幕間007 とある密室での企て
「しかし、魔族の奴らめ。調子に乗りおって」
「ええ、その通りです」
「防衛、軍事力は元より、経済、文化面でも我らが遅れを取り始めておる」
「やはり、早期に討ち果たさねばなりません」
「しかし、あの魔王を筆頭とした戦力に勝つ見込みはあるのか? さらに今では都市を覆う防衛機構すら強固だ。第十位階魔法すら防ぐというぞ」
「私も見ました。魔族の新たな首都、王都『ダイキ』のあの結界。全世界に向けてデモンストレーションをして居ましたからね」
「ああ、魔王は出てきておらんかったが、旧魔王の2人が首都に向かって第十位階魔法を放ち、それが結界に届く前に消滅しておった」
「さらに第八位階以下の魔法は完全に結界で防いでおりましたね」
薄暗い密室で男と女が密会している。
しかし、話す内容は芳しくない。しばし、沈黙が場を支配した。
「……、正直手がないな」
「しかし、このままではジリ貧です」
「そうだな。我らは世界の中で孤立しつつある。インガイア王国め、魔族なんかと手を組みおって。おかげで魔族は敵対しない者にとっては有用な相手と世界が思い始めておる。他の国々も直に手を組み始めるだろう。
このままでは我らだけがその輪から外れることになりかねん」
「ええ、やはり早々に攻める他ありません」
「しかしだな、こちらは邪竜を討った勇者リューンを擁し、さらに召喚された勇者を3人抱えているとはいえ、魔族の戦力は比にならん。少し前までは伝説とも言われていた第十位階魔法を使える者が魔王以外に最低でも2人はいる。恐らく2人だけではあるまい」
「そうでしょうね。あの魔王がわざわざ見せたのです。それは見せた所で痛くも痒くもないからだと考えるのが妥当でしょう」
「それにだな、魔族は獣人族とも同盟を結んでおる。あそこには四神獣の獣王がおる。さらに噂に聞く獣王の御子は魔王に匹敵するというではないか。最悪の場合我らは四神獣相当の戦力を3体相手取らなければならない」
やはり芳しくは内容だ。
「……、海底神殿を落とすというのはいかがですか?」
「〜〜〜〜〜〜っ!!! 正気か? あそこには四神獣の海龍がいるのだぞ!?」
「ええ、ですから、海龍をこちらに取り込むのです。幸い海龍は群れていないようですし、勇者リューンを使えば可能性はあるはずです」
「……、なるほどな。向こうが四神獣並みの戦力を揃えているのであれば、こちらも四神獣を取り込もうというわけか」
「ええ」
女は怪しく微笑んだ。
男は口に手を当て、押し黙った。
そして、
「最早それ以外に策はないか」
「ええ、では早速その方向で話を詰めましょうか」
男と女の目は怪しく光っていた。
これはダイキのスローライフを阻む最大の障壁の引き金、その発端である。




