042 僕、コーラを作る
「いや〜、ハンバーガーってやっぱジャンクでいいよね〜」
「僕も大好きです」
3執事のサンがほっぺにケチャップを付けながら同意してくれた。
サンは3執事の中でも特に僕と味覚の趣味が合っているのだ。
「けど、やっぱハンバーガーにはコーラがほしいよね」
僕、コーラ飲んだ事ないんだけどね。
「主様、コーラって何ですか?」
「う〜ん、炭酸の入ったジュース何だけど、実際にはどんな味なんだろう?」
考え出すと、余計に飲んでみたくなった。
「そうだ!」
先日、僕直属の暗躍部隊になってもらったヒト族のブルータさんを呼んだ。もしかしたら、ヒト族の国にはコーラがあるんじゃないかと思ったのだ。
「ありました。ただ、香辛料が統制されていたので、非常に高価でしたね」
「そうなの!? 庶民の飲み物だったんだけどな〜」
「そうなのですね」
「うん。 ブルータさん、国に戻って持ってきてもらう事ってできる?」
「それは難しいかと。魔族領からアウム神教国に向かうルートは非常に検閲が厳しく、私は顔が割れておりますので」
「そっかぁ」
「それに、持ってくる途中で炭酸が抜けてしまいますので、コーラの本来の味わいには程遠くなってしまいます」
そうだよね。高価な飲み物だし、缶ジュースみたいにはなってないのかな。
「どうにか出来ないかなぁ?」
「でしたら、他のヒト族の国と国交を結んではいかがでしょうか? それでヒト族の者にアドバイスを求めてはいかがでしょうか?」
「っ!!!」
「邪竜討伐はアウム神教国とエルガート聖樹国によるものですので、それ以外であれば可能性はあるのでは」
「確かに!!!」
「特に、インガイア王国はアウム神教国と対立しておりますので、同盟も結びやすいかと」
「それだ!!!」
僕は、すぐにアイルちゃんとエリオさんを呼び付けた。
2人はすぐに来てくれた。
2人とも、次は何だ? という表情が隠しきれていない。
一応、僕王様なんだけど?
「ダイン魔族連合王国は、ヒト族のインガイア王国と同盟を結ぼうと思うんだ」
「「っ!!!」」
「僕は、前にヒト族とエルフ族に宣戦布告しちゃったけどさ、よく考えたら、アウム神教国とエルガート聖樹国しか侵略して来てないんだよね。だったら、その2国を追い込む意味でも、同盟を結ぶのは有効だと思うんだよね」
本当はコーラが飲みたいだけなんだけど。
「……、なるほど。今回は今までに増してとんでもない事ですが、確かに有効ですね」
「ヒト族をこないだ20人くらい仲間にしたけど、それじゃあ、ヒト族の知識とか技術は中々入ってこないし。国の発展のためにも有りだと思うんだよね」
「流石は魔王様。そのご慧眼は止まる事を知りませんね」
「じゃあお願いしていい?」
「「は!!!」」
こうして、歴史的な大事件である『人魔同盟』は、僕のコーラを発端として動き出したのだ。
僕はこの日から、ハンバーガーを食べて、早くコーラが飲みたいなぁと思いながら過ごした。
2週間後、インガイア王国から使者がやって来た。
ほんと、アイルちゃんとエリオさんって有能だよね。
なんと、その使者の中には噂されている第8勇者もいるらしい。
地球人が来てくれるなら、コーラの開発が捗るのでは? と僕は勝手にテンションを上げていた。
会談は、アイルちゃんとエリオさん、その部下が行ってくれた。
どうやら、アウム神教国と敵対関係にあるインガイア王国にとっては嬉しい話だったらしく、国交を結ぶ方向で話はまとまったみたい。
「よしっ! コーラに1歩近づいた!!!」
調印は後日となったけど、明日、インガイア王国の一向との謁見がある。
まともに謁見室を使うのは初めてかも。
翌日、インガイア王国の一向が謁見室に入ったのを確認した後、僕は玉座に向かった。
一向は、みんな跪いている。
僕は玉座に腰掛けて、声をかけた。
「面をあげよ」
僕は、ここで口調が変だと、またアイルちゃんからスパルタ学習が待っているので、結構緊張していた。
一向の顔を見る。勇者というのは、あの欧米人っぽい人かな。もしアメリカ人だったら本場だよ!?
「まずは、同盟を受けてもらい嬉しく思う。アウム神教国は別であるが、貴国とはお互い良い関係を築こうではないか」
一向は仰々しく礼をした。
とりあえず言うことは言ったので、僕は気になっていることは聞くことにした。
「して、勇者殿、貴殿はどこの生まれか?」
「は、ワシは地球のアメリカ合衆国の生まれにございます」
キタ〜〜〜〜〜!!!!!
