21、ローズ、絶体絶命
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「ローズ、起きろ」
私は誰かに肩を蹴られて目を覚ましました。
目隠しをされているため、何も見えません。
「俺を覚えているか?」
男はそう言い、私の目隠しを外します。
「叔父様」
彼は私の両親を殺した父親の弟でした。
「覚えていたか。まぁいいさ。もうすぐ忘れるからな」
「何を言ってるの? 私を誘拐してどうするつもりなの?」
「年上には敬語を使えよガキが」
叔父はそう言うと見覚えのある、お香を出してきました。
「それって」
「これ? 王子様に使っていたお香だよ。俺があの魔術師に渡していたんだ」
「嘘。どうしてそんなことを?」
「金それだけだよ」
「お金? 私の両親の財産があったでしょう?」
「そんなのすぐになくなったんだよ」
「最低。私の両親を殺して財産まで奪ったのに」
「お前の両親を殺すつもりはなかったんだよ。あれは実験していただけだからな」
叔父は悪びれもなく、無表情で言う。
「ヒドイ。実の兄を実験台にするなんて」
「兄? アイツは年下をゴミとして扱う悪魔だよ」
「あなたもその悪魔と同じよ」
「俺はアイツとは違う。今は癒しを与える存在なんだからな」
「癒し?」
「俺のお香は幻想を見せ、全員が俺に感謝するんだ」
「もしかして、あなたがその薬物を作ったの?」
「そうだよ。王子様に使ったお香は、全てが青い花でできていたが、改良して今は楽しめる程度の濃度にしたんだ」
「もしかして、ルト様も実験台にしたの?」
「そうだよ。あの王子様は強かったね。死ななくて良かったよ」
ニヤニヤしながら笑う叔父に、私は怒りの感情しかわかないです。
「ここはどこなの? あなたはレイン国の人間じゃないのに」
「ここは国境だ。一応オーム国だよ」
ここは国境。
それなら何処かに見張りがいるはず。
「無駄だからね。叫んでも逃げても無駄」
「何故?」
「この場所の見張りは俺のお香で天国にでも旅行に行ってるかな?」
この男、頭が良いです。
私に逃げ道を作らないようにしています。
ここは物置小屋でしょうか?
隙間風が通ります。
風の通りがあるのなら、お香を焚かれても少しは時間は稼げるはずです。
「しかしお前、良い香りがするな? いい女になったし」
気持ち悪いことを言わないで。
「やめて。私はあなたの姪なのよ?」
「うるせぇガキだな。早く黙ってもらおうか」
叔父はお香に火をつけます。
青く光りながら少しずつお香は燃え、煙になって小屋の中に充満していきます。
極力息をしないようにしても、私の体が空気を欲っします。
ゆっくり、ゆっくりと私は夢の中へ落ちていきます。
「お母様。これをあげます」
「あらっ、嬉しいわ」
幼い頃の私と母が楽しそうに笑っています。
こんなことがあったのか、私には覚えがありません。
「おーい、飯は?」
「はいっ、少々お待ちくださいませ」
「子供なんかと遊ぶ前に、俺の世話を完璧にしろよ。お前みたいな身分の低い奴と結婚してやったんだからな」
ヒドイ父親。
やっぱり大嫌いです。
何も言わない母親も大嫌いです。
「ローズ、ごめんね。今日からは家畜小屋で寝てくれるかな?」
「どうしてですか?」
「煙がもくもくでローズは嫌だろうからね」
煙?
もくもく?
もしかして、母は私を守ってくれていたのですか?
「ローズ。ごめんね。こんな守り方しかできなくて。でもねローズ、あなたは必ず幸せになるから。願えば必ず幸せになるからね」
お母様は、そう言って目を閉じました。
思い出しました。
私、お母様を誤解してました。
お母様の言葉を信じて、私は幸せになると心に決めたのです。
すると小屋に激しい風が吹き、お香の香りが一気に外へ流れていきます。
そのおかげで、私は目を覚まします。
私が目を覚ますということは叔父も目を覚ましました。
ここからが勝負です。
私は手首にあるルト様からの贈り物のブレスレットの玉をちぎり、近くにあった石でその玉を割ります。
その玉から青い液体が流れ出てきます。
その液体を叔父の目に向けて投げます。
「痛っ」
叔父の目に青い液体は命中し、痛がっています。
私はその隙に小屋から逃げ出します。
誰か、誰か、お願い。
助けて。
後ろから叔父が追いかけてきます。
男の人の足の速さには勝てません。
何処か隠れる場所を探さなくては。
「きゃっ」
私は暗い中を走っていたので、小石に躓き、転んでしまいました。
膝から血が出てきました。
それでも逃げなければいけない。
私は足をひきずりながら逃げます。
そんな私に追い付き、叔父は私の髪を引っ張り、来た道を戻ります。
「片目が見えなくても、お前の匂いで分かるんだよ。さっきも言ったが、お前の匂いはすげぇ良い匂いだからな」
悔しいです。
こんな奴に捕まるなんて。
こんな奴に私の人生を壊されるなんて。
でも、私はまだ諦めないです。
お母様が言っていたのですから。
私は絶対に幸せになれると。
「足が痛くて歩けない」
私はいきなり座り込みます。
ここで時間を稼ぐのです。
必ず、助けに来てくれるはずだから。
「俺だって目が痛いんだよ」
「その目に何が入ったか分かっているの?」
「何って砂だろう?」
「違うわ。それは青いお花の毒よ」
「青い花の毒? 青い花に毒があるなんて聞いたことはないが?」
「そうでしょうね。だってあなたはレイン国の人間じゃないもの」
「はあ?」
「レイン国の王族だけが知っているのよ。ずっと継承されてきた毒」
「何で毒なんか王族に必要なんだよ?」
「それは国が滅びる時、王族の血も一緒に滅びるようにするためよ」
私は誰でも信じそうな嘘をつきます。
「嘘だね。毒なら俺はもう死んでいるさ」
「嘘なんかじゃないわ」
「こんな状況でも嘘をつけるお前に拍手でも贈りたいよ」
「嘘なんかじゃないわよ」
「何度も言うってことは嘘だってバレバレだって。本当にお前は昔から腹が立つ奴だよ」
そして叔父は私を叩こうと手を上げました。
私は目を閉じて痛みに耐える準備をします。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。
~次話予告~
ローズが助けを求めたのはルト。
そして助けに来てくれたのはもちろん、、、。




