20、青い花と虹の関係
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「ローズが言うなら仕方ないな」
ルト様はそう言うと着替えだします。
そして、私はルト様とイアン様を見送ります。
「ルト様、いってらっしゃいませ」
「いってきます」
ルト様は私の頭を撫でて行ってしまいました。
私は、自分の部屋へ戻り、髪飾りとして使ったお花を手に取り観察します。
昨日よりは元気がなくなったように見えます。
それなのに、良い香りは昨日と同じです。
長続きする香りは、お花から出てくる蜜からしているようなので、私はこのお花をすり潰すことにしました。
お気に入りのお花ですが、このお花はもしかすれば、何か役に立つのではと思ったのです。
「ごめんね。ありがとう」
私はそう言ってお花をすり潰します。
お花の蜜は無色透明でした。
このお花が光の当たり方で色んな色に見えていたのは、無色透明だったからなのでしょう。
これを小瓶に入れて、街へ出ます。
雑貨屋をみつけたので中へ入ります。
店主は魔女のような大きなお鼻のおばあさんでした。
おばあさんに、小瓶に入れたお花の蜜を加工品にして欲しいとお願いしました。
おばあさんは一度香りを嗅ぐと大きく頷き、加工品にしてくれると言ってくれました。
私は一度お城へ戻り、リズ様の部屋へ向かいます。
「リト様は何処にいらっしゃいますか?」
「えっ、お姉様?」
「私は、気付いておりますよ。オーム国の王様もです」
リズ様は部屋へ入れてくれました。
「リト様、お姉様にはお見通しですよ」
リズ様が言うと、家具の後ろからリト様が出てきました。
申し訳なさそうな顔をしています。
「ルト様が心配でも、勝手に行動するのはいけません。でも王様もリト様の気持ちを理解しておりましたよ」
「そう。ごめん」
「それでは、何か情報はありますか?」
「えっ、何?」
「ルト様のお手伝いに来たのですよね?」
「うん。まぁ、俺の情報は青い花のことだけ。青い花はこの国では薬物として使われているんだ」
「薬物ですか?」
「使い方を間違えれば死に至るかもしれないけれど、少しだけ使うのなら、幻想を見ることができるって聞いた」
「でも、その青い花は何処に咲いているのですか? 簡単に手に入るものなのですか?」
「一つだけ手がかりがあって、大きな滝の近くに咲いているって聞いたんだ」
大きな滝?
「大きな滝なら私、知っています」
リズ様が身をのりだし言います。
「リズ様、今から向かっても夕方には帰ってこれますか?」
「大丈夫ですよ」
「それなら行きましょう。リト様、リズ様」
そして私達三人で滝がある場所へ向かいます。
「あれ? あれは、、、」
私は見覚えのある、高台を遠くに見つけ言います。
「あそこに、ゴールドフラワーが咲いていますよね?」
リズ様がニコニコとしながら言います。
「やはり、そうですか。流石にレイン国に住んでいるのですから知っていますよね?」
「はい。その高台の向かい側に滝があります。この場所が、さっき言われていた場所だと思います」
一度来た時に、滝なんて見えなかった気がします。
こんなに大きな滝に気付かないなんてあるのでしょうか?
「あの高台からこの滝は見えないのです」
「えっ、どうしてですか?」
「この場所はずっと雨が降っています。雨で見えにくいのに、そこに蛍が飛び、光の屈折で見えなくなるのです」
リズ様に言われて、蛍がポツポツと飛んでいるのに気付きました。
とても綺麗です。
「この国は光が重要なのですね? ゴールドフラワーも光で色が変わって見えますから」
「そうですね。光はこの国では重宝されます。ほとんど晴れないこの国では太陽さえも貴重なのです」
「素敵です。そこを逆手に取れれば良いのですが」
私は考え込みます。
すると、向こう側の高台が晴れてきました。
そして虹が架かります。
美しいです。
この景色は本当に綺麗です。
「あっ、ローズあれを見ろよ」
リト様の指を差す方を見ると、青いお花がたくさん咲いています。
滝の激しいしぶきをあびて、青いお花が咲いています。
もう少し近くで見たいです。
すると、虹が少しずつ薄くなり始めます。
それと同時に青い花も薄い水色になっていきます。
虹と連動しているのでは?
そう思って虹を見ていると、虹は見えなくなり、消えてなくなってしまいました。
急いで青いお花を見ると、ありません。
さっきまでたくさんあった青いお花がなくなりました。
私は凝視しますが、やはりありません。
さっきまであったのに、青いお花がなくなることなんてあるのでしょうか?
まるでこの滝のように、、、。
私は気付いてしまいました。
青いお花はなくなっていないことに。
よく目を凝らしながら見ると、蛍が見えない何かにぶつかりました。
やはり、ありました。
そして、この青いお花の正体も分かりました。
これはレイン国を救える希望になるはずです。
暗くなりそうだったので、お城へ戻ることにしました。
ルト様も何か情報を持って帰っていたら良いのですが。
私は、リト様とリズ様に寄る所があると伝え、先に帰ってもらうことにしました。
雑貨屋さんへ寄り、店主のおばあさんからお花の蜜でできた加工品を受け取り帰ります。
早くルト様に見せたいです。
世界でたった一つの私の大切な物を。
「おいっ」
私は後ろから声をかけられ振り向きます。
そして口をハンカチで押さえられ、薬品の匂いがした後に意識が遠くなりました。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
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~次話予告~
ローズは誘拐されました。
犯人はローズが知っている人です。
ローズは絶体絶命。
助けは来るのでしょうか?




