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カーバンクルと冒険者酒場  作者: がけどー
6/8

お待たせしましたサービス回です

 エリンが泣き止むまで、抱きしめられていた俺は、窒息死の恐怖に怯えていた。時が経つほどに、エリンの腕に力が込められていくのだ。そして、柔らかな二つの膨らみで、外気との接触を断たれ、今に至る。ようやく、手を放してくれたエリンは、俺の青褪めた顔を見て、「あはは……」と、苦笑を浮かべる。


 エリンも落ち着いたところで、俺はまるで捕ったネズミを自慢する猫のように、


「きゅい!」


 金貨が入った宝箱を取り出した。ドン、と音が鳴り響き、その重量を感じさせた。


「なにこれ宝箱?」


 エリンは不思議そうに宝箱をしげしげと見つめる。「開けていい?」と俺に確認し、宝箱を開く。


「えっ!? 金貨!?」

「きゅい!」


 驚くのも無理はない。銀貨や銅貨じゃないのだ。銀貨は銅貨の一〇〇倍、金貨は銀貨の一〇〇倍だ。基本的な冒険者の稼ぎが、ひと月に銀貨三〇〇枚くらいだろうか。金貨では三枚だ。そして、宝箱にはちらっと見ただけでも、金貨が一〇〇〇枚くらいありそうだった。


「ねぇアース……これどうしたの? 私のために盗んできたの?」


 この質問は予想していた。俺が三十層の階層守護者を倒したとは、伝えることができない。一瞬、ドラゴンに擬態して、説明しようかと思ったが、酒場が壊れそうだし、騒ぎにもなるからやめとこう。


「きゅーい! きゅーい!」


 精一杯の否定を伝える。エリンは顔を伏せ、なにか思案するように黙ってしまった。そして、


「もしかして、迷宮(ダンジョン)に行ったの!?」


 やはり、エリンは地頭が優れているのだろう。俺が金貨を窃盗する以外の方法を探し、辿り着いた。


「そっかそうなんだ……私の借金を返すために行ったの?」

「きゅい」

「…………」


 エリンの瞳から、また大粒の涙が零れる。そして、優しく抱擁された。


「ありがとう……ごめんね……もう少しだけこうさせて? アースのおかげで、このお店を守れるのが本当に嬉しいの」

「きゅい……」


 お店を守るという言葉が引っ掛かったが、借金の取り立てがこの店なのだろうか? しかし、金貨を用意できた今、なにも問題はない。


「でも、もう一人で行かないでね? 私、もう迷宮で大切な人が死んじゃうのは嫌なの」

 

 両親を亡くしたトラウマがあるのだろう。俺は頷くと、エリンは花が咲いたように微笑んだ。



 暫く、そのままでいると、エリンは俺の身体が汚れていることに、今になって気づき、抱きしめていた自身の寝間着に目をやった。


「もうアースってばこんなに汚れちゃって……お風呂入らなきゃ」

「!?」


 もしかして、またエリンの裸が!?


「えっち」


 じとー、とした瞳で呆れたような白眼で見られてしまった。


「ってカーバンクルになに言ってるんだろうね私」

「きゅい」


 全くだ。動物?相手に自意識過剰なんじゃないだろうか。などと考察していると、


「きゅいいいいいいい」


 モフモフの尻尾を掴まれ、逆さに吊り上げられた。そのまま、左右に揺らされる。幻獣虐待だ!


「反省した?」

「きゅい」


 昨日と同じ流れだった。


 脱衣所に入り、エリンが寝間着を脱ぎ捨てていく。俺は元々裸なので、その間はやることもなく、後ろを向いていた。今のエリンを拝見したら殺されると、獣の本能が叫んでいた。


「おいでアース、洗うよー」


 ひょいっ、と抱かれた俺は、エリンの感触を楽しみつつ、身を任せる。


「カーバンクルなのに、人の身体に興味あるの?」

「きゅーい」


 全くないよ!と返事した。


「うそつき」

「きゅい?」


 エリンは俺の四肢に付着した泡を洗い流すと、俺を持ち上げて、浴槽に一緒に入った。そのまま、くるっと反転させる。俺がエリンを見てしまう形だ。


「金貨ありがと、アース。こんなので……良かったら……好きなだけ……見て……いいよ?」


 エリンは顔を真っ赤にし、消え入るような声で言う。獣相手でも、そんな事を口にするのは恥ずかしかったのだろう。エリンが考え付く、精一杯の感謝の気持ちなのだろう。


「きゅい」


 今の俺はカーバンクルだ。男としての尊厳はない。遠慮なく見つめた。


 エリンの身体は触れれば折れそうなほど華奢だった。しかし、堂々と主張する圧倒的な膨らみがあった。エリンの裸体で理性が飛んだ俺は、つい手を伸ばし、


「あっ……」


 エリンの禁断の果実に触れる。しまった、やりすぎたかと遅まきながら気づく。無意識だったのだ。しかし――


「見るのは良いって言ったけど…………おっぱい……だけだからね? アースのえっち……」


 と、許しが出た俺は、触ることを止め、顔を埋めることにした。


「んっ……」


 人間だった頃なら、絶対にしなかったであろう。尊厳というものは獣には無いのだと、俺は思い知った。


「アース……ねぇ……もういいでしょ?」


 そして、柔らかい感触に浸っていた俺は、徐々に意識が遠のいていき、動けなくなる。おっぱいは湯船に浸かっていたのだ。


「アースってば……もう……あれっ? 溺れてる!?」


 慌てたような声が聞こえたが、俺は幸せなままだった。

 紳士の皆さまお待たせしました。そしてお詫び申し上げます。シリアスが多いため、捻じ込みました。そして、暫くサービス回は来ないでしょう。

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