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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第52話 川辺の村(4)




 翌朝、長閑な村には、似つかわしくない声がしている。

 それもそのはずだ。

 縛り上げられた兵達が、身動きも取れず村の中央に並べられていたからだ。


「なんだ〜〜兵士が、縛られてんぞ〜〜」

「どういう事だい」


 村長は、報告を聞いて知っているようだ。


 さて、どうするか?

 川にでも放り込んどけば、良かったか?


 すると、侍女がやってきて、


「村の皆様には、ご迷惑をおかけします。この者共は昨夜、村に火を放とうとしておりました。わたくし共の主人を害そうと企んでいたのです」


「何だと〜〜どうしようもないねぇ奴らだ」

「村に火を放つなんて、とんでもねぇ、殺しちまえ! 」


 騒ぎは、さらに大きくなったようだ。


「この者共の処分なのですが、わたくし共が連れて行くわけには参りません。祖国に頼るわけにもいきませんので、クロウ勇国の代官様に連絡を入れたいと思います。しばらく、村の片隅にでも放置しておいていただけませんか? 」


「それは、構わねぇが、こいつら悪人なんだろう? 放火や主人殺しは死罪が普通なんじゃないか? 」


「この場で処分しても、村に迷惑がかかります。今、私の配下が、急ぎ代官のところに向かっております」


「わかったぜ。俺達で、交代で見張ってやるよ。放火されるより、マシだ」


「ありがとう御座います。このご恩は、必ず相応の対価を持ってお返し致します」


 侍女は、村人達に頭を下げた。

 そして、今度は俺のところに来て、


「ライルさん、主人をクロウ勇国の首都にお連れしたいのですけど、一緒に来てくれませんか? 出発は、代官様がこの者達を連れて行く時に、私達も出発しようと思っています」


「そうですか……」


 このまま、というわけには行かなそうだし……


「わかりました。ご同行致します」


「本当ですか? ありがとうございます。それと、昨夜の助力に感謝いたします……」


 最後は、小さな声で囁いた。

 この侍女は、お見通しってわけか……


「さて、なんのことでしょう? 」

「うふふふ、なんの事でございましょうね〜〜」


 この村から1番近いのは、ショルダンの街だ。1日もあれば着くだろう。すると、出発は、2日か3日後か……


「あの方の具合はどうですか? 」

「はい、見違えるようにお元気になられましたわ。これも、ライルさんのおかげです」

「それは、良かったです」

「そうでした。主が貴方様にお礼を致したいと申しておりました。後日私の生家に寄った折にでも、お礼させてくださいませ」

「そんなお気遣いはいりませんよ。私は、薬をお渡しただけですし」

「若い方が、遠慮する事はありませんわよ。それに、頂いたご恩はお返し致しませんとね」

「わかりました。その時にでも」

「はい」


 俺は、一先ず、ロジー君の家に帰る。ニュイは、大人しくロジー君と遊んでいた。


 同じ年頃の子供は、すぐ仲良くなるな……


 2人は、庭先にあった石を積み上げて遊んでいた。


「ねぇ〜〜こんなに、高く積めたよ」

「高いとえらいの? 」

「えらいとかじゃなくて、その方が面白いだろう」

「面白い、面白い、面白い……」


 ニュイは、自分のペースでいろいろな事を吸収しているようだ。


「あとで、川に行ってみようよ」

「川、面白い? 」

「うん、いろんなお魚がいるんだよ」

「魚、鳥じゃなくって? 」

「魚だよ。川の中を泳いでいるんだ」

「泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ……」


 まだ、言葉を連呼するけど……


 すると、俺を呼ぶ声がする。

 振り向くと、村長の孫娘ルシーが呼んでいる。

 俺は、ニュイをロジー君に任せ、ルシーのところに行った。


「どうしたの? 」

「うん、えっとね。お婆ちゃんが呼んでるんだけど」

「そうなんだ。何のようだろう? 」


 俺は、ルシーと一緒に、村長宅に向かう。


「ライル、あまり、話せなくてごめんね」

「何で謝るの? 」

「だって、せっかく村に来てくれたお客さんだし」

「平気だよ。いろんな事が重なったからね」

「う、うん」


 村長のお婆ちゃんは、囲炉裏のそばに座っていた。


「すまんのう〜〜、お主には、迷惑をかけた」

「構いませんよ。要人の方が大切ですし」

「うむ、肉の礼もできんままじゃ」

「でも、ちょうど良かったです。食材があって」

「それは、助かったわい、で、お主、聞くところによると、あのお方と首都に行くようじゃな? 」

「はい、先程、同行するように言われました」

「その、ついでで悪いのじゃが、ルシーも連れて行ってくれんかのう? 」

「ルシーですか? 」


 俺は、ルシーを見ると赤くなって俯いていた。

 自分からは、言い出せなかったようだ。


「俺は、構いませんけど」

「ルシーを、首都の学院に通わそうと思っている。もう、年齢も過ぎてるし、入れるかはわからんがのう〜〜」


「ルシーは、学院に通いたいの? 」

「それもあるけど、大きな街で少しだけ暮らしてみたいの。ライルが首都まで付き添ってくれるなら、道中も安心だし」


「なんじゃ、ルシー、わしには、学院に通いたいと言ってたではないか? 」

「それも嘘じゃないよ。勉強もしたいし、街の暮らしも経験しておきたいの」

「全く、都会にかぶれよって〜〜好きにせい! 」

「わ〜〜い、お婆ちゃん、大好き〜〜」


 この村は、長閑で良いところだが、年頃の娘には、刺激が少ないようだ。

 離れて暮らせば、村を懐かしく思い、大切にする気持ちも湧き上がる……こともあるだろう。


 俺は、ニュイをおいてきてしまったので、気になって帰る。

 ロジー君の家には、お母さんしかいなかった。


 どこ行ったんだ?


