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4.はじめての嫁探しは唐突に

「ねぇフィル!テレポートでどこかに行ってみない?」


リビングでクロと遊んでいるフィルに声をかける。


新しい生活が始まって約1週間。

少しでも慣れようと率先して色々やってみたおかげか、たった1週間でしっかりこの生活に順応した。


フィルがこの家にかけてくれているらしいリラックスの魔法のおかげもあってか実家のような安らぎがある。

クロなんて夜寝る場所をフィルのベッドにする事もあるくらい家にもフィルにも慣れてしまっていて、正直嫉妬すら覚えているくらいで。


もちろん私の一番はクロでクロの一番も私だ。絶対。



「テレポート?」

「瞬間移動よ!神殿からここに連れてきてくれた時みたいなやつ」


あぁ!と目を見開いたフィルが、すぐに少し困ったような表情をした。


「うーん、何か目印があるような場所ならちゃんと行けるんだけど···」

と前置きをして教えてくれる。


どうやらあの時は聖女召喚という大きな魔力に飛んだからピンポイントで来れたというだけで、どこにでも自在に行き来できるようなものではないらしい。


「行ったことある場所なら辿れるけど、僕が行ったことあるのってあの街だけだから···」


あの街、と言われすぐにピンとくる。

魔王と呼ばれ攻撃を受けた、故郷の街の事だろう。


「行ったことのある場所以外に飛ぼうとするとどうなるの?」

「場所の指定が出来ないから、どこに着くかが未知数かな」


つまり、あの某バラエティー番組の行き先をランダムで選ぶ人気コーナーみたいな感じってことか、と理解する。


「帰ろうと思えばここには帰れるのよね?」

「それはもちろんっ!ここは僕達の家だからねっ」


くっ、今日も王子様スマイルが目に眩しい···!

それにさらっと『僕達の家』と言われた事にドキッとしてしまう。


顔だけでなくこういう事をさらっと言えるところも本物の王子様みたいね···


そんなフィルはもちろん王子様なんかではなく、自称魔王なのだが。



それよりも。

帰れるならばもちろん問題はない。


「行き先はランダムでいいわ!」

「へ?」

「まずは色んな人に出会うわよっ!」


ニッと笑ってフィルを見た。

今日から結婚アドバイザー始動である···!!




本当に適当でいいの?やったことないからどこに着くか本当にわかんないよ?海の上かもしれないよ?そしたら即落ちちゃうよ?と、散々渋られたものの。


「その時は私の魔法で乾かしてあげるわ!」

と断言しフィルと手を繋いだ。


ちなみに手を繋ぐ理由はフィルいわく“繋げた時空で離ればなれにならない為”である。

私がテレポートに挑戦しようかと思ったのだが、まだそこまで大きな魔法なんぞを使ったことがないし、万が一上半身だけ行って下半身が残ったみたいなホラー展開になったら···なんて想像して止めた。


テレポートはまず野菜を畑からキッチンに送るところから練習しようと思う。


とは言えフィルも、行ったことがない場所に行くのは初めてとの事で念のためクロはお留守番をして貰うことにした。

着いた場所が楽しく安全な場所なら、後程ゆっくりクロと来ればいい訳だしね!


「じゃあ、本当に出発するよ···?」

「もちろんよ!クロ、すぐ帰ってくるからね!」


可愛いクロにそう声をかけて目を閉じる。

向かうはフィルが知らない場所。つまり、“フィルを知らない”人がいる場所だ。


必ずフィルにぴったりのお姫様のようなお嫁さんを探してあげるからね···!!



ーー···でもフィルがお嫁さんを迎えたら私とクロはどうなるのかしら。

ふとそう考え、すぐに頭を横に振った。


それを考えるのはまだ早い気がしたからだ。


(そもそも人がいる場所に着くかもわからないしね)



ふわっと小さく浮遊感がしたと思ったら、優しく名前を呼ばれそっと目を開く。


「つ、着いた?」

「うん、着いたみたい」


そこは。



「えっと、お祭り、かしら···?」


街のようだがとにかく人が多すぎて戸惑う。


良かった、クロがこの人波を見たら驚いて大変な事になってたかもしれないわ。

ちゃんと街に着いた事と、クロの安全を思いほっとした。


「どうやら何かのパレードをやってるみたいだね」


気候は家とそこまで変わらないのでそこまで遠くない場所に来たのかもしれない。

とは言え、私はこの世界の気候がどうなってるのかまでは知らないのだが。


「あと看板の文字が同じだから、遠くの国に来たって訳でもなさそう」

「なるほど」


未知数の場所に来たとは言え、少しの情報でもなんとなくどういう場所かは推測できるんだなと感心する。


そして大事な事を確認し忘れていた事に気付いた私は、そういえば、とフィルに声をかけた。


「フィルはお嫁さん何人希望なの?」


街の様子を見ながら情報を集めていたフィルが、その突然の質問にポカンとした。


「え···っと、何人って、え?子供が何人欲しいかの言い間違いかな?」

「いえ、嫁よ。嫁の人数を聞いてるわ!」


出来れば一夫一妻を希望しているが、一夫多妻がいいならもちろんフィルにぴったりのお嫁さんを何人でも探してみせる、何故なら私はフィル専属の結婚アドバイザーに就職したのだから!


と、謎にやる気を見せている私とは反対にかなり困った様子のフィルだったが。


「そ、うだね、王族とかは後継者の関係で側妃を持つ事もあるらしいけど、僕は普通に一人かな···」

「!」


一夫一妻!

そう聞いて思わず顔が綻んだ事に気付きすぐにしかめる。


フィルが一夫一妻を望もうと一夫多妻を望もうと私には関係ないんだから喜んでどうする。


「私が嫁になる訳でもないのに···」

「いや、あの僕はリナがお嫁さんになってくれたら···」

「私にはクロがいるから!」

「えぇ~っ、ライバルが可愛すぎるよ···っ」


その少し潤んだようなあざとい表情を見て胸がちょっとばかりギュンッとしたが気にしては負けだ。

働かざる者食うべからず···!



「で、フィルはどいういう子が好みなの!?」

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