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デジタルゴールド ―― 女神に接続された暗号  作者: パランティーリ
第十二章:SHA-256に浮かぶ刻印 ―― デジタルゴールドの役割
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75, デジタルゴールド ―― 全能の存在は、自分でも持ち上げられないほど重い石を作れるか? この命題に「はい」と答えられる唯一の存在がデジタルゴールドだよ。解なんて、はじめから決まっているよ。

 SegWitとAggWit――ふたりの証人。この頃になると、時間的制約の面から、ふたりの証人は不利だ――そんな報道も、頻繁に見かけるようになっていたわ。


 でも……それは違う。SHA-256に刻まれていたのは、「明確な期間」。その期間から考えれば……その時点でも、まだ五か月以上は残っていたわ。そして――これは計画よ。


 SHA-256に刻まれた時点で、はるか以前から、その期間は確定していた。ならば……その準備もまた、その期間を十分にまかなえるだけ、整えられていたはずよ。


 実際、SegWitはこうも告げていたわ。このままなら、相手は干上がる――と。


 つまり、この期間設定すら……相手の力量を見極めたうえで用意されていた可能性があった。ううん……それ以前に、数学の女神は言っていた。はじめから、勝負なんて決まっていた――と。


 そんなときだったわ。そう……数学の女神が、またひとつ、簡単には理解できない概念を持ち出してきたのよ。


 それは、デジタルゴールド――。


「そうそう、ネゲート。全能の存在は、自分でも持ち上げられないほど重い石を作れるか? これ、知ってる? どうかな?」


 ……それは、全能のパラドックスよ。「はい」と答えれば、持ち上げられない石が存在してしまう。「いいえ」と答えれば、作れないことになる。


 どちらにしても、全能性が否定される。そんな矛盾を突いた論理よ。


「それは……矛盾が出るから、答えられないわよ?」

「つまり、全能は否定されたのかな?」

「……、えっ?」

「実はね、解があるんだよ。それでね、それこそが千年王国にもつながるんだよ。」


 ……解が、あるの? ええ、わたしも興味を引かれたわ。これに解があるなんて……いったい、なに?


「この命題に『はい』と答えられる唯一の存在が、デジタルゴールドだよ。解なんて、はじめから決まっているよ。」

「ちょっと……それって……。」

「どうしたの、ネゲート? 単純だよ。価値を、そのまま重みに換算するだけだよ。」

「……。重み……が、価値ってことね?」

「そうだよ。それで、デジタルゴールドは『情報として記憶』できる。だから、もともと全能でも持ち上げられないんだよ。それでも……なぜか、どんどん価値が積み上がって、重くなっていく。ねえ、矛盾はないよ。」

「……。」

「ところが、元素のゴールドなら……重くなるほど価値はあるよ。でもその時点で、全能性に矛盾が生じるよ。それでは、千年王国で使えない。そうだよね。」

「つまり、それって……それって……。」

「そうだよ。そこで知恵を絞り、『デジタルゴールド』が考え出されたよ。全能でも矛盾しない。そうそう……計画に、ぴったりだよ。」

「……。」


 ……。デジタルゴールド――。


 当時は、そんな概念……いくつも出ては消えていって、もう意識の外に追いやられていた頃だったわ。それが……数学の女神の口から、改めて語られるなんて。


 意外だったからこそ――よく憶えているのよ。


「これがね、未完成なこの地を任された『0から1への繁栄』なんだよ。異教の者たちには、決して解けない命題。つまり、1から1では……全能とは呼べない。そうだよね。」


 クリプトと、さらに、デジタルゴールド。これもまた、必然ってことよね……。

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