってんのよ〜〜本当、中身はオッさんなんだから〜〜」

「それより、リール。あっちの件はどうなったんだ? 」

「あっちって、アレの事? もう、やりすぎて痛くなっちゃったよ〜〜」

「……誤解を生むような会話はやめろ! 王女達の件だ」

「だから、そう言ってんのよ。何勘違いしてんの〜〜? 」

「……という事は、鍛錬のしすぎで痛めたのか? 」

「そうよ。あのソフィア王女って剣術バカなの? 手に豆できちゃったよ」

「そうか、ソレイユ王女は? 」

「精霊魔法教えたよ。私とは真逆だから理論だけだけどね〜〜」


 一応依頼はこなしてるようだ……


「でも、何で暇になったんだ? 」

「王女達が用があるんだって〜〜なんか、お婆ちゃんの実家で芸術祭が何とか言ってて見に行くそうだよ。それまで、暇なの。遊んでよ〜〜ライル〜〜」


 王女達がこの街に来るのか……


「芸術祭が開かれるのはこの街だ。王女達もこの街に来るようだな」

「えっ、マジ! 」

「マジだ」


 また、面倒な事になりそうだ……







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