パート10
チャプター — 壁のピン (Home some pins)
「壁は喋らないが、それでも多くを語るものだ」
タガヤ警部は自分の部屋にいた。正面の壁には、写真や新聞の切り抜き、日記の断片がピンで留められ、一本の糸がそれらすべてを繋いでいた。
タガヤがタバコを吸いながら立っていると、ドアが開く。娘のサイナが食事の合図をしに来たのだ。
「お父さん、一日中こんな紙クズの中にいて退屈しないの……?」
タガヤは静かに微笑み、部屋に鍵をかけて娘と共に食卓へ向かった。
しかし……
ピンで留められた紙片の中には、いくつかの「寺院(Temples)」の写真や記述があった。それは、かつてジンカイが語った「ゴラリ」にまつわるものだった。
[ジンカイの声] 「見てください。この寺院は信じがたいものですが、ゴラリの寺院です。一部の人間はゴラリを信仰しています。そして最も興味深いのは……(咳き込み)人々は彼らを神として崇めているのではなく、ただゴラリに無視されるよう、見逃されるよう祈っているのです……」
警視庁本部 (Tokyo Cop Station Head Office)
捜査官たちの間で会議が開かれていた。自殺でも殺人でもなく、銃器すら使われない不可解な事件が二件続いていたからだ。会議室は静まり返り、誰もが言葉を選んでいた。
「署長、争った形跡もなく『静かな死』が起きています。物音一つ立てず、これほど無残に殺すのは不可能に思えます……」
別の捜査官がコップの水を回しながら口を開く。
「以前、マヨラという少年が銃器を使い、ある一家を根絶やしにした。女子供以外、跡継ぎを一人残らず消したのだ……。その後、彼には死刑が下されたはずだが。」
数人の捜査官の目が泳ぐ。しかし、彼らは捜査をより厳重にすることを決定した。
タガヤは妻と娘を連れて京都へ向かう準備をしていた。出発の間際、彼はマヨラを呼び出す。マヨラもそこに来ていた。
タガヤは家族を待合室に残し、マヨラと話すために外へ出た。
「3日間だけ京都へ行く。……油断するな。一刻一刻の報告が欲しい。この3日間、エージェンシーの主はお前一人だ。」
マヨラは黙って頷く。タガヤは自宅と部屋の鍵をマヨラに預け、去り際にあることを思い出したように付け加えた。
「マヨラ……オカイラさんがお前を『ウィッシュマスター(WishMaster)』に会わせようとするかもしれない。だが、はっきりと断れ。タガヤが戻ってから直接会うと言え。」
タガヤは去っていった。マヨラは手の中の鍵を見つめ、遠ざかる背中を見送った。
そして車に乗り込み、自問する。一体、ウィッシュマスターとは何者なのか……?
マヨラの家 (Mayora’s Home)
アパートの中は静まり返っていた。テレビからは明日の天気のニュースが流れている。
マヨラはキッチンで食事を作っていた。おにぎりを握り、一人の夕食を済ませて片付けを始める。
その時、流し台にマヨラの涙がこぼれ落ちた。
タカオの死から、彼はまだ立ち直れていなかった。深く息を吐き、仕事を終えてベランダに座る。手にはタガヤの家の鍵。
彼は失った友人たちを想っていた。スガロ、そしてジンカイ……。
友を得て、兄とも呼べる存在に出会えた瞬間。そして、その瞬間の終わりにすべてを失ったあの時を。




