048 僕、今日も主様の暴走を止める
僕は、エンペラースライムのサンです。
主である魔王ダイキ様の直属の配下で、フレイムバードのコウ、ストームタイガーのシュンと共に3執事と呼ばれています。
これまでは、主様を3人で支えてきました。
しかしですよ、主様が魔王将棋を作られて以降、コウはこれにのめり込んでしまいました。アイルはもっと酷いけど。
それはまだいいですよ。今までは3執事の中でも最も主様に近い位置でサポートしていたので、少しくらい趣味と呼べるものが出来たのはむしろ喜ばしいことかなと思います。
でも最近は主様も紅茶からコーヒーに嗜好が移っているので、それをいいことに益々のめり込んでいます。コウ、限度はあると思うよ。
ここまでなら、まだシュンと僕の2人で何とか出来ていたのに、主様はパソコンを作って、インターネットと言うのを流行らせました。
結果はもうわかりますよね? はい。今度はシュンがのめり込みました。最近はパソコンの前から動きません。
僕は、主様と味の趣味も合っているので、最近は主様の食べ歩きや喫茶店にも一緒に付いて行ってます。それはいいんですけどね。僕も楽しいし。
問題はコウもシュンも、あんまり主様と一緒にいないのに、たまに一緒だと、新聞やインターネットに書かれている主様の記事を事あるごとに持ってくる事。
大抵は主様を褒めつつもどこかでディスってくるから、その度に主様が新聞社に乗り込もうとするんだよ。
コウもシュンも頭はいいはずなのにわざわざ主様を煽っておいて、それを止めるのは僕に任せるんだからタチが悪い。
こないだもこんな事がありました。
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「サン、コーラが受けないのは魔族の人達が炭酸に慣れてないからだと思うんだよね」
「そうかもしれないですね」
「だからさ、もっと取っつきやすい炭酸飲料を作ればいいんじゃないかな?」
そう言って主様は、サイダーなる物を作って売り出しました。
これはそこそこ売れました。
そんなある日コウが新聞を持ってきました。最近では僕が先回りして新聞はチェックしてヤバそうなのは主様まで回さないようにしていたのですが、この日はコウにすり抜けられました。
「どれどれ」
主様も記事を見た後は大抵怒って、新聞社に乗り込もうとするんだから見なきゃいいのに。
そう思いつつ僕も記事を覗き込みました。
『魔王様の道楽の最新作サイダー、若者に人気。一方コーラは益々罰ゲームとして定着か?』
コウの馬鹿! だから、何でこんな記事を主様に見せるんだよ! わざとやってんのか!?
「ちょっと行ってくる」
ほら来た!
「主様、落ち着きましょう! 新聞社に行っても面白く無いですって!」
「離せサン! 今度こそシメないと」
「とりあえず、喫茶店に行きましょう! ね?」
コウもシュンも止めるの手伝えよ! くっそ〜。後で見とけよ。
僕は無理矢理主様を喫茶店の前に転移させ、主様を喫茶店に押し込んだ。
以前、主様を喫茶店に連れて来て定休日だったことがあって以来、僕は毎朝今日は喫茶店が営業しているかチェックするのが日課になった。もしかしたら臨時休業とかもあるかもだし。
「マスタ〜、いつもの2つください」
「魔王様、サン様、いつもありがとうございます。すぐにご用意いたします」
主様はまだプリプリしているけど、いつもコーヒーを飲んだら落ち着くからもうちょっとだ。マスター、早く! 早く!
やっと出て来た。
「う〜ん、マスターのコーヒーはいつも美味しいね。ほっとするよ」
良かった。落ち着いた。ほっとしたのは僕ですよ。
「魔王様、当店でもサイダーをメニューに取り入れてみました。少しずつですが出ています」
「お、そうなんだ。うれしいね。ね、サン?」
「そうですね」
僕はなぜか背中に冷や汗をかいていた。僕の危険センサーがビンビンに反応している。
「それでマスター、コーラは置いてないの?」
これか!? こんな所にも地雷があったのか!?
「はい。置いておりますよ」
おっ!? 流石マスター! 主様もニコニコだ。あの2人にも爪の垢を煎じて飲ませたいよ。
僕の考えすぎだったかな?
カラン、カラン。
「いらっしゃいませ」
その時、若者が2人入って来た。
その若者はメニューを見て、
「お、サイダー置いてあるじゃん。じゃあ俺はサイダーで」
「何? それって美味しいの?」
「美味いよ。コーラみたいな炭酸なんだけど、こっちはマジで美味い」
「ほんとかよ〜。コーラってあれだろ? あのよく罰ゲームで飲まされるやつ。俺は無理だぞ」
「いいから飲んでみなって。コーラはマジで罰ゲームだけど、サイダーはいける」
「そこまで言うなら俺も飲んでみようかな。マスター、サイダー2つで」
地雷はここか〜!?
主様は少しプルプルしてるけど、何とか抑えてるみたいだ。
ほっ。良かった。
「どうぞ、サイダーです」
「お、来た来た」
若者がサイダーを飲みはじめました。
「うっめ〜」
「だろ? マジで美味いんだって」
「ほんとコーラとは全然違うな!」
「そうだよ。あれはヤバいからな」
「違いない」
「「はははははは」」
馬鹿!!!
主様がおもむろに席を立ちました。
「主様? どうされました?」
「ちょっと新聞社行ってくる」
やっぱり〜!!!
「主様、落ち着いて! そうだ、コーラ飲みましょ! コーラ!」
僕は主様に付き合ってコーラを何度も飲んでいたので、次第に美味しく感じるようになっていた。
「おいおい、あそこの客コーラ飲むらしいぞ」
「マジかよ。受ける」
受けるじゃねぇよ!!!
「主様!」
主様が飛び出しちゃったじゃないか!!!
「マスター、お会計ここに置きますね! 主様、待ってください!」
この後、主様を止めるのに滅茶苦茶苦労した。
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思い出しただけで疲れて来ました。主様、最近は僕が相手だからって結構容赦ないんですもん。
お、主様が戻って来られました。
「あ、サン。喫茶店行こう」
「はい。行きましょう、主様」
どうか今日は平穏に済みますように。
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