第54話 思わぬ再会
「ラビスーー!」
「母さん……」
俺は、寝てしまった為、迂闊にも母さんの実家、サスケ家に来てしまった。
「ラビスってあのラビス君? 」
「サマンサ、何でラビスと一緒なの? 」
「それって、姉さんの一番下の子よね。あの赤ちゃんだったラビス君なの? 」
「そうよ。サマンサは、ラビスが赤ん坊の時以来だものね」
「だって、ライルって名乗ってたわよ」
「いろいろあるのよ。そういえば、ラビス、大きくなったわね。熱出してない? 」
「ここ、母さんの実家だよね。じゃあサマンサさんは? 」
「私の妹よ。ラビスにとっては、叔母さんね」
そうか、サマンサさんにあった時母さんに似てるって思ったのは姉妹だったからか……
すると、その時、
「ただいま〜〜お腹すいたよ〜〜あれ、お客様? 」
この声は……
「えっ、何? えっ、まさか、本当に、ラビス……」
『ラビスーー!! 』
「メリーナ姉さん……」
『わぁ〜〜〜〜』
俺は、母さんと泣きじゃくる姉さんに強く抱きしめられ、思わぬ再開を果たしたのだった。
◇
「ラビス、探したんだから、ずっと待ってたんだからーー! 」
「うん、わかってた……」
「なんで、なんで会いに来てくれなかったのよ〜〜」
「……怖かったんだ……姉さんに嫌われたくなかった……」
「ごめん、ごめん、ラビス。私、あの時どうかしてたの、私だって怖かったのよ……」
「もう、いいんだ。もう、大丈夫だから……」
「わぁ〜〜ラビスーー! 」
姉さんは、枯れそうな勢いで涙を流し続けていた。母さんも、目に涙を浮かべてた。
そこにいるみんなは事情をよくわかってないようだが、俺達が久し振りに再開したのは理解できてたようだ。
サマンサ叔母さんは、王女や他の者達を屋敷に案内していた。
でも、ニュイは、
「ライル、ラビスなの? 」
「ニュイ……」
母さんや姉さんも俺の服を引っ張るニュイに気づいたようだ。
「ラビス、その子は? 」
「うん、事情は後で話すよ。長くなるから」
「そうね。メリーナ、ラビスは、すぐにはどこも行かないわ。家に入りましょう」
「うん……」
俺は、ニュイの手を繋ぎ、サスケ家の敷居をまたぐ。
姉さんは、俺の片方の腕を掴んで離さない。
どこかに行ってしまわないようにと思っているのかもしれない。
そんな、姉さんの気持ちが痛いほど伝わってきた。
俺達が取り込み中だった為、サマンサさんがいろいろ動いていた。
お茶の用意やら、お菓子の用意など忙しそうだ。
それを見た母さんは仕方なしに手伝いに行く。
そんな様子をジッと見ていた人物がいた。祖父さんだ。
俺とは、初対面である。
「その子がラビスか、わしがお祖父ちゃんである」
小さい猿のような爺さんは腕を腰に当てて、なぜだかドヤ顔している。
「今は、ライルと名乗ってます」
「事情は、聞いておる。よく、帰ってきたのう」
そういうわけではないのだが……
「そっちのめんこい子は誰じゃい」
「この子はニュイと言います。訳あって一緒にいます」
「ふむ、ふむ、これは、まさしく美少女じゃな! 」
「はぁ〜〜」
「お祖父ちゃんは、うるさい! 私が、ラビスと話しするの。邪魔だからあっち行っててよ」
「メリーナ、そんなにわしを邪魔者扱いすることはないじゃろう」
「煩い! とにかく邪魔なの! シッ、シッ」
「つれないのう〜〜」
「孫よ。後で話そうぞ」
「はい」
「姉さん、あんまり、引っ付かないでよ。子供じゃないんだし、それにニュイもいるから」
「そう、まず、ニュイちゃんの話を聞きたいわ」
「順を追って話すから、ちょっと、落ち着こうよ」
「ダメ、離すと、ラビスはどっか行っちゃうから」
「今は、何処にも行かないから……」
俺は、何とかメリーナ姉さんを説得し、居間に行く事が出来た。
王女達は、もう、座ってお茶を飲んでいる。
俺を見かけた女性兵士、ミッシェルさんは俺のところに駆けつけた。
「すまなかった。経緯は知らないが、君は、サマンサ叔母さんの甥っ子なのだな。私は、サマンサ叔母さんのご主人方の姪だ。君とは、遠からずの縁となる。そんな君をバケモノ呼ばわりしてしまった。勘弁してほしい」
「気にしないで下さい。気にしてませんから」
こういう実直なところは、真面目な気質ゆえだろう。好感が持てる。
お互い席に座ると、右横にはメリーナ姉さんが左横にはニュイが引っ付くように座り出す。
すると、
「ライルさん、いえ、ラビス君ね。初めてではないけど初めまして。私が、アマンダ姉さんの妹のサマンサです。こんな偶然、あるのね。嬉しいわ。それと、プリメラ王女を救ってくれてありがとうございました。改めてお礼を致します」
「ライル様、サマンサの甥である貴方に命を救われました。感謝いたしますわ」
もう、王女の身分を隠すのは、やめたらしい。
「いいえ、何度も言いましたが薬がありましたので、気にしないで下さい」
俺がそう言うとルシーが
「ライルは、家出少年だったの? それで、偶然に生家に帰って来たってわけ? 」
