051 僕、緊急事態宣言を出す
この日、世界が揺れた。
そう、文字通り揺れたのだ。
僕がこの世界に来てから最大の地震が起きた。
幸いにして、僕の国に人的被害はなかった。
震源地からはある程度距離があったからだろう。
震源地はヒト族のアウム神教国から沖に5km程と技術省から上がって来た。
僕は顔をしかめた。
「あそこらへんには、シー姉さんが住む海底神殿があったはず」
シー姉さんとは、僕のお父さんである邪竜と同じ四神獣の海龍ことリヴァイアサンのことだ。
「僕の考えすぎならいいんだけど」
シー姉さんに限って何もないとは思う。けど、そんな考えで邪竜を失ったのだ。
僕は、僕直属の暗躍部隊になってもらったヒト族のブルータさんを呼んだ。
「至急、今回の地震について調べて欲しい。ブルータさん自身が行かなくてもいいから情報を集めて。嫌な予感がする」
「は」
ブルータさんは元々アウム神教国の聖騎士だったから、アウム神教国では動きにくい。
でも、いまや暗躍部隊は密かに数を増やしている。ブルータさんはその部隊長だ。いくらでもやり方はあるだろう。
僕は、ブルータさんの報告を待った。
2日後。
「魔王様、ご報告に上がりました」
「じゃあ、早速お願い」
「は。魔王様が睨んでおられた通り、四神獣の海龍様に何かしらが起こった様です」
僕は眉を顰めた。
「私の部下がアウム神教国に行き、震源地近くの港に行った様なのですが、物々しい警備体制出会ったと」
「どういうこと?」
「勇者リューンに加え、3人の勇者もいたと」
「……それは怪しいね」
「はい。地震の調査で勇者がわざわざ赴くことはないかと。今回は規模が大きな地震ではありましたが、首都防衛の要である勇者を総動員というのは些か不可解」
「だね。これはシー姉に何かあったと見るべきだろうね。まさか死んではないと思うけど、お父さんの件もあるしなぁ。でも、このタイミングでシー姉を倒す意味がよくわからないよね」
僕は顎に手を当てて考え込んだ。
「魔王様、もう1つお耳に入れたいことが」
「え? 何?」
「勇者の他にエルフが幾人もいたと」
「!!!」
エルフ。僕達が龍ヶ峰を奪還した後、アウム神教国が手を引いたにも拘らず、ずっと龍ヶ峰にちょっかいをかけ続けていたのがエルフだ。
「ポルン達が龍ヶ峰を奪還に行った時に出て来た女のエルフもいた?」
「はい。いたようです」
「……、そうか」
「魔王様?」
「あいつら、シー姉を操る目的で海底神殿に攻めたな」
「!!! そんなことが可能なのですか?」
「わからない。僕には出来ないけど、あいつらは勇者リューンすら支配下に置いてる。何か策があるのかもしれない」
僕はすぐにアイルちゃんを呼んで会議の準備をさせた。
僕は全員が揃ったと聞いてから会議場に入った。
全員が起立して僕を待っている。
僕は自分の席に着いてから手で着席を促した。
それに従ってみんなが席に着く。
「では始める。今回の地震についてだが、ヒト族のアウム神教国とエルフ族のエルガート聖樹国が海底神殿に攻め入ったことがわかった」
「「「「「っ!!!!!」」」」」
会議場がざわついた。
僕は手で制す。
「方法はわからんが、四神獣の海龍を支配下に置いたと見るべきだろう」
「「「「「っ!!!!!」」」」」
今度はみんな静かにしているけど、動揺が広がったのはわかった。
「理由は、魔族領に攻め入るための戦力の確保しかないと思う」
全員の目の色が変わる。
「現在、暗躍舞台に情報を集めさせているが、いつ攻めてくるとも限らない。ついては緊急事態宣言を発令する」
僕がこれを発令するのは初めてだ。これは国家レベルの緊急事態において発令される。
僕はそれ程の事態を想定していた。本当にシー姉が攻めて来たら、せっかく作った王都も破壊されかねない。
「全員速やかに対応せよ!!!」
ダンっ!!!!!
全員が右拳で机を叩く。
「外務卿は同盟国と情報共有し、各国にも対応を仰げ」
「は!!!」
俺は今一度全員を見渡してから告げた。
「この国に未曾有の危機が襲ってくるかもしれない。皆、心して対応せよ」
ダンっ!!!!!
そして緊急事態宣言は速やかに発令された。
「何も起こらなけらばいいのだけど」
僕は執務室で呟く。
しかし、僕の思いはあっけなく裏切られる。
アウム神教国とエルガート聖樹国が不戦の草原の手前に陣を引いたのだ。
そして、その中には人化したシー姉の姿が確かにあった。
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