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つぼみ ──ノライ──  作者: モリサキ日トミ


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安堵できた?もの

脱力したメアリと共になんとか外に脱出したアヤカは、燃えている家から可能な限り離れた。

メアリは焦点の定まらない目で──それは相変わらず美しい光を放って今は彼女の家を覆い尽くした炎を映したオレンジ色をしていた──目の前の光景をぼうっと見つめていた。


アヤカとアカは、彼女を置いてその場から立ち去った。

「アカ、メアリさんをあのままにして大丈夫かしら」

──アヤカは優しいね。メアリはあなたの大切な人を餌として扱って見殺しにしたんだよ。おそらく他にもあそこのノライの犠牲になった人がいるはず。もうあの人と関わることはない。

「……そうね」

──アヤカ、あなたを待ってくれている人たちのところに帰ろう。

「そうね。アカ、一緒にかえりましょう」

──私も一緒にいていいの?

「当たり前でしょう。あなたは私にとって一番大事な存在よ。もうドライフラワー状態じゃなくていいのよね。窓辺に小さな水槽を置いて、前みたいに一緒に過ごしましょう」

──アヤカ、ありがとう。



メアリの家の焼け跡に調査が入った。

浴室の燃焼が激しくそこを中心に出火原因を調べているようだ。

家主のメアリにも事情聴取をしたが会話が成り立たなかった。

おそらく彼女は然るべき病院もしくは施設に収容されることになるのだろう。

調査員は浴室の臭いに閉口しながら、この両隣の家が燃えた際の調査を思い出した。

あの時と同じ臭いだ。燻り焦げた中にもの凄く生臭さが混じったとても嫌な臭いだ。そして浴槽にべったりとへばりついたコールタールのような黒い物質も両隣のとよく似ている。嫌な臭いはこれが発しているようだ。

調査員は粘り気のあるこの物質を採取用ケースに収めた。

前に採取したものは様々な検査を行ったが、結局何の物質で構成されているのかわからないままでいた。

おそらく今採取したこれも同じ結果になりそうだ。

もしかして地球上にはないもので、とても危険な物質なのではないだろうか、それが発した臭気を吸い込んで大丈夫なのだろうか、調査員は急に恐怖を覚えた。



その頃──

アカと共に地上の様々なところに降りて根を張ったノライの蕾たちは、地球規模で起こっている様々な災害、特に高温が原因の有事に飲み込まれて呆気なくコールタール状に蕩けた。

そんな中、オスのノライがひとつだけ燃えることなく水脈に太い根を伸ばし続けた。

それはアヤカとアカの暮らす海辺の町の真裏で成長していたのだった。

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