009好き、で、落ちる。
どうも、クロジャです。
いつものごとく遅れました。すいません。
特に報告はないので、そのままどうぞ。あと、すいません。
例えば私がここで、雲雀さんに『ごめん、実は行けないんだ』みたいな事を送れば、きっとこう返ってくる。
『そうだよね。私と一緒になんか、帰りたくないよね』
といつ風な、悲しみのメッセージが返ってくるだろう。
最初に会ったときとは、また違う雰囲気。雲雀さんは、そもそもあんまり気が強くないのか、それとも友達が出来たことで、距離感とかが分からなくなっているのか、気弱な話し方しかしなくなっていた。
これを断るなんて、私には出来ない。
じゃあ、優しい人に送ったら?いやいや、私には出来ない。なぜなら、碧葉ちゃんを預かってもらっている恩があるのにも関わらず、ここで『あ、行けないです』なんて送ったら、メッセージでどう返ってくるとかじゃなくて、私の心がしんどい。
八方塞がり。私は右も左も選べない状況下を自分で作ってしまったのだ。対処法も分からないのに。
「.....はぁ..」
「...あれ、栗花落?」
「はい...?..ひ、雲雀さん?!」
ため息をつきながら歩いていると、前の方から声がかかる。
顔を上げて見ると、そこにいたのは、なんとなんと雲雀さんだった。...ジャストタイミング!!
「ど、どうしたのさ...。そんな驚かなくても..」
「雲雀さん!!雲雀さん!!雲雀さん!!」
「何回も呼び掛けなくても..」
狼狽える雲雀さん。じり、じりと後ろへと後退していくのを、私は無理矢理手を握り、こちら側へと引っ張ることで阻止する。顔の位置が近くて、少し恥ずかしいけどいまは我慢。
「ーーっ!!ち、近い!近いって!」
「...すいません!!」
「...へ?」
なにを言われるのかと照れながら焦る雲雀さんは、私の一言で石化したように動かなくなる。
「...その、ですね。実はーー」
私はさっきの出来事をありのままに話した。
もう一人とやりとりをしていて、その最中に間違えて送ってしまったこと。それで私が癇癪を起こして、同じメッセージを送ってしまったこと。それで、先に碧葉ちゃんの所に向かわないといけないこと。
「.....」
「ご、ごめんなさい!」
無言で私の話を聞いていた雲雀さんは、無言で私の両肩に手を乗せる。ないとは思っていたけど、なにかされると思って反射的に目を閉じた。
しかし、くる筈のそのなにかは来なかった。恐る恐ると目を開けると、そこには惚けた顔の雲雀さんがいた。可愛い。
「ど、どうしたんですか..?」
まだ、砕けた話し方には慣れなくて、敬語とか丁寧語が入ってしまう。それを雲雀さんが気にしてないといいけど...。
「ね、ねぇ。その碧葉ちゃん、っていう子に、私が会うことって..出来たりする?」
思わずキョトンとしてしまう。言ったことが理解できず、いや理解は出来たのだけれど、理解しても、へ?となってしまう。
え、もしかして、雲雀さんって..
「..子供が好き、なんですか?」
「....う、うん。見た目には、まったく合わないだろうけど。これでも一応、保育士を目指してて..勉強しながら、少しずつ頑張ってる最中なんだ。どう?似合わないでしょ?」
「そ、そんなことないって!!」
「そ、そう..かな?」
テレテレと恥じらいながら言うその姿は、もはや可愛いの一言で締め括られる。
私は雲雀さんのことを、美人、と言ったけれど、いまの私からするとそれに加えて、かわいらしい一面も合わさり、雲雀さん最強に可愛い説が浮上してきた。
「う、うん!!碧葉ちゃんも喜ぶだろうし、一緒に向かいに行こう?」
「いいの?」
「大丈夫。碧葉ちゃんは優しいから。それにすっっっごく可愛いよ?」
「わ、分かった。行こう」
笑みをこぼしながらそう言う彼女は、やはり無敵だと私は考えざるおえない。碧葉ちゃんも可愛いけど、雲雀さんも可愛いですよ。私はそう言いたい。
でも、そんなことを言えない。というよりかは、雲雀さんがあまりにもウキウキと楽しそうにしているので、早く碧葉ちゃんを見せたくなった。
「こっちです」
五階まではエレベーターで上がり、到着してからしばらく歩く。204号室って意外と遠いんだよなぁ..。
201、202と過ぎ去っていく。そして、ついに204号室までつくことができた。ここまで約五分。碧葉ちゃん、ちょっとはしゃぎすぎじゃない?私、体力はないんだよ?
それに比べ、雲雀さんは息の一つも乱さず、私の隣をついてきていた。流石はモデルさん。あれ、モデルさんだっけ?..というか、いや、これもしかしたら私が異常に体力がないだけでは?
運動した方がいいかなぁ..と悩んでいる内に、雲雀さんはさっさと204号室に入っていってしまう。私も遅れないようについていく。
ガラガラガラと錆びれた音が鳴りながら、扉が開く。
中はあまり広くなくて、小学校の教室の半分くらい。その部屋の真ん中に碧葉ちゃんはいた。
「も、もしかしてあの子..?」
「う、うん..」
「さ、触っても..?」
「ど、どうぞ..」
控えめな音量で、食い入るように聞いてくる雲雀さん。私は若干押されながらも、答えを出す。
それを聞いた雲雀さんは碧葉ちゃんに少しずつ近付いていく。
「ーーっ!」
指を立てて、ツンっとほっぺをさわろうとしたその時。
「...あ、あれ?」
碧葉ちゃんのほっぺに触れる筈の指が、そのまま貫通していく。
疑問に思った雲雀さんは、他の部位も触ろうとするけど..他の部分も触れず、スカッとなる。
「ど、どういうこと?」
「私も分かりません」
二人して、うーん、と頭を捻らせていると、突然どこからともなく声がかかる。
『ーーひっかかりましたね』
「えっーー」
聞いたことのある声だなぁ、と思っていると、私の体は宙に浮き、目の前の景色が変わる。隣で同じように雲雀さんもいた。
私と雲雀さんは、なにやら、あの部屋から落ちたみたいだ。
「ーーって、ひゃあああぁぁぁぁ!!!!」
「ーーな、なんなのいったいーー!!!!」
それぞれ感想を漏らして、落っこちていく。..あぁ、スカート捲れちゃう..危ない、危ない..いや、そうじゃなくて。いや、それも大事だけどね。
なんで落ちてるんだろう、とか。なんでこの大学にこんなシステムがあるんだろう、とか。色々疑問はあったけど、分かったことが一つだけあった。
「ーーあの声、優しい人のだ..」
そう呟きながら、見えないゴールまで落っこちていくのだった。
そのまま見終わって帰られる方。少し待ってください。
まず見てくださり、ありがとうございます。
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次回もまた会えることを願っています。
では、また。




