ペット創造の本当の力
前回までシリアスで頑張ってみましたが、やっぱり難しいですね。
もうちょっと砕いていこうかと。
前話までの文体やテイスト等も、もっと砕いて読みやすい様ちょいちょい改変していきますが、内容に変更は無いはずですのでお気になさらないでください。
さて。今回はペット創造の真実に迫ります。
ではお楽しみください。
無言の圧力というのをまさに体現したような笑顔。
断る余地はなさそうだ。
まぁそれに、強くなりたいと願ったばかりなんだ。
魔王の魂と一緒に旅したら、俺も変われるかもしれない。
……よし。
「わかった。やるよ」
俺の言葉に満足げに頷く精霊。
その姿はなんだか演技がかっていて、ちょっと腹が立つ。
「受け入れてもらえて安心しました。もし受け入れてもらえなければ、すぐに別の異世界人を召喚しないといけなくなりますしね」
さらりと怖いことを言う。
「それって……断ってたら俺、殺されてたってこと?」
ニッコリと笑って答えない精霊。
くっそぉ、腹立つなー。
「さてと。では時間もありませんし、そちらから何か質問でもあれば手短にどうぞ。簡潔にお願いしますね」
口調は丁寧だが、急に対応が雑になってきた精霊。
これまで対応が丁寧だったのは、魔王役を引き受けさせるためだったようだ。
なんて打算的な精霊なんだ。
っと。そんなこと考えている場合じゃないな。
時間が無いのは本当そうだし。
えーっと、まずは……
「あそうだ。この村のドクっていう銀狼族を旅に出したのは何故なのかな? ドクが俺を連れてくることも分かっていたみたいだし」
とりあえず、ドクに頼まれたことを聞いておこう。
「それは彼が魔王を討伐した戦士の末裔で、あなたが魔王の魂をもった存在だからです。戦士と魔王の関係については長くなってしまうので割愛しますが、これらは魂のレベルで惹かれ合っているのですよ。ドクの魂は、当時魔王を討伐した戦士の魂が転生したもの。ですからあなたたちが惹かれ合い、出会い、旅を共にしたことは必然なんです」
おっふ。
またしても唐突なネタバレ。
ドクの魂は当時の戦士のそれだったようだ。
魔王と戦士の関係については、またほかの精霊にでも聞けばいいかな。
というか、俺とドクって惹かれ合ってるのかー。
出来れば可愛い女の子が良かったけど……。
まぁこのことをドクに伝えた時、彼がどんな顔をするかそれはそれで楽しみだからいいか。
でもなんで態々本人に何も伝えず旅に出したしたんだろう。
「魂の反応というのは、普段自分ではあまり意識出来ないものなのです。もし私たちが変に情報を与えてしまうと、魂の反応を阻害してしまう恐れがあったのですよ」
なるほど。
精霊にも一応考えはあったのか。
あとは……あそうだ。
「さっき魔王と俺の魂が反応してスキルが生まれるって言ってたけど、俺の持つ二つのスキルもそうなのかな」
【ペット創造】に【人見知り】。
これが魔王と繋がるようにはちょっと思えないんだけれど。
しかし精霊は俺の質問を肯定して返す。
「その通りです。あなたの持つ【人見知り】に関しては……面白そうなので今は教えませんが、彼に由来するもので間違いありません。【ペット創造】に関してもそうです。少し変化してはいるようですが……」
おい、面白そうってなんだよ。
俺が魔王を引き受けたからって砕けすぎだろ精霊。
威厳はどうした威厳は。
しかしそんな俺の想いも通じず、精霊は淡々と続ける。
「魔王にもいくつか能力はありましたが、その中でも特筆すべきは人の魂を取り込む能力だというのはお伝えしましたね」
あぁ確か、魔王は人の魂を取り込んで強くなったって言ってたな。
魂が魔力の源って言うんなら、魂を取り込めばそれだけ簡単に強くなれる。
理屈は分かるけど、ちょっと正気の沙汰とは思えないなぁ。
というか、俺の中にその魔王の魂がある訳だけれど、俺大丈夫なのかな。
「あなたが心配するようなことはありません。魂の浄化により、その負の能力は大分落ち着きを見せています。魂取り込みの能力自体も、魔力を周囲から吸収する程度に落ち着いていますよ」
なるほど、俺の魔力の異常な吸収速度もそのせいなのか。
まぁ実害が無いならいいか。
「それに魔王の膨れ上がった魂も、今は赤子の様に真っ新で無垢な状態です。今はまだ封印が為されていて実感はないでしょうが、封印が解除されていってもあまり心配するようなことは無いでしょう」
ふーん、よくわからないけど、精霊が言うのならそうなのだろう。
「ではスキルの話に戻ります。魔王の特性として、魂取り込みの他にも彼は特異的なスキルを所持していました。それが【眷属創造】というスキルなのです」
「眷属創造?」
「はい。魔王の分身とも言われる魔石を持たない魔法生物の創造。それが眷属創造スキルです」
おぉ、なんかカッコいい。
「いでよ! 我眷属よ!!」とか言ってみたい。
でもそれが、俺のペット創造と何か関係しているんだろうか。
「あなたのペット創造のスキル。これは元々眷属創造スキルだったものが転じて生じたスキルです。転じたといっても、あなたに分かりやすいようにとその表記が変わっただけですけれどね」
ん? 俺に分かりやすいように表記が変わった?
