表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴラリ・エージェント  作者: Adrashika
甘い囁き
7/17

パート7

翌日。

マヨラはカフェの店長に電話をかけた。

「店長、すみません……今日は行けそうにありません。はい、実はちょっとした事故に遭ってしまって……。はい、失礼します」

電話を切ると、彼はクローゼットを開けた。そこには、封印していたはずの「自分」がいた。

黒のブレザーを羽織り、拳銃をホルスターに収める。仕上げに、微かに香る冷ややかな香水。

「あの日……俺は、自分自身に言い聞かせたんだ」

2ヶ月前。

マヨラはタカオの亡骸を、崩れかけた洋館の壁にそっと立てかけた。

館の外に出ると、地面から伸びる無数のワイヤーを掴む。それは屋敷の至る所に仕掛けられた爆薬へと繋がっていた。

「さらばだ……」

頬を伝う涙。彼は回路を繋ぎ、スイッチを入れた。

次の瞬間、巨大な火柱が夜空を焼き尽くした。熱風が吹き荒れ、大地が震える。まるでこれから起こるすべてを、マヨラだけが知っていたかのように……。

6月24日――広島県警 捜査一課

「警部、2ヶ月前に東京郊外の森で起きた爆発事件ですが、発生日は4月1日でした……」

「……遺体の身元確認を急げ。情報を上げろ」

若手刑事が報告を終え、上司の冷たい視線の前で黙ってファイルを閉じた。

「前回のエンカウントの証拠は、完全に消し去られている。ゴラリ、そして他のエージェントたちの死体と共に、あの洋館は跡形もなく破壊されたんだ」

渋谷――対ゴラリ特別機関エージェンシー

今日の機関内には、静寂の欠片もなかった。初めてゴラリを仕留め、生還した者が現れたのだ。

誰もが、その怪物に関する情報を手に入れるための会議を待ちわびていた。

「おい、あの爆発をやったのは誰だか知ってるか?」

「ああ、東京エージェンシーのマヨラ・ジカシだ」

「なぜ、本部に報告もせず屋敷を吹き飛ばしたんだ?」

囁き声が飛び交う中、重厚な扉が開き、幹部たちが部屋に入ってきた。

沈黙。彼らは質問を遮るように、詳細は後日の会議で話すとだけ告げた。

「タガヤ警部のエージェンシーは実質壊滅したも同然です。今後、彼らは我々の傘下に入るのでしょうか?」

一人のエージェントが問う。幹部は答えず、アシスタントを連れて部屋を後にした。

「……警部、今の振る舞いは少し強引すぎます。調和を乱しかねませんよ」

廊下でアシスタントが苦言を呈した。しかし、幹部は足を止めない。

「何だと……? タガヤは、我々と第三機関のエージェントの詳細まで握っている。我々も、彼のデータが必要なんだ!」

幹部の声には焦りがあった。

「タガヤの下には7人のエージェントがいた。だが生存者はマヨラ一人。我々が把握しているのは、マヨラ、ジンカイ、スガロウの3人の情報だけだ。残りの4人は一体誰なんだ……? 存在すら不透明だ」

アシスタントは黙り込んだ。彼の心の中で、タガヤ警部への不信感と焦燥が募っていく。

その頃、東京の「ズーシャイ・カフェ」――。

タガヤ警部は一人、窓の外を眺めていた。

「早く、あの秘密会議の日が来ればいいが……」

京都・嵐山、竹林――

竹の擦れ合う音に混じって、誰かが這いずる音が聞こえる。

「急げ……早く行け……!」

一人が瀕死の仲間を肩に担ぎ、逃げ惑う。足元には鮮血。

一人の男が膝の骨を砕かれ、その場に崩れ落ちた。

「逃……げ……ろ……」

男が仲間に叫んだ瞬間、鋭い「何か」が彼の頭部を、胸を、そして脚を切り裂いた。肉体は原型を留めぬほどバラバラに刻まれる。

生き残った男は恐怖に凍りつき、動けなくなった。逃げようとしても、震える足が言うことを聞かない。

「ニ……ゲ……テ……」

甘く、そして魂を凍らせるような声。

男が背後を振り返ると、そこには無数の「ブレード」が迫っていた。

逃げる隙も与えず、冷徹な攻撃が繰り返される。竹林の根元は、瞬く間に深い紅に染まった。

翌朝――渋谷エージェンシー

「警部! 昨夜調査に向かった2名のエージェントと連絡が取れません!」

オカイラ警部(渋谷支部責任者)はこの報告を無視できなかった。

彼は直ちに、数名のエージェントを最後の発信地へと向かわせた。

そこは――嵐山だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