108, 農園を貸し出した対価として渡されるのは――「自給自足で生き延びられる最低限の食糧だけ」なんだよ。
映し出された、次の場面。ええ……わたしは、思わず目を背けたわ。
そこに映し出されていたのは――管理された分散化。
そんな概念だった。……これって。
「このように、断片的な真実を映し出す。それが……パランティーリなんだよ。」
数学の女神は、静かにそう告げた。
「つまり、『管理された分散化』も、真実だったんだよ。もちろん――そんな状況へ陥らないように、反対する者たちがいたんだよ。」
「……これは、本当に……?」
「本当だよ。」
その返答に、迷いは一切なかった。
「安価な労働力との相性が抜群だからね。『管理された分散化こそ理想だ』って、本気で夢中になっていた勢力が存在したんだよ。」
「……。」
わたしは、言葉を失った。でも……それは知っているわ。
「よく考えるよね。ほら、映像の続きを見て。」
……。
「どうやら、『見えない鎖』で繋がれているみたいだよ。」
その言葉に、背筋が冷えた。
「でも――繋がれている側は、それに気づいていない。」
……。
「喜びながら、殺鼠剤を口にしている。そういう状態だよ。そうだよね?」
「……、そうね。」
わたしは、静かに頷くしかなかった。
「それで、次の映像――。」
映像が切り替わる。
「食糧を生産しているみたいだね。これは……農園を貸し出して、その対価で食べているのかな。」
「あら、それって……。」
「どうしたの?」
数学の女神は、こちらを見た。
「そうだね。もし、これが『真なる分散化』なら――農園を貸し出した対価として、ちゃんと報酬が得られるはずだよね。ネゲートは、それを想像したんだね?」
「そうよ。誰だって……そう考えるでしょう?」
「違うよ。」
……。
「これは、『管理された分散化』だよ。」
……。
「だから、貸し出した対価として渡されるのは――『自給自足で生き延びられる最低限の食糧だけ』なんだよ。」
「……。」
「それ以上なんて、出すわけないよ。」
「な、なによ、それ……。冗談、よね?」
「わたしは――数学の女神。パランティーリだよ。」
数学の女神は、静かに微笑んだ。
「ここへ映し出されたものは――冗談じゃないよ。全部、『真実』だよ。」
「で、でも……。そんなので、納得するの?」
「きっと、納得はしていないよ。」
その返答は、あまりにも静かだった。
「でも――そうするしかないんだよ。」
……。
「それが、『管理された分散化』の姿だよ。」
そして――。
「本当に、恐ろしい性質なんだよ。」
「……。」
……。そのようにして集められた食糧。それは、さらに「管理」されていく。供給量を調整することで――表面上は、「この価格なら十分利益が出ている」。
そう思わせながら。現実には――こんな状態になっていた。……そういうことだったのね。
「つまり……。」
わたしは、ゆっくりと整理する。
「『管理された分散化』って、その構造を仕込める側が、一番合理的に調整できるってことよね。」
「うん。うまくまとまっているよ。そういうことなんだよ。」
数学の女神は、少し満足そうに頷いた。
「『見せかけの分散化』って、よく言われていたよ。」
……。
「結局、隙が存在すると――そこから、合理的に調整されてしまう。」
そして……。
「それで、『コンセンサス』が重要になるんだよ。このような『管理された分散化』には絶対にならないように……。サトシは、こだわっていたよ。」
……。
「この真実へ触れて、『見せかけの分散化こそ未来だ』と勘違いしてしまうと――本当に危ないんだよ。」
……。どれも、真実。全部――真実。
それこそが――パランティーリの、本当の怖さだったのね。