「ほう、アメリカ、であるか。後ほど別室にて尋ねたい儀がある。これの後、来るが良い」
「「「「「っ!!!」」」」」
「は、畏まりましてございます」
一向は何事かと驚いていたけど、僕はコーラについて聞きたいだけなんだよね。
謁見はそんな感じで終わり、VIP用の応接室に入った。
アメリカ人勇者さんはもう入っている。
「いや〜、勇者さん。アメリカ人なんだよね? まぁ、これでも食べて話そう」
「っ!!!」
いきなり謁見時と違ってフレンドリーに話たからか、目を瞠いている。
僕は、コウにハンバーガーを配らせた。
「これは!? ハンバーガー!? なんと懐かしい」
「あれ? ヒト族の国にもあるんじゃないの?」
「いえ、そう聞いてはいるのですが、なにぶん、ワシは勇者と言う立場ですので、早々街にも行けず、食事も全て毒味を済ました後のものでありましたので」
「そっか、ここでは堪能していってよ。もちろん毒なんて入ってないし。それに、オフィシャルの場じゃなければ楽に話てくれていいよ。僕より大分年上だしね」
「そうか、では楽にさせてもらう。分別はあるつもりだが、実際、堅苦しくてかなわん」
「だよね。じゃあ食べよ」
この勇者さんはガブリと豪快にかぶりついた。
「あ〜、美味い。合衆国を思い出すようだ」
「それは良かった。それで、そうだ、名前は?」
「おう、ワシは元合衆国軍人、今はインガイア王国の勇者をしておる、ルーカス・ウィリアムズじゃ」
「僕はダイキ。よろしくね。
それで、ルーカスさんにお願いがあるんだ」
「なんじゃ?」
「コーラを作りたいんだけど、協力してくれない?」
「っ!!!」
ルーカスさんはそれはもう驚いている。
「何だと!? この世界でコーラが飲めるのか!?」
「ヒト族の国にあるはあるらしいんだけど、凄く高いんだって。僕は、ハンバーガーにセットで付けられるようにしたいんだよね」
「素晴らしい!!!」
やっぱり、アメリカ人ってコーラが好きなのかな?
僕は、ルーカスさんとガッチリ握手を交わした。
僕は、インガイア王国の一向に無理を言ってルーカスさんを借りることにした。その間、エリオさんにこの国を案内してもらっている。
僕は、喫茶店のマスターを呼び、ルーカスさんと3人でコーラ作りに没頭した。
僕は魔王の権力をフル活用してあらゆる香辛料を集めた。比較的魔族領では香辛料は一般的に出回っているけど、中には珍しいものもあるからね。
しかし、コーラ作りは難航した。炭酸を入れるのは、魔法で簡単に出来たけど、コーラの味を作るのが結構大変だった。地球では、そのメーカーの人ですらレシピを知っている人がほとんどいないらしいししょうがない。
何となくそれっぽいのは割りかしすぐ出来たけど、ルーカスのパッションはそれじゃ納得しなかった。
僕達3人が調理室に篭って1週間が過ぎた。そして、
「出来た!!!」
「うむ、これじゃ!!!」
「ようやく完成ですか。確かにこれは慣れるとやみつきになりそうな爽快感のある飲み物ですね」
結果、獣人族から仕入れている比較的安価に手に入る香辛料だけで出来た。だから、それなりに抑えた値段で提供出来そうだ。携帯の時の失敗を繰り返す僕ではないのだよ。
僕は、ルーカスさんに、缶に詰めたコーラを必ず輸出すると約束した。
インガイア王国の一向は少し予定より長く滞在することになったが、満足して帰ってくれた。エリオさんの接待も上々だったようだ。もちろんルーカスさんは満面の笑みで帰っていた。
その翌日。早速、僕はハンバーガー屋でコーラを売ることにした。
しかし、全然売れなかった。
そもそも、ビール以外に炭酸飲料がない世界で、コーラは早過ぎたようだ。
地球でも売り出した当初は不評だったという。だから、僕はそんなの気にしないし。
ただ、1月経っても一部の物好きにしか飲まれなかった。
「主様、コーラのことが新聞に載っています」
そんなある日、コウが新聞を持ってきた。
「どれどれ」
とんでもない見出しが踊っていた。
『魔王様の道楽、今回は失敗か? 多くの人が受け付けないコーラという謎の飲み物』
「……」
おい。ていうか、道楽て。
「コウ、お前はコーラ好きだよね?」
「すいません、主さま。私には」
「嘘でしょ!? シュンは?」
「申し訳ありません。私もどうにも」
「ほんとに!? 流石にサンは好きだよね?」
僕と趣味が合うサンならわかってくれるはず。僕は最後の望みをサンに託した。
「主様、僕もこれはダメです」
「なんでだよ〜!!!」
こうして、人魔同盟という偉業の裏で、コーラは僕の道楽初の失敗として記録に残されてしまった。
でも、絶対、ハンバーガー屋で売るのはやめないからな!!!
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