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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第55話 緊急招集




『ピーーーーーー!』


 こんな時に緊急招集だと……


「なんの音なの? 」

「姉さん……仕方がない」


 俺は、ニュイを抱え、みんなに謝って居間を出る。


 そして、本部に連絡を入れた。

……………………………

「ライルだ。どうした? 」

「大変な時にすみません。魔獣がポップしました」

「何処だ? 」

「場所は……ミスティナ皇国、ミツトの街中です」

「何だって! 」

「みなさん、向かってます」

「わかった。すぐ行く」

……………………………


「ダメーー! ラビス、どこか行っちゃうの? そしたら、もう、ラビスと会えなくなる」


 姉さんが後を追ってきたようだ。

 俺の腕を掴んで離さない。


「姉さん、ごめん、行かなきゃ」

「ダメ、私も行く」

「危険なんだ。それに、できればニュイを頼みたい」

「いやだ。もう、絶対、離れない。離すと、ラビスは2度と帰って来ない」


 連れて行くしかないか……


「姉さん、剣は持ってるよね」

「持ってるよ。ラビスからもらったの大事に使ってるわ」


 姉さんは、腰に差してる剣を見せてくれた。


「ごめん、姉さん、危険な目に合わすけど許してくれ」

「構わない、ラビスと離れる方が、もっと、イヤ! 」

「ニュイ、おんぶして、姉さん、捕まってて」


 俺は、2人を連れて、ミツトの街に転移した。





 一気に景色が変わり、今は、ミツトの街中にいる。


『キャッーー!!』

『た、助けてくれ〜〜』

『魔物がくるぞーー! 』


 転移したミツトの街は、既にパニック状態になっていた。


「どういう事、これ、ここは、どこ? 」


「ここは、ミスティナ皇国、ミツトの街。転移、つまり、一瞬で移動する魔法だ。説明している時間がない。姉さん、この街中で、魔物が溢れてる。街の人を安全な場所に誘導しないと。それから、俺から離れないで、危険だから」


