050 僕、首都を作る
さて、僕はダイン魔族連合王国の魔王です。今更ですが。
このダイン魔族連合王国は旧ダイン王国、旧ガーネット王国、旧サムラン王国が合併して出来た国です。
ですが、僕の執務室はついこの間まで旧ダイン王国の王城でした。
そう、新しい首都の建設が遅れていたからです。
新首都は不戦の草原に隣接する森を開拓して建設する予定でした。しかし、問題があったんです。
というのも、僕が邪竜と戦ったせいで不戦の草原の魔素が過大になった事で、隣接している森も普通に暮らすには魔素が多過ぎる状態だったわけ。
だから魔族に空間魔法を広めて、不戦の草原の魔素を空間魔法で除去しようとしました。
ただ、その後に僕がイェスタくんとバチバチやっちゃったせいで更に酷い状態になってしまったんですよね。
そのせいで、魔素の除去に目処が立たなくなってしまったのですよ。うん、イェスタくんのせいかな。
そこで、僕は考え方を変える事にしました。
むしろ、不戦の草原は新たな魔境として放って置く事にしました。魔素が高すぎて、レベルの低い者は不戦の草原を渡って来れないため、これをそのまま残す事にしました。
ではどうするか。
魔素を制限するような結界石を作って、首都を囲えば良い。という事です。
既に、都市を攻撃から守る結界石は開発が済んでいたので、僕はいけると踏んでいました。
しかし、思いの他苦戦したのですよ。
ここは僕が作った部署である特殊技術研究室の室長でハーフリングのハンさんにぶん投げていたんですが、中々成果が上がって来ませんでした。
パソコンの時は室長はやり過ぎていて、僕の想定の目標はずっと以前にクリアしていたのに報告がなかった事もあったので、これに関しては結構頻繁に見に行きました。
でも今回は本当に苦戦していました。
なので、ここ半年は僕もかなりの時間を特殊技術研究室で過ごしました。
わかりますか? 僕も仕事してるんですよ!
何が難しかったかというと、魔素を排除することだけなら割と簡単に出来たんですが、この世界の生活は魔素を基本に成り立っているので完全に魔素がないのもマズイのです。
魔素が無いと魔法も使えないし、魔道具も動きません。生活必需品もほとんどが魔素を必要とする魔道具で出来ている世界なので魔素が無いというのは成り立たないわけですよ。
だから、魔素を排除しつつも、ある程度は残さないといけない。そこが難しかったんですよ。
結局、携帯で開発した魔石を薄くして魔方陣を組んだ魔石を重ねて、何パターンも効果を付けることでクリアしました。
これも簡単じゃなかったですけどね。
良い塩梅に魔素を残すというのを都市レベルで実現させる。ましてやその外は膨大な魔素な訳ですし。
こればっかりは何度もトライアンドエラーを繰り返して、ようやくちょうど良い関係性を見付けたのです。これを魔素安定石と名付けました。
ただ、今の新首都周辺に合わせているため、他の場所で使うなどの汎用性は無いし、周辺の魔素濃度の変化に合わせて日々アップグレードは必要なので、まだまだ改良の余地はあります。
ですが、ともかく新首都建設の目処は立ったのです。
そして、旧3国それぞれからの街道にも改良した魔素安定石を置き、物資を運べるようにし、漸く新首都の建設が始まりました。
ここからは、それはもうとんでもないスピードで首都が作られて行きました。
国家最大の公共事業なわけなので、ゼネコン10社の共同企業体でしたが、各社ともそれはもう必死になってやってくれました。
なんなら、働きすぎなので休ませるための見張りが必要なほどでした。
斯くして、ダイン魔族連合王国の新たな首都は完成しました。
新首都の名前は全国民を対象とした公募で決める事にしたのですが、圧倒的多数で、王都『ダイキ』に決まりました。
いや、恥ずいんですけど。
3執事やアイルちゃんはさもそれが当たり前の結果であるように捉えています。
ちなみに防衛機構も完璧です。生前見た新世紀なんとかっていうアニメを参考に、戦時には都市ごと地面の下に収納してしまいます。そして、地下で旧3国に繋がっているので避難も完璧です。
ぶっちゃけ結界石だけで第八位階の魔法も防げるし、今ではスーパーコンピューターが瞬時に演算を行って、第十位階の魔法でも打ち消してしまうので、ぶっちゃけこの防衛機構は僕の趣味みたいなものです。
ただ、地球でいう大陸間弾道ミサイルみたいなものをいつ敵対しているヒト族やエルフ族が開発するかわからないので、備えは重要です。
同盟国のドワーフの国には実際あるらしいし。
こうして、僕の魔族領大改革は1つの節目を迎えました。
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「いや〜、こうして首都が出来上がると、僕も魔王として誇らしいね」
「はい。魔王様のお力を物語っています」
「そう言ってもらえるとうれしいよ、アイルちゃん」
「これでダイン魔族連合王国が益々発展していくことは間違いありません」
僕は新たな王城で行われた初の会議で感慨に耽っていた。
そして、僕は居住いを正して、みんなに向かって話し始めた。
「まずはみんな、ここまでよく頑張ってくれた。僕は君達のような配下を持てたことを誇らしく思う」
会議場は静かだ。だが、この僕の言葉に感極まったのか、すすり泣く音がそこかしこから響いた。
室長なんかは感極まったのか、号泣している。
最近は新聞やネットで茶化されることが多いから僕自身忘れがちだけど、ここにいるみんなは本当に僕を敬って仕えてくれている。
いや〜、僕の方が泣きそうだよ。
僕は必死に涙を我慢して続けた。
「この新首都建設は1つの終わりにして、大いなる始まりだ。これからも魔族領の発展に寄与してもらいたい」
ダンっ!!!!!
全員が右拳で机を叩くことにより、強い同意を示した。
ここにいる全員が僕と同じ目の色をしている。
けれど、その色は以前とは違って、希望に満ち溢れている。
「これからの皆の働きに期待する」
ダンっ!!!!!
「皆、魔族の誇りを示せ!!!!!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
以前とまったく同じ僕の言葉と、まったく同じみんなの反応。
だけど、それはまったく違う意味を帯びていた。
僕は胸が熱くなった。執務室に戻ったら、溢れる涙を抑えることが出来そうにない。
最初は魔王に祭り上げられて困惑していたけど、今ははっきりと思う。
僕は、魔王になって幸せだ。
これで、第5章完結です!
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