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パート10

8月11日……大阪、深淵の森。

打ち捨てられた廃駅。線路には分厚い苔がへばりつき、森は死んだように静まり返っていた。駅の先には浅い池があり、その中央には不気味なほど淡いピンク色の蓮が咲き誇っている。

「自然ってのは、いつも何かを隠したがる。……だろ?」

一人のエージェントが呟くが、誰も反応しない。リーダーのヨナが先を促す。

「池を渡るぞ。周囲の道は滑落の危険が大きすぎる。ここを通るしかない」

一行は泥に足を取られながら池を横切り、森の最深部へと足を踏み入れた。

8月8日……渋谷。

「嵐山の事件の後、妙な空白を感じる。……一つ聞いてもいいか?」

オカイラ警部がナズカワに問いかける。「ヨナを信じていいのか?……それと、マヨラのことも」

ナズカワは冷笑を浮かべ、吐き捨てるように言った。

「俺のエージェント、ツネリのことは知っているだろう。……4月1日、あの日からすべてが変わった。あの怪物を、初見で葬り去った男が現れてからな。マヨラ・ジカシ……奴は異質だ」

大阪、深淵の森。

池を越え、森の奥深くへ。やがて、樹木の隙間からその姿が現れる。

「……これは屋敷ハウスじゃない。キャッスルだ」

マヨラの記憶……。

「大阪に古い屋敷がある。そこがお前の舞台だ。……いいな?」

タガヤとマヨラは、密室で言葉を交わしていた。

「……わかった」

「忘れるな。『Rise, Rule, Rampage(昇れ、支配せよ、暴れろ)』だ」

マヨラは微笑む。あの日、ゴラリを仕留めた時、実は一人のエージェントが生き残っていた。

マヨラは無造作にコンクリートの塊を拾い上げた。鉄筋が剥き出しになったその凶器を、男の顔面に叩きつける。ぐちゃり、という嫌な音が響く。その後、彼は証拠ごと屋敷を爆破した。生存者は一人も残さない。

古城の夜。

城の内部は、埃と死の匂いに満ちていた。

深夜。焚き火を囲む一行。一人のエージェントが、見つけた古書の内容を語り出す。

「この城は『愛』と『呪い』でできている……。かつて、この静寂を愛した王妃のために王が建てた城だ。だが、王は侍女と通じ、愛は憎悪に変わった」

ヨナが遮ろうとするが、誰も耳を貸さない。

「怒りに狂った王は王妃を殺害した。絶望した侍女も自ら命を絶ったが、王の怒りは収まらなかった。彼は死にゆく侍女の身体を、その場で焼き払ったという……」

深夜。誰も眠れない。マヨラが告げた警告が、重くのしかかる。

城の背後には巨大な池があり、分厚い壁がその水を堰き止めていた。その壁の影、低い階段の踊り場に、布を被った何かが座っている。

そこから這い出す、薄気味悪い霧。

城の背後一帯に、微かな、しかし肺に刺さるような「啜り泣き」が響き渡る。

表側で火を囲む者たちは、まだ気づいていない。背後から忍び寄る、逃げ場のない絶望に。

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