【眷属】から【ペットボトル】に?
……いや違う。
眷属からペットに変わったのか。
……。
もしかして、ペットってペットボトルのペットじゃなくて、犬や猫なんかのペットって意味だったのか?
それってつまり――
「だじゃれかよ!!」
なんてこった。
余りのしょうも無さに、思わず叫んでしまった。
というか、なんで態々表記変えてんだよ。
余計分かりにくくなってるじゃねぇか。
俺にだって眷属って意味くらいわかるわ。
いやでも、元々ペット違いで勘違いをしてしまったのは俺か……。
くそっ。普段ペットボトルに囲まれて生活していたツケが、こんな形で返ってくるとは!
しかしそこで俺は気づく。
「もしかして、俺も眷属創造出来ちゃうってこと?」
そうだよ。
俺の中には封印中とは言え魔王の魂が入っているんだ。
魔王に出来たんならきっと俺にも!
しかし精霊は無情に答えた。
「無理ですね。この眷属創造は1属性に対して1種族のみしか創造出来ません。あなたのペット創造は、すでにペットボトルという種族が無属性に対して対応しています。それ以外の眷属は今のあなたには無理です」
なんてこった。
俺はすでに眷属創造を行っていたそうな。
ペットボトルという新種族を。
……はぁ。
確かにそう考えると、納得できる点もいくつかある。
何故、俺のペットボトルには魔力を保持する能力があるのか。
何故、俺のペットボトルには魔力の方向付けの自由が利くのか。
何故、俺のペットボトルは傷が入るとそこから魔力が抜けて最後はただのペットボトルになってしまうのか。
まさか、ペットボトルを魔法生物として創造していたとは思わなかったよ。
でもそれにしては生物らしさが皆無だけれど、その辺はどうなんだろう。
「それはあなたが、ペットボトル達を道具としてしか創造していないからです。生物を創造する際大切なのは、新たに生み出されるものにどうあって欲しいかと願う術者の想い。つまりはあなた次第なんですよ」
何ということでしょう。
つまり俺が動くペットボトルを願って創造すれば、ちゃんと生きている様な生物になるってことか。
自我を持ち、動き回るペットボトルかー。
……ディ〇ニーの世界だな。
とりあえず後でアンナ達の前でやってみよう。
「それから、あなたはペットボトルにあれこれと能力を付けているみたいですが、アレでは本来の力は発揮できていません。物にはそれに合った特性というものがあるでしょう? 先ずはそこを大切にしてあげなければ。今あなたと共にいる、その子の様に」
俺があれこれ考えていると、精霊から更なるアドバイスが。
ふむ、ペットボトルに合った特性……か。
……ん? その子の様に?
精霊の視線は、俺の外套をに送られている。
服をめくると、そこにはここまで一緒に付いて来てくれたスライム君の姿が。
魔石を持たない魔法生物。
魔王から生み出された眷属。
そしてそのものにあった特性。
……もしかして。
「お前も魔王の眷属なのか?」
俺の問いに、ブルンと誇らしげに震えるスライム君。
そっか。
魔王が消えても、その眷属たちはまだこの世界に残っていたんだな。
こいつが試練について来れたのも、俺が魔王の魂を持っていて、こいつがその眷属だったからなのかもしれない。
でも言われてみればこれも納得だよなー。
だって人に都合よすぎだろ、スライムの能力。
なんだよゴミだけ処理する生物って。
きっと魔王もゴミ処理に困ってこいつらを創造したに違いない。
それに、布の隙間から零れるってのも変な話だもんな。
魔石どこ行ったって話だよ。
あれも、こいつらは元々魔石を持っていなかったってだけの話だったんだ。
色々納得してすっきりな俺。
そんな俺を見てもう質問はないと判断したのか、精霊は最後の話へと進んでいく。
「では最後に、私が封印している魔王の欠片をあなたに返すと致しましょう」
そうだった。
魔王の欠片をどうにかするのが今回最大の目的だったんだ。
さて、魔王の欠片とは一体どんなものなんでしょう。
ペット創造の真の力。
ちょっと無理やりな感もありますが、こういったオチでした。
この部分は最初から考えていた落ちの1つではありますが、いかがでしたでしょうか。
基本はこんな感じでいくつもりですが、若干方向性迷走中ですので、よかったら感想をいただけるとありがたいです。




