温泉!
パーシバルと領地について話し合った。お互いのスケジュールを確認して、行く日程を決める。
「クラリッジ伯爵との面会を、領地に行く前に済ませた方が良さそうです」
私的には、貴族主義者が手放した領地は遠慮したい。だって、良い領地は残していると思うんだ。
「それは、何処でしょう?」
パーシバルが説明してくれた。父親のモラン伯爵に伝えて、調べてくれていたんだ。
「どうやら、モラン領の西隣ではないかと、父が言っていました」
地図を広げて、説明してくれた。ハープシャー領の北に大きなモラン伯爵領が広がっている。
その、西にやはりあのキャサリン様のウッドストック侯爵家。いや、税金を誤魔化し、追徴課税を全部は払えず、東半分の領地を物納して、ウッドストック伯爵家になったんだ。
「東半分と言っても、物納されたのは山間部になります。ただし、ペイシェンスが喜びそうな情報もありますよ」
「私が喜びそうな情報? 何かしら? パーシー様、早く教えて下さい!」
ちょっと意地悪そうに焦らすパーシバル。二人でふざけて、チョコを食べさせたりしながらいちゃつく。
「コホン!」とメアリーのわざとらしい咳払いで、いちゃつくのを止める。
「ここには、温泉が湧いているそうです。あまり活用されていませんし、農地も開発できていないから、そこを物納したのでしょう」
「温泉! 素敵だわ! 是非、視察しなくては!」
パーシバルが笑って私を抱きしめた。
「パティのそんなところが大好きです!」
そんなことを言われたら、いちゃいちゃタイムになっちゃうよ。
「温泉があれば、保養地にできますわ! それに、地熱を利用して、南方の作物も作れるかも?」
夢見る私をパーシバルが現実に引き下ろす。
「ペイシェンス、問題は領民です。確かに、ハープシャーやグレンジャーの領民も長年にわたり放置されていたので、子供たちも教育を受けていなかったり、人口も流出していましたが、あちらは……」
言うのも腹が立つのか、パーシバルは一旦、深呼吸して気持ちを整えた。
「そんなに酷い様子なのですか?」
「ええ、まだ詳しく調査はしていないのですが、若い女は少ないそうです」
「それは、領都とかに出たのでは? 私の領地でも、ハープシャーやグレンジャーに若い人が集まっているのが問題です。結婚したら、農村に戻るかもしれませんが……違うの?」
パーシバルが頭を横に振る。
「鄙びた農村を嫌がり、町に行くのはよくある事ですが、貴族主義者の領地では、農民が勝手に移動するのは禁止されています」
「そんなの酷い! 行動を規制するなんて!」
私が怒るのを、パーシバルが止める。
「それは、よくある事なのですよ。貴族主義者でなくても、領地を守る為に農家を保護しなくてはいけませんからね。ただし、それは次男以下や女の子には適用しないのが普通です」
農地を受け継ぐ子は、そこにいる! それは、理解できるけど、強要して良いの?
「ペイシェンス、貴女は王都育ちですから、理解しにくいでしょうが、農家には子沢山が多く、次男以下は出ていかざるを得ないのが実態です。領地内に働く場所が無ければ、冒険者になるか……道を踏み外して犯罪者になる者も多いのですよ」
厳しい社会だよね!
「その為には、領地に産業を増やさなくては!」
領主なのだから、領民が安心して暮らせるよう頑張ろう!
「あれ? では、若い女の人が少ないのは何故でしょう?」
パーシバルが言いにくそうに説明してくれた。
「年貢が納められない農家は、娘を売っていたみたいです」
思わず立ち上がって「酷い!」と怒鳴ってしまった。
「ペイシェンス! こんな事は間違っています! でも、その後始末を引き受ける必要は無いのですよ。他の領地を探しましょう」
パーシバルも立ち上がって抱きしめてくれた。
「いえ、パーシー様も私の気性はご存知でしょう。そして、それをクラリッジ伯爵を通して知らせたのは……」
リチャード王子は、クラリッジ伯爵を貴族主義者から引き離したいと言われていた。
それに、ローレンス王国の国民が酷い目に遭っているのを知って、そのままにはしておけない方だ。
それを、私に押し付けるのは感心しないけど、温泉というご褒美もある。
「流石、私のパティです! でも、視察して無理だと思ったら、手を引く勇気も持って下さい」
パーシバルは、リチャード王子の考えも読み取った上で、撤退しても良いと言ってくれた。
「ええ、私の領地もまだまだ開発途中ですから。無理だと思ったら、やめますわ!」
と言ったものの、温泉の魅力に負けそう! だって、温泉だよ! 入りたいじゃん!




