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デジタルゴールド ―― 女神に接続された暗号  作者: パランティーリ
第十五章:暗号通貨 サトシ・ナカモトの正体
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112, 「嘘」は使わない。パランティーリに映るのは真実のみだよ。だから騙される……。

 そして――フィーが、パランティーリへ祈る様子が映し出された。


 何かへ深く集中している、その姿……いったい、何が起きるのかしら。


 でも――なぜか、ずっと見ていられる。そんな、不思議な真実だった。


「……。次は、その場面だね。」

「……。」


 わたしは、静かに数学の女神を見つめた。


「本当は、このこと……話したくなかった。そうよね?」

「そ、それは……、だよ。」

「ううん。ちゃんと打ち明けてもらって、わたしとしても納得しているから。」


 ……。


「もう、隠す必要なんてないわ。」

「……。」

「それよりも――。」


 わたしは、小さく息を吐いた。


「あんたまで、あんな酷い目に遭わされていたなんて……。わたしが原因だったかもしれないと思うと、それはそれで……。」


 すると――数学の女神は、少しだけ困ったように笑った。


「……。やっぱりネゲートだね。」


 その声は、どこか安心したようでもあった。


「こんな映像を見せられても――わたしのことを心配してくれるなんて……。」


 ……。その瞬間。数学の女神は、また「いつもの調子」へ戻っていた。


 ……。わたしは、こうしてここにいる。たしかに、内容は衝撃的だった。


 でも――責め立てる理由なんて、どこにもなかった。


 だって――理由は、これから明らかになる。


 ……そういう流れだったから。


 パランティーリ。本当に、不思議な存在。


 そして――これを参考にしたのが、サトシ。


 ……そういうことなのよね。


 サトシは――きっと、パランティーリをとても気に入っていたはず。


 だから――参考にした。……そういうことだった。


 ところが――数学の女神は、核心となる性質を語り始めた。


「『嘘』は使わない。」


 ……。


「パランティーリに映るのは、『真実』だけだよ。」


 その声は、静かだった。


「だから――騙される。」


 ……。


「それこそが、パランティーリ最大の問題点だったんだよ。」


 ……。


「たとえ全部が真実でも――その『断片の映し方』次第で、それが本当の意味になるとは限らないんだよ。」

「……。真実だから、騙される……。」


 わたしは、その言葉を解釈した。


「つまり――。」


 ……。


「真実であっても、『情報の断片だけ』を開示するという手法というのは……。」


 そして――。


「使い方次第では、極めて悪質になり得る……そういうことよね。」

「そういうことだよ。」


 数学の女神は、静かに頷いた。


「真実の断片を見せる。そんな断片であっても、相手は『真実だ』と認識するんだよ。」


 ……。


「その影響で、その解釈に従って、自ら動き始めてしまうんだよ。」


 ……。


「つまり――。」


 数学の女神の目が、わずかに細くなる。


「この性質をうまく利用すれば――自分の望む方向へ、歴史そのものを誘導できるんだよ。」


 ……。


「真実の断片を並べるだけで――世界線すら、自在に動かせるんだよ。」

「……。」


 わたしは、静かに息を呑んだ。


「それについては……本当に厄介な仕組みよね。」

「……、そうだね。」


 数学の女神は、小さく頷いた。


「そこでどうしても、『解釈が変わらない器』が必要になったんだよ。」


 ……。


「どんな真実の断片をぶつけられても、中身そのものが変化しない器のことだよ。」


 そして――。


「そこで、次の映像だよ。」


 ……。


 解釈が変わらない器。どんな真実の断片をぶつけられても――その本質が変わらない存在。


 ……。


 ハッシュ関数。


 あるいは――そこへ浮かび上がる、刻印。


 ……そういうこと、なのかしら。


 そして――次の映像。


 ……。


 そこで、わたしは――また驚いた。


 だって――そこには、なぜか、「あいつ」がいた。


 ……どこから現れたのよ。フィーと、何かを話している。


 でも――これも、真実。


 そして――パランティーリへ映し出されている以上、これもまた――「重要な出来事」だった。


 ……そういうことよね。

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