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5.チートとは使いこなせてはじめてチートと呼べる

「好みのタイプ···?黒髪で···」

「あ、そういうのはいらないです。」


綺麗な碧色を少し細めて顔を覗き込まれるように言われ···かけた言葉を慌て遮る。


危ない、そういうこと言ってると絶対いつか困った事になるんだから···!

私は本気にはしないけど、その顔でそんなこと言われたらコロッといっちゃう子だって絶対、というか結構いると思うから···!


そして食いぎみで止められてしょぼんとしないで、ちょっと可愛いから····


くっ、これが顔のチカラか···!と思ったが、今私が翻弄される訳にはいかない。

フィルには今後存分に本命を翻弄して欲しいからね···!


「でも、もし本気で探そうと思ってるとして、どの子がどういう性格かなんて見た目じゃわからないし、僕の好みの性格かどうかなんてリナにもわからないでしょう?だったら見た目以外に何を言えば···?」

なんてもっともな事を言われてしまった。


た、確かに···!

よく知ってる友達を紹介するのとは訳が違うんだから、と考え、せめて女の子のパラメーターのようなものがわかればいいのに。と思った時だった。


近くを歩いていた女の子の頭上にゲージのようなものが出たのだ。


「·····はぇ?」

「リナ?」


何もない空間を眺めてフリーズした私に驚いたフィルが慌てて顔を覗き込む。


「どうしたの?具合悪くなっちゃった?ここ結構人も多いし人酔いかな、少し移動しようか?」

なんて優しく声をかけてくれるがそれどころではない。


「魔法って、何でも出来るって訳じゃないって言ってたわよね···?」

全てを理解した訳ではなかったが、教えて貰った魔法の理屈としては、あくまでも自然の力を借りた“行程のショートカット”のようなものだと理解していたのに。


治癒魔法は対象の自然治癒の力を促進させて治すとか、テレポートも理屈は想像出来ないが、私のいた世界でだって夢物語のようなタイムマシンもアインシュタインが理論上タイムトラベルは可能としていた事を考えるとそういうのも科学的に実現出来る方法があるのだと思っていたのだが。


「願ったからってこんなことあり得るの···?」


幻覚?と目を擦ってみたがそんな訳もなく、どうやら私の近くに来た若い女の子にゲージがついているらしく、ただゲージが何かはわからない。

しかしエドをチラ見した女の子はその度にピンク色がつき増減する。まるで温度計だ。


「ピンクってことは好意みたいな?やだ格好いい~!って気持ちが現れてる?」


なんとなくだがこの推測は当たっている気がしたが、しかし好意が見えたところで役に立つのは告白の成功率くらいなもので···。


違う!私が見たいパラメーターってそういうことじゃない···ッ!


くうっ、と思わず握りこぶしを作る。

さすが願いを具現化できるチート魔法っ!

そしてさすが私!想像力が足りないのか何一つ使いこなせてない···っ


「大丈夫?果実水買ってきたよ!」

飲んで、と渡され驚いた。

心配そうに覗くフィルを見て思わず温かい気持ちが胸に溢れる。


「ありがとう、フィル」


何一つこのチート魔法を使いこなせてないが、この能力が進化することも使っていけばあるわよね。

そう思い直し渡してくれた果実水をコクリと飲むと、爽やかな甘さが口の中に広がった。


その甘さに浸っていると、ある女の子が控えめに声をかけてくる。


「あの、お客様、お釣り···!」

「あれ、ごめんね、焦ってて」


恐らく私が今飲んでいる果実水のお店の子なのだろう。

淡い茶色の髪をふんわり1つにまとめているその女の子は、少し恥ずかしそうにフィルに硬貨を渡していて。


“ゲージが、振りきってるな···”


ポカンと彼女の頭上を見上げる。

そのゲージは全てピンクで埋め尽くされていて。


「貰ってしまっても良かったのに」

というフィルに、そんなこと出来ませんっと慌てるその子がとても可愛い。

そしてその子はふとフィルの隣にいる私に気付き、「あ、ごめんなさい私ってば、お連れ様がいらっしゃるのに···」と俯いて。


フィルの方をチラッと見ると、フィルはその女の子をじっと見つめていた。



あれ?これ、もしかしてもしかするやつ?



「あの、私本当にただの連れなので!お姉さんのお名前は?」

「えっ、リナ?」


反射的に声をかけると、大きな瞳をぱちくりさせたその女の子は、メアリだと教えてくれた。

彼女は仕事中なので、メアリさんの仕事が終わる時間を確認もさりげなくした私、初仕事なりにいい仕事したのでは?


そしてもちろん私の仕事はこれからな訳で。


「フィル、彼女のお店を遠くから見守りましょう」

「えっ?えっと、それより何のパレードかを調べる方が良くない···?」

「私達が何のためにここに来たと思ってるの!?」

「えっと、お買い物とか···?」


そんなフィルを見て、そう言えばまだ目的を言ってなかったと気付く。


「なんか嫌な予感がするんだけど···」

と眉毛を下げたフィルにはお構い無しで、


「貴方のお嫁さんを探しに来たわ!」


と断言すると、やっぱりぃ···?とフィルは顔を両手で覆って空を見上げてしまった。


そのなんだか不満そうな様子に少しムッとしてしまう。


「フィルだってさっきの彼女の事じっと見てたじゃない!」

「いや、僕が見てたのは···っ」

「とにかく!まずは彼女の仕事ぶりを見てどういう子かを確認するわよ!」

「えぇ~っ!」



フィルを無理やり引っ張り彼女の働くお店を眺めてみる。

その様子は真面目そのもので、接客対応も問題ない。

もし変な人が彼女に絡むような事があったらフィルを送り出そうと思って見ていたがそういうドラマチックな事ももちろんなくて。


そしてあっという間に彼女の仕事終わりの時間がやってきた。



「声かけに行きましょう!」

「ホントに行くの?」

「さぁ、行ってらっしゃい!」

「えっ!?」


驚くフィルにキョトンとしてしまう。


「え、自分のお嫁さん候補よ?」

「そうじゃなくて!」


首を傾げるリナに、ため息をついたフィルが丁寧に説明をする。


「僕が声をかけに行ってる間、リナはどうしてるの?こんな知らない街で、一人じゃ帰れない。リナの魔法は万能かもしれないけど、咄嗟に身を守れる?何かあったときどうするの?」


まるで子供に言い聞かすように諭され、自分の認識の甘さを自覚する。

確かにかなりチートな能力を持っているかもしれないが、それは“使いこなせて”こそのもの。

今の私に何かが起こったとき、例えば召喚された時のように攻撃を受けたとしたら···


まだ私はフィルにすがるしか生き延びる方法をもたないのだ。

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