パート9
三人の警部たちは嵐山の捜査を一時中断し、大阪へと舵を切った。各支部から選ばれた3名のエージェントとマヨラ、合わせて7名の精鋭が動く。
アパート。マヨラの部屋。
「状況は良くないな、マヨラ。三つの組織が集まれば、それぞれの思惑がぶつかり合う。ナズカワは答えを急ぎ、オカイラはSATの影に怯えている……」
「……そして、あなたは大阪のことを」
深夜の静寂の中、二人は言葉を交わす。マヨラはあの店で見つけた紙切れをタガヤ警部に差し出した。
警部がそれを凝視し、何事かを聞こうとしたその時、緊急の電話が鳴り響く。警部は一言も発さず、ただ無機質な表情で音量を絞り、受話器の向こうの声に聞き入っていた。
空港の外で、マヨラはその時の光景を反芻していた。あの電話の内容は何だったのか……?
その時、一台の黒いバンが滑り込んできた。中には各支部から招集されたエージェントたちが揃っている。彼らの視線は一様にマヨラに突き刺さっていた。あの凄惨な現場から生還し、奴を屠った唯一の男への、畏怖と疑念の入り混じった視線。
[箕面駅 - 終着点]
「次は箕面、箕面。終点です。右側の扉が開きます。阪急電鉄をご利用いただき……」
駅のホームには、周囲に溶け込むよう私服に身を包んだ者たちが点在していた。彼らは互いに距離を置き、それぞれの思惑を胸に列車へと乗り込んでいく。
「ここから彼らの旅が始まる」
「そして、ここで奴らは列車を降りる」
薄暗い一室で、オカイラとナズカワが密談を交わしていた。
その目の前には、椅子に縛り付けられ、血に染まり意識を失ったタガヤ警部の無残な姿があった。
[SATオフィス]
「嵐山の森の報告書、および検死結果です」
SATの幹部、ケイシが書類をめくる。
「……他でも同様の事件が起き、隠蔽されている形跡があります。黒幕は、東京警察の三つ星警官の可能性があります」
「続けろ」
「申し訳ありません。まだ情報の精査中で、その三つ星警官の素性は……」
「いいだろう。不用意に地雷を踏むよりは、裏を取るのが先だ」
[深淵の森へ]
「マヨラ……マヨラ……」
マヨラが目を覚ます。森の木陰で微睡んでいたようだ。
驚愕した。目の前に亡き父が立っている。
駆け寄ろうとするが、足が地面に縫い付けられたように動かない。父はただ、静かに微笑みながら、一言だけ告げた。
「八 (はち)」
マヨラは弾かれたように飛び起きた。
「……夢か」
一行はすでに、不気味な森の境界に立っていた。
「深い森ではないが、人を狂わせるには十分だ」
リーダーのヨナが手帳を開く。「この先8キロ地点に、例の屋敷がある」
マヨラが静かに問いかける。「支給された弾丸の数は?」
「14発。銃は2挺だ」
「……残り一つは? 3つの支部に一つずつあるはずだ」
「いや。最初から三つしか作られなかったんだ」
マヨラは沈黙し、深く、暗い森の奥へと足を踏み入れた。




