052 僕、緊急事態宣言下だけどやる事が無く喫茶店に行く
「……シー姉」
敵陣に手を組んで立つ四神獣のリヴァイアサン、海龍ことシー姉を僕は遠くから見つめた。
シー姉が海で負けることは本来はありえないはずなんだけど。
邪竜を倒した勇者リューンがおそらく倒したんだろう。
勇者リューンはそれほどか。
「こんなに早く王都の防衛機構を使うことになるなんて」
僕はアイルちゃんに指示を出して、王都の街をまるごと地下に格納し、そこから繋がる地下道を通って、住民には旧3国に避難してもらった。
王都は不戦の草原のすぐ横にあり、不戦の草原を挟んだ反対側にヒト族のアウム神教国とエルフ族のエルガート聖樹国の軍が陣を引いている。
敵側が陣を引いている所も十分に魔素の濃度は高いはずだけど、エルフの結界なのか、随分と多くの兵が控えている。
「う〜ん、どうしようかな。と言っても、僕が自分で表には出ないし、出させるなって言っちゃったから、僕が出来ることって無いんだよね」
僕はこんな時だからこそ、喫茶店に行くことにした。
「コウもシュンもサンも会議に参加させられてるのかな」
3執事が誰もいない。それは最近では普通になっていたけど、流石に今は趣味を楽しんでるからではないだろう。
「しょうがない、1人で行くか。それでもこっそりアンサッスさんは付いて来るんだろうけど」
そう、近衛隊の隊長であるアンサッスさんは、3執事を除けばこの国1番の魔術士だ。実はこれまでも魔法で隠蔽しつつこっそり付いて来ていた。
そして、僕はいつもの喫茶店に行くべく、旧ダイン王国の首都の中央通りに転移した。
ここは不戦の草原から離れているし、王都からの避難地でもあるから、俄然賑わっている。
「おお〜、魔王様!!! 大丈夫なんですかい? こんな時にこんな所にいて!?」
「おっちゃん、大丈夫だよ。この国にはアイルちゃんを筆頭に優秀な人が大勢いるからね。むしろ僕が茶々を入れない方がいいくらいだよ」
「そうなんですかい?」
「そうそう。僕が引っ張り出される様な時ってマジでヤバい時だからさ」
「なら、まだまだ安心って訳ですかい?」
「そうそう。だからお肉売ってよ。また珍しいの仕入れてるんでしょ?」
「おっと、もちろんでさあ」
僕はこうして中央通りでまた爆買いして、市民の人達と触れ合ってから喫茶店に向かった。
「マスタ〜」
「お、これは魔王様」
「いつものちょうだい」
「かしこまりました」
いや〜、マスターはこんな時期に来ても、何も聞かずに接客してくれるあたりプロだよね。
「どうぞ」
カラン、カラン
他のお客さんが入って来た。
渋いおじさんだ。
「マスター、いつもの頼むよ」
お、この人も常連さんか。
「いやー、マスター。今日のレースは参ったよ」
「競魔ですか?」
「そうそう。大荒れだったよ」
こんな時期でも市民の娯楽がストップしていないっていうのはこの国の地力の強さを象徴している様だよね。
「そうなのですね。昨日お越しの際には謎のジョッキーSで決まりとおっしゃていましたが」
「そうなんだよ、まさか負けちゃってさ〜」
ぶっふぅ。
僕は飲んでいたコーヒーを盛大に吹いた。
「ごめん、マスター」
「大丈夫ですか?」
マスターがおしぼりを持って来てくれた。
てか、サンと、シュン。こんな時でも競魔に出てんのかよ。
そう、謎のジョッキーSとは3執事の1人のサンのことだ。そのサンが乗っている魔物が3執事の1人のシュンだ。
まあ、喫茶店にいる僕が言うことじゃ無いけどさ。
この分だと、コウも会議とかじゃなくて趣味に走ってそうだ。
渋いおじさんがまたマスターに話しかけた。
「マスター、話は変わるけど今年の魔王戦は熱いな」
「それは魔王将棋でしょうか?」
「そうよ。去年一昨年と魔王のタイトルを取ったのはアイル様で、その相手は去年も一昨年もドラゴニュートの棋士だった訳だ。だがね、今年の挑戦者はAリーグに今年上がって来たハーフリングの若いのだと目されていたんだ」
「違ったのですか」
「おうよ、3執事のコウ様が昨日ハーフリングの若いのに勝っちまったんだわ」
「ほう、それはそれは」
ゴホ、ゴホ
僕は今度は吹き出しはしなかったけど、めっちゃむせた。
やっぱりコウもか……
「それで、魔王戦はいつでしたか?」
「1週間後だな。今年は旧ガーネット王国の王城の謁見の間が会場だったはずだ。いや〜、旧とはいえ謁見の間だ。わしらみたいな市民には縁遠い場所を中継とはいえ見せてもらえるんだ。それだけでも注目度は高いってもんだ」
「なるほど。それは楽しみですね」
そんなことになってたのか。
日本でも将棋のタイトル戦は高級ホテルとか中にはお城とかでやってるのもあったもんな。
「この時期ですが、アイル様もコウ様もお出になるのですか?」
「出るらしいぜ。アイル様は昨日対戦相手が決まったから取材を受けていたんだけどな。当然そういう質問が出た訳だ。そこで、『ヒト族とエルフ族がなんですか。それは魔王戦より重要なことなんですか?』だってよ」
「それは心強いですね」
ぶっふぅ。
僕は飲んでいたコーヒーを盛大に吹いた。
アイルちゃん!? 君まで何やってんの?
そやりゃ、アイルちゃんがそんなのに出てたら、僕が中央通りを歩くよりも市民が安心できるだろうけどさ。
……けど、ねえ?
またマスターがおしぼりを持って来てくれた。
まあ、市民が安心して生活出来てる様で良かったよ。
……良かったよね?
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