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鮮華伝  作者: 栗栖紗那
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001 序章

「どうか間に合ってくれ」

 一群となって馬を駆るその先頭で、軽装ながらも拵えの良い甲冑に身を包んだ者が呟く。

 その言葉は雷鳴のような馬蹄の轟きに掻き消されたが、その思いは誰もが共有しているのだろう。鎧や武器に統一性はないが、その表情は一様に焦りの色が濃い。

 先頭をひた走る横に、一人の偉丈夫が巧みに馬を操って並ぶ。

「兄者、あまり無理をなさらぬ方が」

 背には長大な矛を背負い、纏った鎧には無数の傷が残るその姿は、まさしく歴戦の戦士のもの。だが、厳ついとも言えるその顔は、身なりの良い彼の身を案じてか居並ぶ者よりも曇っている。

「今無理をせずして、何時無理をする。私たちの存在意義はそのためにあるのだ」

 激しく揺れる馬上にあり、なおかつ轟音とも言える馬の一群による蹄音に掻き消されることなく、良く通る声で自らの存在意義を主張する。その声は男としてはやや高かったが、華奢にも見える体を思えば、その高さにも納得はいく。

 主張をする声を支えるのは、彼の心の在り様なのだということは、決意を秘めた目を見れば明白だった。

「わかりました。しかし、絶対に無茶はしないでください」

 なおも身を案ずる偉丈夫に対して、兄者と呼ばれた者はくどいとばかりに馬に鞭を入れて速度を上げて引き離した。

 まっすぐに前を見据える瞳に映るのは荒涼とした大地であり、目的である小邑はまだ見えない。

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