「ルシー、ここは、生家ではないよ。俺が生まれたのはミスティナ皇国のランドル男爵領だ。俺は、そこの次男なんだ」
「貴族様だったの? そういえば、そんな雰囲気あったような、無かったような」
ルシーは、結構、物怖じしないタイプのようだ。話していて気が楽になる。
「事情があって5歳の時、家族と離れ離れになったけど、別に家出したわけじゃないよ」
「そうなんだ〜〜」
俺の話もしなければいけないが、まずは、プリメラ王女の件だ。依頼はまだ、終わってない。
「プリメラ王女は、命を狙われてますね。良かったら、お話くださいませんか? 」
「そうですね。もう、身内ですものね。私が話します。よろしいですね。プリメラ王女」
「構わないわ。こうして、ここにご厄介になるのですから、事情を話すのが一番です」
「プリメラ王女は、確かにお命を狙われておいでです。それは、国王陛下の後妻であるガリシア夫人の陰謀によります。国王陛下とプリメラ王女の兄であるピリカ第1王子は病に臥せっておられ、それを良い事にガリシア夫人は、自分の息子であるプラダ第2王子を後継にする為に、プリメラ王女を亡き者にしようと……」
どこにでもこういう奴がいるんだな……
「つまり、自分の息子を王位につけたいが為に命を狙われたと、言う事ですか? 」
「そうです」
「その国王陛下とプリメラ王女の兄さんは、もしかしてガリシア夫人の手にかかってそのような状態になっているのではありませんか? 」
「はっきりした証拠はありませんが、私共はそう睨んでいます」
自分の息子可愛さに、なり振り構わないタイプなのか……
「国王陛下とピリカ王子の容態は? 」
「とてもお悪いです。プリメラ王女と同じ容態でした」
そうすると、呪詛か……
「お二方の容態が良くなれば、王家は改善されますか? 」
「どうでしょう、今や、実権を握っているのはガリシア夫人です。それを支援する貴族も大勢います。その者達を排除しなければ、無理かもしれません」
よく聞くお家騒動に巻き込まれたというわけか……
問題を解決するには、国王とピリカ兄の快復、そして、プラダ王子派の排斥。
貴族達には、自分に旨味のあるものが後継になった方が、自分の地位を向上できるだろうし、国民にとっては、頭がすり替わっただけで政策が極端に変わらなければ問題もない。
だが、人に呪詛を施してまで、トップになろうとするその根性は気に入らない。
「そうでしたか、お辛いお話をしてくださいまして……」
「でも、事情をわかってくださって良かったですわ。お世話になる以上、隠し事はイヤですもの」
この王女は、まともそうだ……
一晩動けば、ある程度改善できそうだが、どこまで介入すべきか……
すると、母さんが
「サマンサはね。大恋愛して、サウザンド国に行ったのよ」
「姉さん、昔話はやめてよ。それに、姉さんだってそうでしょう? 」
「まぁね」
そういえば、侍女の仕事とはいえ、旦那を置いてここに来ても良かったのか?
「では、離れ離れでご主人が寂しがっているでしょうね」
「そうね。でも、主人は、空の彼方から私を見ていてくれますからどこにいても安心なのですよ」
「もしかして、失礼な事をお聞きしてしまいましたか? 」
「いいえ。もう、昔の話ですから……」
「ラビス、サマンサのご主人は、もう、この世にはいないのよ。2人に後継がいなかったから、その領地と地位を王家に返上したの。それを、お気にかけた国王陛下が、プリメラ様の元で働いて欲しいと懇願されて、侍女になったのよ」
「そうだったのですか、すみません」
「構わないわ。身内だし、知ってもらってた方が気が楽よ。今は、プリメラ様が我が子のように可愛くて仕方ありませんしね」
「ありがとう、サマンサ。私も母のように思っていますわ」
「ねっ、可愛いでしょう? 」
サマンサ叔母さんは、プリメラ王女に、スリスリ顔を擦り寄せている。
そういうところを見ると、母さんと姉妹なんだな、と改めて思う。
「ところで、ラビス。ニュイちゃんは、どうしたの? 」
母さん、あまり聞かないで欲しい……
本当の事を言ってみんなを巻き込むわけにもいかないし……
「ニュイは、ロワード帝国の辺境地で、記憶を失って倒れていたところを、たまたま通りかかった俺が保護したんだ」
「そうなの、小さいのにね〜〜」
すると、ニュイは、
「ライル、嘘、ダメ」
「どう言う事? ラビス、何隠してんの? 」
姉さん、痛いっ、腕がもげそうだ……
「使者様、手紙、ライル、来た」
ニュイ、マズいよ〜〜
「使者様って、最近、噂の胡散臭いお助けマンだよね。なんで? ラビスと関係あるの? 」
姉さん、胡散臭いお助けマンって……
その時、
『ピーーーーー! 』
マジか、こんな時に緊急招集か……
「何の音!? ラビスの腕輪から鳴ってるよ」
どうする……
「みんな、すみません。失礼します」
俺は、ニュイを抱えて居間を出て行った。




