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6.運命とは必然を積み重ねた先にある

「あ、ねぇ、あれ美味しそう!」

「リナ食べたいの?買ってくる?」

「でしたらこちらのもお勧めですよ!」



仕事終わりのメアリに声をかけ、3人で仲良く街を歩く。

大きなパレードに合わせて屋台のようなお店が沢山出ており、まるでお祭りにでも行ったようだが問題もある。


そう、私は今、3人で、歩いているのだ。


“一人が危ないことは理解したからなるべく空気になって見守るつもりだったのに···!”



フィルが紳士的に、何もわからない私をもてなそうとしてくれる。

さすがフィルだ、見た目王子が微笑むだけで勝手に安くなっていてもう嫉妬すら出来ない。

だけど今はメアリさんをエスコートして欲しい。

そしてメアリさんがお姉さんのように街を案内してくれる。

さすが幼く見られがちの日本人だ、多分私の方が年上だなんて言い出せなかった。

だけど今はフィルとデートをして欲しい。


右側にフィル、左側にメアリさん、真ん中に私というそうじゃないと言いたくなる並びで泣く泣く歩いている。


とは言うものの、楽しくないかと聞かれたら楽しいのだが。


チラリとメアリさんの頭上に視線をやると、相変わらずピンク1色に染まっている。


“気になってるなら私を通さずフィルに直接話しかければいいのに”



「フィル、万が一私が迷子になったらどうする?」

自身の無力さに気付いた後なのでさすがに実行はしないが、そもそも人が多く大層賑わっているので念のために確認すると。


「はぐれただけという事なら魔力を辿ってリナの元に転移して終わりですよ。その後は手を繋いで離しません。もし拐われたというなら相手は···まぁ、それなりに」


こわっ!

微笑んでるままで冷気出さないで欲しいっ!


そういやフィルって自称魔王だった、と焦り、自分の···というより見知らぬ誰かの命の為に拐われないように気を付ける事を誓ったのだが。


“そういや私ってフィルに拐われたんじゃない?”と気付き、これ以上深くつっこむととんでもないパンドラの箱を開ける気がして言葉を飲み込んだ。



「お二人はこの街の方じゃないんですよね?パレードに合わせて来られたのですか?」

私達の様子を見ていたメアリさんにそう聞かれる。


「いえ、こっちに来たのは偶然なんですよ」

さすがにいきなり嫁探しとか言うと引かれてしまうかな、と当たり障りなく返事をしたのだが。


「まぁ!それは素敵ですね!」

と何故かメアリさんは頬を赤らめていて。


「今日のパレードは、なんと王子殿下のお嫁さん探しなんですよ!」

と教えてくれた。


「よ、嫁探し!?」

ちょっとフィルと被ってるんですけど!と焦る。

というか、私はこの世界の事には詳しくないのでイメージの話になってはしまうが、王子様となると貴族とかとの政略結婚するんじゃないの?と思ったのだが。


「そういう国もあるみたいですが、ここでは真実の愛が信じられていて。今日は王族も貴族も関係なくみんな平民の姿をしてこの市場にいるんです。そこで運命の相手として王子殿下に見初められたらパレードの馬車に案内されるんですよ!」

「じゃあパレードのあの馬車って···」

「まだ無人で走ってるので、運命の相手を探しておられるんだと思います···!」


身分関係なく唯一を探す···それは確かにロマンチックかもしれないし、フィルに向けて女の子がチラチラ目線を送っていたのは、もしかしてフィルが王子様だと勘違いされてる···って可能性もあるのか。


「でも、一目惚れで結婚相手を探して大丈夫なのかしら···」

そう思わず呟いた私に、

「平民の姿になった恋人を探してるんじゃないかな」

とフィルに言われ、その言葉に納得する。


もしかしたら過去に平民と恋に落ちた王様とかがいたのかもしれないな、と考えた。

身分を超えて結婚するにはそれくらいドラマチックな何かの理由がいるのかもしれない。


···まぁ、私の想像だけどね。



「でも、女性だけでなく男性もそわそわしてる気がするんだけど···」

もしかしたら声をかけられるかも、と女性がそわそわするのは理解できるが、それにしては男性もなんだか落ち着きがないように見えてそう聞いてみると。


「このパレードに合わせてプロポーズすると上手くいくって言われてるので、目当ての女性を探してるんだと思います」

と教えてくれた。


「今日プロポーズして、相手の女性が王子様と勘違いするとかはないのかしら」

と、ふと気になって聞いてみたが、顔を隠してる訳じゃないのでさすがに王子殿下と自分の恋人を見間違える人はいませんよ、と言われ、それはそうだなと理解する。


「さすがに一目惚れでプロポーズなんてしないか···」

そう呟いてフィルを見上げる。


「えっ!?もしかして初対面でお嫁さんになってって言ったの遠回しに責められてる···!?」

と、少し慌てていたがそれはスルーした。



「もしかしてメアリさんにも、そういう相手がいるのかしら···?」

念のために確認してみるが、そういった相手はいないとの事だったので安心する。



熱心に仕事をする姿も、こうやって丁寧に説明してくれる姿も好感度抜群。

そして何よりゲージがピンク1色、何のゲージかはちょっとわからないけど色的にもきっと好感度的なモノだと思うし···もう一押し、何かキッカケがあれば···


シンデレラがガラスの靴を落としたように。

そういった何かのキッカケが欲しい···!

そう思った。そう“願ってしまった”。


「あれ、何か落ちてる」


そしてそこに落ちていたのは。


「ガラスの編み上げブーツ?」


な、ん、で、だ、よ!


「大変だわ、誰が落としたのかしら」

そう首を傾げるメアリさんに落ち着けと言いたい。

ガラスの編み上げブーツどうやって落とすの、そもそもどうやって編み上げるの、というかこれってもしかしてもしかしなくても。


「リナ、何か願った?」

「····願った····」


確かに願ったけど、そうじゃないんだと言いたい。

願ったのは“キッカケ”だ。


偶然落ちていたガラスのブーツと、偶然拾ったメアリさん。

その“偶然”が魔法という名の“必然”ということは。



「すみません、そのブーツを落としたのは私です」

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