78, 狂ってしまった ―― そう囁かれるようになったわ。それでも、数学の女神は余裕の笑みを浮かべていたわ。
シィーらしくない、その言葉に……また、あのときの情景が蘇ってきたのよ。
燃料の見通しが立たない状況の中で……。ついに、ふたりの証人と、わたしは――狂ってしまったのではないか。そんな囁きが、広がっていったわ。
でも……わたしは、すぐに受け入れていた。だって……。
それでも、わたしのすぐ傍にいた数学の女神は――余裕の笑みを浮かべていたのよ。
そう……何を叫ぼうと、何が起ころうと。秩序の再構築の勝負は――始まる前から決まっていたわ。
彼女は、そう言い切っていたのだから……。
「なんだか、騒がしいよね。こちらは、こんなにも余裕なのに……周りが騒いでいるだけだよね?」
「……。」
「どうしたの、ネゲート? 何か気になることでもあるの?」
「……、だって……。」
「そういうところ、ネゲートは弱いよね。でも……それでもネゲートにしか、この状況は打開できないよ。それだけ重要な使命を背負っているんだよ。そこは、期待しているよ。」
「ちょっと……それって……。」
「そうだよ。始まる前から、勝負なんて決まっているよ。それは、何度も話しているよ。だから……しっかり決めて、頑張ろうよ。」
「……、そうね。」
どのみち、わたしには何もできない。そんなもどかしさの中で……わたしは、成り行きに身を任せるようになっていたわ。それは……あのときの自分を思い出していたから。観測者だった、あの頃のわたしを。
観測者……。聞こえはいいけれど……それって……。その頃、わたしは女神ではなく、魔女と呼ばれていたわ。
ううん。どのみち、悩んでも何も変わらない。
「そうそう。燃料が心配なのはわかるけど……どうやら市場も気づき始めているよ。この……計画に、ね。」
「……。わたしは、できることをする。それで……いいのよね?」
「うん、それでいいよ。みんなで幸せになるために、頑張ろうよ。」
……。そこには、妙に納得してしまう、わたしがいたわ。
そして――実際に、今は……平和よ。
そうね……。クリプトは、いったい何を数学的に証明したのか。まだ……その答えは見えてこないわ。
ううん……。すでに、量子オラクルのように目の前に存在しているのに……観測できない。
その、もどかしさこそが――もしかしたら……その「解」なのかしら。




