マコとの出会い
ドロンはお使いのとちゅう、キツネの妖怪――マダラギツネに出会ってしまう。
そして森の中を逃げまどううち、いつしか知らない世界へと迷いこんでいたのだった。
白い霧の中。
ドロンは眠っていた。霧が晴れるのを待つうち、しらずしらず眠ってしまったのだ。
やがて霧が晴れ、ドロンもやっと目をさました。
だが、このとき。
ドロンは森にはいなかった。なぜか見たことのない部屋の中にいたのだった。
「きゃっ!」
声をあげて、ドロンは目を大きく見開いた。
そばに知らない女の子がいる。
女の子もおどろいているようで、ドロンをじっと見つめて聞いた。
「あなたって、なあに?」
「チャワン妖怪、名前はドロンっていうんだ」
「チャワン妖怪?」
「そうだよ。チャワンが百年われずにいたんで、こうして妖怪になれたんだ」
「すごいわ。でも妖怪なのに、あなたってとってもかわいいわね」
女の子がにっこりする。
「それで妖怪のあなたが、どうしてここにあらわれたのかしら?」
「それはおいらも……」
ドロンもわからないのである。
そこでドロンは、これまでのことを話した。
お稲荷様のホコラで生まれ、白キツネのもとで修行をしている。それがお使いのとちゅう、マダラギツネに追われ、ひっしに森の中を逃げた。
そのうち白い霧につつまれ、その霧が晴れると、なぜかここにいたことを……。
女の子はドロンの話を信じてくれた。
「あたしはマコ、よろしくね」
「おいらこそ」
「ドロンは妖怪の世界から、こちらの世界に迷いこんできたんだわ」
「じゃあ、ここって?」
「ここは人間の世界。あなたがまだチャワンだったころの世界よ」
「だったら、マコは妖怪じゃないんだね」
ドロンはマコのことを、すっかり妖怪の仲間だと思っていたのだ。
「あたしね、本で読んだことがあるの」
こんどは、マコが知っていることを話した。
「ふたつの世界はかさなり合っていて、タマシイの通る道でつながっているそうなの」
「タマシイって?」
妖怪になってまもないドロン、今は修行をしている身で、むずかしいことはわからない。
「人間界の者はね、死んだらタマシイになって、その道を通ってドロンがいた世界に行くの」
「おいら、死んでなんかいないよ。妖怪として生まれ変わったんだ」
「そのときドロンに命ができたのよ。それで道を反対に通ってこれたんだわ」
「そういえば、白キツネ様もそんなことを……」
ドロンは妖怪になった夜ことを思い出した。
あのとき白キツネ様は話していたのだ、おまえは妖怪となって命を宿したのだと。
「それでドロンは、タマシイの通る道に迷いこんでしまったのよ」
「おいら、その道を通って、こちらの世界に出てきてしまったんだね」
「そうなの。たぶんまちがって、ドロンは人間界に来ちゃったんだわ」
「その道がわかんないと、おいら、もとの世界に帰れないんだ」
「あきらめちゃダメよ。ここに出てきたんだから、きっとその道の入り口が、この部屋のどこかにあるはずだわ。ねえ、探してみましょ」
マコがやさしくドロンの手をとった。
ふたりは妖怪の世界に続く入り口を探した。
ベッドや机の下を見た。
壁や床など、あちこちをさわってみた。
けれどいくら探しても、そのような入り口はどこにも見つからなかった。
「白キツネ様、おいらが帰らないんで、心配してるだろうな」
ドロンの目から涙がこぼれ落ちる。
そんなドロンを、
「帰れるまで、ずっとここにいていいのよ」
マコはやさしくだきしめてくれた。
こうして――。
ドロンは人間界の女の子、マコと出会った。
マコのあたたかな腕の中で、笑顔をとりもどしたドロンであった。




