106, あれと相関する世界線は、クリプトによる数学的否定に抗えず、次々と消滅していったわ。
……。SHA-256に浮かぶ刻印。
その場面から、急に映像が切り替わった。
そして今度は――フィーを映し出したわ。
……フィーは。いったい、何をしているのかしら。
どこか苦しそうな表情を浮かべながら――何かを、見つめている。
……ちょっと。いま、フィーの目の前にも――真実を映し出す石が、あったわ。
「……、フィーはね。チェーンの管理を任されていたんだよ。」
数学の女神が、静かに説明し始めた。
「もちろん、それは同時に――わたしと同じように、パランティーリへ触れながら、移りゆく時の流れを編み込んでいた、ということでもあるんだよ。」
「……。チェーンの管理を任されていたことは知っていたけど……ここまで深く関わっていたなんて、初めて知ったわ。」
「だって、フィーだよ。数と空間の相関については……フィーだよ。」
「……。そうね。」
……それは、認めざるを得なかった。
「分岐していく世界線。そして、分岐していくチェーンだよ。」
数学の女神は、ゆっくりと続けた。
「似たようなものなんだよ。どれを本流――メインストリームにするのか。そういう話なんだよ。」
「……。そこにも、あったのね。クリプトが示した、『数学的証明』の意味。」
「わかってきたんだね。」
数学の女神は、少しだけ安心したように微笑んだ。
「あの世界線問題はね。本当に厄介なんだよ。」
……。
「どれが本流になるのか。そんなもの、どれだけ精密に計算しても――思った通りには、絶対にならないよ。」
その声には、どこか疲労が滲んでいた。
「だから、争いが絶えなかった。」
……そう。本流を巡る争い。
「そこで――クリプトへ、『究極の仕掛け』を埋め込んだんだよ。」
わたしは、息を呑んだ。
「強制的に、目的の世界線を『本流』へ固定するための仕掛け。」
そして――。
「それが、『SHA-256に浮かぶ刻印』だったんだよ。」
……。
「それで……。」
わたしは、静かに呟いた。
「クリプト……仮想通貨で、『あれ』を数学的に否定させる。」
……。
「そうだったのね……。」
その瞬間。わたしの中で、無数の点が繋がった。
「たしかに……。『あれ』と相関していた世界線は、その数学的否定へ抗えず――次々と消滅していったわ。」
「……『あれ』、だね。」
数学の女神の表情が、一瞬だけ鋭くなった。
「そこは……うっかりでも、注意だよ。」
……。厄介な、世界線の本流問題。そうね――あの仕組みには、わたしも賛同できない。
なぜなら――あのままでは、恒久的な平和なんて絶対に成立しない。まるで、何かを永遠に楽しみ続けるためだけに設計されたみたいな。そんな仕掛けばかりだった。
……だからサトシは、SHA-256とクリプトを使って――その構造ごと、きずなごと……、一気に、解決した。
……そういうこと、だったのね。