「わ、わかったわ」


「ニュイもしっかり捕まってろよ! 」


「うん」


 大通りに出ると、そこは、魔獣は人を襲い初めていた。


 ウルフ系の魔物が人に襲いかかろうとした時、俺は、風魔法でそのウルフを斬り刻む。


 数は、前より多くなさそうだ。


「何、これ、どうなってんの? 」

「姉さん、もし、戦えそうなら、1人でも多くの人を救ってほしい」

「うん、これは、冒険者の仕事でもあるわ。ライル、私、強くなったのよ。見ててね」


 メリーナ姉さんも、住民に遅いかかるウルフの魔物を切り裂いた。

 姉さんの持つ剣は、俺と同じ黒竜の牙で作った剣だ。魔力を通せば黒く輝き、切れぬものはない。


 姉さんは群れをなすウルフに突き進み、自分が囮になるかのようにその前に立ち塞がった。


 ウルフを指揮しているボスクラスの大きな魔物が姉さんに狙いをつけたようだ。


 全く、姉さんは無茶をする……


 俺は、ニュイをおんぶしたまま、姉さんの背後を狙うウルフを斬り裂いた。

 それが、戦闘の合図だった。無数のウルフが、姉さんと俺達に襲いかかってきた。


 しかし、姉さんは、自らも跳躍し、そのボスウルフめがけて黒剣を振るう。黒剣は、纏うブレスが大きくなり、最早、大剣となっている。


 俺は、風魔法を広範囲に放ち、襲いかかったウルフをその風で斬り裂く。後方に位置していた魔物には、衛星から魔法弾を放っていた。


 姉さんの大剣は、ボスウルフの周りにいたウルフをも巻き込み、その命を奪う。


 その姉さんの剣の腕を見て、素直に凄いと思った。

 だが、この時、ある気配を感じ取った。

 衛星で見るまでもない。

 俺が、探し求めていた気配だ。


 でも、現場で起きてるのはそれだけではない。


「キャッーー助けて〜〜」


 子供が転んで母親が駆け寄る。でも、すぐそばに大きなクマのような魔獣が両手を掲げ襲いかかろうとしている。


 すると、


『ギューーン』


 背後から、ナイフが投げられたようだ。クマの頭が吹き飛んでいた。


「ユオか……」

「主任〜〜遅くなりましたって、また一般人を連れてきたんですか、それに誰かおんぶしてるし」

「ユオ、悪い、姉さんを頼む」

「姉さん? 」

「あっ、あなたは、ヒュール商店のオーナー!? 」

「この間の冒険者、って主任のお姉さん連れてきたんですか? 」

「すまん、ちょっと、訳ありで」

「わかりました。お姉さんは私が一緒にいます。主任は、あそこに向かうんですね」

「あぁ……それと、お〜〜い、リール!! 」


 俺は、屋根の上で戦っていたリールを呼ぶ。


「ライル、なんだよ〜〜。せっかく、いいところなのに〜〜」

「悪いけど……」

「わかった。その子貸して」

「すまん。ニュイ、リールから離れるなよ」


「ライル、どこ、行く? 」

「会わなきゃいけない人物がいるんだ」

「わかった」


「ナハトは、もう、最前線で戦っている。ユオと姉さんは住民の避難、リールとニュイは遊撃、頼んだぞ」


『はい』


 姉さんは、ユオに、ニュイは、リールに任せ、俺は、ある気配のする場所に向かった。


 そこには、彼女がいるのだから……






「みなさん、こっちです」


 メリーナは、逃げ惑う住民を誘導している。


 この街に在中する兵士は、少ない。しかし、冒険者ギルドがある為、冒険者が代わりに戦っていた。


「なんだ、こんな魔物見たことねぇぞ」


 そこには、巨大なゴーレムがいた。


 ゴーレムの腕が振り落とされる。

 石畳の道路から炸裂音が響き、小石が四方に弾き飛ばされた。


「キャーッ! 」

「痛いよ〜〜」

「だ、誰か助けてくれ〜〜」


 先程の破壊で怪我を負った住民達だ。


 ゴーレムは、今度は、両手を振り回し、家を破壊し始めた。


 破壊と共に煙が舞う。


 移動するだけで、多大な被害を撒き散らしている。


 冒険者が剣を抜き、足に向かって剣を振るっているが、硬い素材でできてるようで、傷ひとつつかない。


 その冒険者は、ゴーレムの足蹴りで吹き飛んでしまった。

 同じパーティーの仲間が助けに行くが、それに向かって、ゴーレムは、右手を振り下ろす。


 普通なら、死んでいたはずだ。しかし、彼らの前には、見えない壁ができていた。


「今よ。お兄ちゃん! 」


「任せとけーー! 」


 ユオの合図でナハトが、ゴーレムの背後から跳躍した。そして、頭に向かって剣を振り下ろす。


 轟音とともに、ゴーレムは、両断され、動きを止めた。


「やったぜ! 俺様の勇姿、ユオ見ててくれたか〜〜? あれっ……」


 ユオは、別の魔物と戦っていた。


 その間に、メリーナは、傷ついた冒険者達を誘導して、安全な場所に避難させる事ができた。




 リールは、集団で襲っているオークの群れを見つけた。円陣を組むように丸くなり、その真ん中には、多くの住民がいた。


 屋根伝いに移動して、その中央に飛び込む。

 いきなり現れたダークエルフの少女は、別の少女をおんぶしていた。

 住民は、一瞬、驚いたようだが、恐怖の中、声をあげるものはいない。


「ニュイちゃん、少し、ここにいて」

「うん、あれ、おもちゃ? 」

「敵だよ。今、やっつけるから」

「敵、敵、敵……」


 すると、周りを囲んでいたオークがふわふわと宙に浮かび出した。


「ニュイちゃん!? 」

「おもちゃ、敵、ニュイ、遊ぶ」

「えっ!? 」


 ニュイが両手を上下に動かすと、それに合わせてオークの集団も空中でふわふわ上下に動く。ニュイは、それを見て、少し、ニヤついた顔をした。


 どうやら、楽しいようだ。


 その間にリールは、住民達を誘導し避難させることができた。


 オーク達は、突然の事で、わけもわからず宙に浮き、激しく上下させられて為、目を白黒させ、気絶するものもいた。


「飽きた……」


 ニュイがそういうと、空高く上がったオークは、浮遊感がなくなり、一斉に落ちる。


『グエッ、グシャ、ボキッ、ドバッ……』


 多くのオークが地面に叩きつけられ、戦闘不能な状態になった。


「ニュイちゃん、可愛い顔してエゲツないなぁ〜〜」


 そう言いながら、リールは、生きているオークを仕留めていた。


 手の回らないところは、ライルが始末してくれてるようだ。


 あとは、怪我を負った住民の手当てと崩れそうな建物を避け、安全な場所に避難させる事だけだ。


「ライル……ノーチェお姉ちゃん……」


 リールの声は、周りの喧騒に消されていった。





 俺は、目的地に向かいながら、ナハトやユオ、リール達が、負えなかった魔物を衛星を展開して、魔法弾で仕留めていく。


 目的地は、東門の上だ。


 このミツトの街は、ロワード帝国に近い位置にある。

 東門が凱旋門のように巨大、そして、頑丈に造られているのには、ロワード帝国の進行があった場合に備えての物だった。


 転移で行けば一瞬で着く。

 それができなかったのは、俺の弱さだ。

 衛星で敵を攻撃している時、一瞬、彼女の姿を見てしまった。


 それは、ちょっと前に馬車で揺られて見た夢の光景と似てたからだ。


 そんな姿、見たくない……

 だが、行かなければ、ノーチェに会えない……


 そんな矛盾する葛藤を抱き、重い足を前に運んでいた。


 目の前に5体ほどのゴブリンの姿が見える。

 逃げ惑う住民達を、下品な笑みを浮かべ襲おうとしていた。


 俺は、天空から魔法弾をを放ち、全てのゴブリンの脳天を貫く。


 悲鳴をあげる間も無く、崩れ落ちるゴブリンの屍を超え、俺は、とうとう、彼女の前にやって来れた。


「ノーチェ……」


 俺は、一瞬、目を背けてしまった。


 凱旋門に似た頑丈な門の下には、兵士達の死体が転がっている。


 そして、門の上に立つ金色の髪の彼女は、片手で兵士の頭を掴み、その兵士の首筋に鋭く尖った牙を突き立てていた。



『止めろーー! ノーチェーー! 』



 俺の叫びは、兵士の首から、一滴の血が地面に滴るまでの僅かなものでしか無かった。








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