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22、ローズが助けを求めたのはルト王子

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「僕のローズに手を出すな」


 怒りを表すような低い声が、目を閉じる私の前から聞こえます。

 目を開けなくても誰なのか分かります。

 やはり、助けに来てくれたのですね。

 ルト様!


「お前、誰だよ? ローズの男か?」

「お前は知らなくてもいい。だってお前はここで死ぬんだからな」

「俺が死ぬだと? お前、人殺しにでもなるつもりかよ?」

「なんにでもなるさ。ローズを守れるならな」

「もしかしてお前もこれが欲しいのか?」


 叔父はお香を掌に乗せ見せます。

 それを見せては、ルト様が怒りますよ。


「これは、、、」

「ルト様、私は大丈夫ですから、どうか剣を下ろしてください」

「ルト様? あの王子様か」


 叔父は暗闇と片目が見えないからルト様だと気付かなかったようで、私が名前を呼んだことにより、知ったみたいです。


「大丈夫じゃないだろう? ローズのその足の傷も、こいつのせいだろう?」

「ルト様。私は大丈夫です。ルト様が悪魔になることはありません。どうか、落ち着いてください」


 騒ぎを聞いて、見張り達が集まってきます。

 見張り達は、叔父が準備をしていたお香を吸って幻想を見ていたようです。


 幻想から目覚めた見張り達は、ルト様に指示をされ、叔父をオーム国の牢屋へと連れて行きました。


 二人になった私達は何故か沈黙が続きます。


「気付いてくれてありがとうございます」

「えっ」

「私の香水です」

「それは、だって、ここまでずっとローズの香りだったからね。誰でも分かるよ」


 さっきまで低い声だったルト様はいつもの優しい声に戻っています。


「いいえ、ルト様だから分かったのですよ」

「本当に、ずっとローズの香りしかしなくて、ローズが近くにいるんじゃないかって錯覚が起きそうだったよ」

「そうなんですか?」


 私の大切な香水だったのに、襲われた時に瓶を割って、少しずつ道に落ちるようにして良かったです。


 それに、あのお花の蜜は香りが残るようですね。

 あのお花のおかげでもあります。


「あまりにも助けが遅いので、このブレスレットの玉を割って彼の目に液体を投げたんですよ」

「ローズは危険な状態でも頭脳が役に立つんだね?」

「そうですよ。ワザワザ自分の香りが残っている道を通ってルト様に会えることを願って逃げました」

「それって、ローズが逃げた方向がバレて逃げられないよね?」

「そうですね。みつかりましたけど、ちゃんとルト様が来てくださったので、私の頭脳の勝ちです」

「ローズの頭脳の勝ち? 運が良かっただけだよ。もし、僕が少しだけ遅かったら、、、」


 ルト様は怯えた表情で言います。


「私が、ルト様を待っているだけだったら、今頃どうなっていたのか分かりませんが、私が元来た道を戻ることでルト様が間に合ったのですよ?」

「ローズの頭脳の勝ちって言えるのかな?」

「私の勝ちです。あんな男に私が負けるわけがありません」

「ローズ」

「ルト様?」


 ルト様が柔らかく優しい眼差しで私を見ます。


「怖かったよね?」


 ルト様のその言葉に、私は泣いてしまいました。

 ルト様は私の頭を撫でながら、ずっと寄り添ってくれます。



「ローズも泣き止んだし、ここにいたらアイツのことを思い出すだろうし、帰ろうか?」

「あの、もう少しだけ一緒にいてくれませんか?」

「いいけど、僕はどこにも行かないよ?」

「もう少しだけ甘えても良いですか?」

「いいよ」


 そうルト様は言うと、大きく両手を広げます。

 私はその大きな胸に飛び込みます。

 温かくて落ち着きます。


「ルト様」


 私はルト様を見上げます。


「ルト様といれば私は幸せです」


 私がそう言うとルト様は驚き固まった後、顔が近付いてきます。

 私はゆっくりと目を閉じます。


「やっと見つけた」


 私達の唇が触れる前に、邪魔者が現れました。

 毎回邪魔をする、リト様です。


「リト、なんで今なんだよ? 良い所だから待ってくれる?」


 ルト様は続きをしようとします。

 そんなルト様の腕からスルッと抜けて、私はリト様の元へ行きます。


 だって、真っ赤になった顔を見られたくなかったのです。

 恥ずかしくてこの場所から逃げたかったのです。


 私、ルト様を受け入れようとしましたよね?

 メイドが王子様を好きになるなんて、あってはならないのです。


「えっ、ローズ? 続きは?」

「ルト様、帰りますよ」

「帰ってからするの?」

「しません」

「ローズ、僕のローズ、待ってよ」


 私達はこの関係で良いのです。

 このまま曖昧な関係で。



「ローズお姉様。大丈夫ですか? リズがローズお姉様を一人にしたからですよね? リズはもう、お嫁に行けません」

「えっ、リズ?」


 泣きながら言うリズ様の言葉を聞いて、リト様は困っています。


「リズ様、私は大丈夫ですよ。今日は疲れましたよね? 早く寝ましょうか?」

「そうですね。あっ、でも怪我をしているようですので、お風呂に入って綺麗に汚れを落としてから私が消毒しますね」

「そうですね。お言葉に甘えて、リズ様に消毒をお願いいたします」


 私は自分の部屋へ戻り、部屋についているお風呂に入ります。

 レイン国の水は綺麗でお風呂も気持ちいいです。


 ゆっくり湯船に入り、疲れを癒します。

 たくさん走ったので明日は筋肉痛になること間違いなしですね。


 お風呂から上がり、パジャマに着替えます。


「リズ様。お風呂から上がりました」

「うん。おかえり」


 リズ様じゃない。

 何故ルト様が?


「私がお風呂に入っている間もいました?」

「ん? ローズの鼻歌は聞こえたかな?」

「もう、聞かなかったことにしてください」

「良かった。機嫌が良さそうで」

「たくさん泣いたので」

「本当にローズは強いよ」

「それが取り柄です」


 元気に言う私の頭をルト様は撫でてくれました。


「消毒するよ。足を出して」

「はい」

「違うよここ」


 私はソファに座り、その場でパジャマを少し捲り上げると、ルト様は私の足をルト様の膝の上に置きます。


「えっ、そんなことは、、、」

「いいの。怪我人には拒否する権利はないよ。言うこと聞かないなら、さっきの続きをするよ?」

「えっと、消毒をお願いします」

「そこは続きをお願いしますがよかったなぁ」

「そんなことを言うのでしたら、自分で消毒はできますので」

「ダメ。僕がローズの傷を治すの。見える傷も見えない傷も」


 そうですね。

 ルト様は私の傷を治す名人なのかもしれませんね。


 私は大人しくルト様に消毒をされ、薬を塗られました。

 優しく、極力痛くないようにしてくれるルト様は本当に優しい方です。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

ルトはローズを一人にできないので、一緒に眠ろうと、あの手この手を使って傍にいようとしますが、一緒に眠るという選択肢はローズには無いようです。

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