 衛星で確認するとロジー君と河原で石を積んで遊んでいた。


 楽しそうなら、いいか……


「今日のお昼は、ライルさんから頂いたお肉を焼きましょうか? 」


 ロジー君のお母さんは、そういいながらブロックになっている肉を包丁で切っている。


「ライル、いる〜〜? 」


 ルシーの呼ぶ声が聞こえる。


「何? 」

「さっきは、ありがとうね」

「先に言ってくれればよかったのに」

「ちょっと、恥ずかしくってね」

「まぁ、そういう時もあるよね〜〜」


 ロジー君の玄関先で話していると、村人が


「大変だ! 子供が川に落ちたぞーー! 」


「えっ!? 」


 真っ先に動いたのは、ロジー君の母親だった。

 俺達も慌てて、河原に向かう。

 すると、ロジー君が、川で溺れかかっていた。


 ニュイは?


 すると、ニュイは、もう、川に入っている。

 ロジー君に向かって泳ぐというより、浮かんでいた。


「キャッーー! ロジー! ロジー! 」


 お母さんの悲鳴に似た叫びが辺りに響く。

 ご主人を亡くした時を思い出したのか、身体が震え出していた。


 重力魔法なら、直ぐにでも助けられるけど、それは、やめた。ニュイから念話があったからだ。

……………………………

「泳げるようになりたい、言ってた」

「ニュイは平気なのか? 」

「平気、ロジーも平気」

……………………………


 村の男の人は、川に飛び込んで、助けに行ってくれた。

 ルシーも飛び込もうとしていたから、


「ちょっと、待って、ニュイに任せたい」

「あんな小さな子に助けられるわけないでしょう? 」

「そうでもないよ」


〜〜〜


「助けて、うっぷ、誰か〜〜」

「大丈夫」

「ニュイちゃん、危ない、危ないよ、うっぷ、君までお父さんみたいに〜〜」

「力を抜いて、浮く。慌てちゃダメ」

「無理、無理だよ〜〜」

「少し、補助する」


 ニュイは、念動力をロジーにかけ、川に浮かせた。


「水、身体、浮く、力、焦り、ダメ」

「う、うん」


 ニュイは、ぷかぷか浮いている。その通りにしろと言いたいようだ。


「ほ、本当だ。浮いてる、浮いてる」

「そう、上手、あとは、足を動かす。あまり、力、入れない」

「う、うん、やってみるよ」


 この頃には、ニュイの念動力は解けていたようだ。

 ロジー君、自身で泳いでる。


「おい、大丈夫か? 」


 村の男の人が来たようだ。


「大丈夫」

「う、うん、平気、みたい」


「よしっ、そのまま、ゆっくり、移動しろ。慌てるなよ」


 男の人に連れられて、2人は、ぷかぷか浮かびながら、少しづつ移動を始めた。そして、もうすぐ岸だ。


 ここ何日か雨も降っておらず、川の流れが穏やかだったのが良かったようだ。


 お母さんは、そばに駆け寄り、川に入ってロジーを抱きしめる。ニュイは、俺の方を向いている。


 俺も川に入り、ニュイを抱きかかえた。

 


「お母さん、お母さん、僕、出来た。泳げた」

「うん、うん、でも、ダメでしょう! ロジーに何かあったら、私、私はもう〜〜」


「お母さん、ロジー君は泳げるようになりたかったんですよ。そうすれば、お母さんが元気になるんじゃないかって思ってたそうです。お父さんを亡くしたのだって、自分が泳げなかったことがいけないとずっと思い悩んでいたんです」


「ロジー、ロジー〜〜」


「でも、ロジー君は、立派に弱い自分を変える事が出来ました。今度は、お母さんの番ですよ。いつまでも、過去ばかり気にしていたら前には進めませんからね」


「ロジー、ロジー、ごめんね、ごめんね〜〜」


 そこには、お互いを思う親子の姿があった。

 偉そうな事を言ってしまったけど、結果が良ければ全て良しだ。

 今回は、ニュイに助けられた。

 俺は、戦闘以外、誰も救えないのではないかとこの頃思う事がある。

 そんな自分の不甲斐なさをいつも感じてしまう。


「ニュイ、ありがとう。ニュイは、泳げたんだ? 」

「ずっと、水の中でぷかぷか浮いてた」

「水の中で? 」

「そう」

「今まで? 」

「そう」


 培養液の中にいたのか……

 どおりで水に恐怖心が無いわけだ。


 前世の科学でもクローンを作ろうと思えば作れるだろう。

 でも、この異世界で、同じような事が出来ていたなんて、まるで、映画だ。


 今回は、ニュイのおかげで、ミッション・コンプリートだ……


 だが、時々、見に来なくちゃいけないかもな……





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