94, 聖霊様――シオン……? ううん、サトシ、よね?
「……。あなたが……サトシ、よね?」
ついに――わたしたちは、辿り着いた。この空間に。
「そなたが、そうかそうか。」
「……。なによ。知っているくせに。女神ネゲートは、最高の駒だったでしょう?」
……ええ。言ってやったわ。
「ちょっと……、ネゲート。わかっている、よね?」
「ええ、わかっているわよ。」
「それなら……だよ。」
数学の女神が、慌てたように、頭を下げる仕草を促してきた。
「そうね……。でもね、シィーなんか、飲んできたのよ。信じられる?」
「……。ちょっと、今ここでそれを言うのかしら? ほら、全然酔ってないし。あんなの、飲んだうちに入らないわ。」
「あ、あの……。聖霊シオン様。その……まだ、大精霊ネゲートは……。」
……もう。
完全に、「怠惰」とでも言いたげな顔だったわ。そんな話をしていたのね。
「まあよい。余の元まで駆けつけてきたということは……どうやら、本当に解けたようだな。」
「解けた? それは……何かしら?」
「……。」
……そう。クリプト……仮想通貨が、数学的に何を証明したのか。そのこと、よね。
「ええ。そこに……わたしが封じられていた理由まで組み込まれていたみたいね。そのおかげで、その証明内容に辿り着いた瞬間――色々と思い出してきたってことよ。もちろん、ミラーアリスによるスコフィールドの解読。その後押しも大きかったわ。」
「……。そなたは、創造神から選ばれた自覚は、あるのか?」
「ええ、あるわ。だって、女神だもの。余裕がある頃は、創造神様への祈りだって欠かさなかったわ。これで満足かしら?」
「……。ネゲートは、本当に素直じゃないね。でも、それがネゲートだよ。どうやら……怠惰ではないようで、安心したよ。」
安堵したような表情を浮かべる、数学の女神――パランティーリ。
「ちゃんと理解もしているわ。」
わたしは、静かに告げた。
「それは……。クリプトが示した数学的証明内容。その結果だけを『享受』する。詳細には、絶対に触れない。この平和を保ちたいのなら……絶対に、触れてはならない。」
……そう。重要なのは、結果だけ。
「ゼロ知識証明みたいに――最小限の情報だけで、この課題を成立させた。それが、クリプトだった。」
そして――。
「これで、良いのよね?」
聖霊シオンは――静かに、うなずいた。
……そうよね。まず、一番大事なのは――そこ。
そうよね……サトシ。




