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義兄の思慕

ナージャ視点?です。


シリウス、ナージャ、リリーを乗せた馬車がヴァンデル家に止まる。

使用人たちが迎える中3人は馬車から降りた。


「ようこそおいで下さいました。恐縮ながらわたくしめがご案内させて頂きます。」


夫人と面会を依頼したが夫人は部屋に居るらしい、その代わり執事が屋敷を案内する。


「…ここがヴァンデル公爵家…始めて来ます。」


王都にあるのに流石は一番古く伝わる歴史を持つ公爵家、ブロッサム家もそうだが大きい…。


「同じ公爵家でもヴァンデル家はブロッサム家より歴史は長いですからね。」


リリーも同じように思ったみたいだ。


「数十年前に王家の第二王子が降下してヴァンデル公爵家当主になりましたからね。リリーのお爺様とは少し違います。」


そう、ここに降下した元第二王子は側妃の子であるレベンス・ブロッサムと違い、正妃の子供と言われてる為、ブロッサム家より格が高いと有名だ。

実際はヴァンデル家とブロッサム家は同格の権力を持っているが、ヴァンデル家の方が上とみている人の方が多い。


そしてヴァンデル家の当主はブロッサム家よりもプライドが高い。

完璧主義者だ。


「少し…空気が重いですね?」


ナージャはそれを分かっているからレティシアは苦手だ。

ロザリアと違いレティシアはどこからみても完璧令嬢、全く隙が無い。


「どうぞ、こちらにお入りください。」


執事に部屋を通してもらい部屋に入るとそこには夫人ではなく…


「ようこそ、ヴァンデル家へ」


レティシアの義兄…レザード・ヴァンデルがいた。


なんで彼が?私たちがヴァンデル夫人に会う為に来たのに?


「…御機嫌ようレザード様、夫人にお会いできると思ったのですが、夫人はどちらに?」


リリーが挨拶してから自分が疑問思っている事を問う。


「久しぶりだねリリー嬢、君とは公爵家のお茶会で会った時ぐらいかな?悪いけど、義母は急な用事で出かけているんだ。だから俺が君たちの相手をさせて貰うよ?」


夫人が居ると言って連れて来て貰ったのに…急用なんて…。


「…レザード様、初めから僕たちが来ることは想定内でしたか?」


え?どういう事なの?


ナージャは動揺するが、レザードはシリウスの問いにただニッコリと微笑む。


でも答えないという事は肯定していると同じ…。


「…そうですか、お姉様はレティシア様とまだいらっしゃるのですね?という事はお姉様は王城に居ない…一体どちらにいらっしゃるのでしょう?」


リリーも何かを理解したのか続けてレザードに質問をぶつける。

でもレザードただ微笑んでいるだけだ。


「二人は賢い…頭がよく回る。…でも君たちには何も出来ないよ?」


「何も出来ない…?どうしてですか?」」


「ナージャ嬢それはね、俺がここに居るからだよ?」


言っている意味が分からない…でもレザード様がここに居るという事で私たちが何も出来ないという事は…つまり目の前いるレザード様は…敵?…ま、まさか…。


「ナージャ、そういう意味です。彼がここに居るという事は僕たちが知りたい情報は得れないという事です。」


「でも、これはこれで裏付けは出来ます。レティシア様の過去にお姉様と同じ復讐を望むことがあったという事。…レザード様、貴方がここに居るという事はそういう事ですよね?」


淡々とシリウス様とリリーは答える。こういう時の二人は案外似ている…冷静だ。


「…リリー嬢、君はグレン君の行動に一喜一憂する子だったのに強くなったね?シナリオと全然違う…。シリウス君もだ。ナージャ嬢を取り戻す為に嫌いな父の言いなり人形だったのに…これもシナリオと違う。」


カムさんが言っていた“乙女ゲーム”の話。

こ…この人も知っている!?


「…レザード様…貴方もシナリオを知っているのですか?」


「そうだよ、ナージャ嬢…俺も君達が慕っているカルフェン・クラベルと同じ“転生者”なんだよ。だからレティにこの話を教えてあげたんだ。」


何ともないと言う様に余裕の顔で微笑むレザードに皆警戒する。


「…貴方はレティシア嬢の味方なんでしょう?その事をわざわざ教えてくれるなんて、どういう風の吹き回しですか?」


シリウスは警戒する様に睨みつけるがレザードはそれを楽しそうに見ている。

でも次第に表情が暗くなった。


「…そうだよ。俺は常にレティの味方だ。…でも味方でも正直、面白くない…レティが他の誰かに懸想するなんて…ましてや既に死んでいる奴にいつまで囚われているやら…。」



…レザード様?もしかして…。


「…レザード様はレティシア様を想っていらっしゃるのですか?」


女の直感というものが働く。

レザード様の表情からみてもレティシア様の名前を出すとき愛おしい様に呼ぶ。

嫉妬…彼はレティシア様の想い相手に嫉妬している。


「…どうだろうね?…レティは義理の妹だ。でもレティがあんな事にならなければ、俺はここの養子にならなかっただろう。俺が彼女に抱えている気持ちは恋愛的なものにも、恩人にも似ている。実際は良く分からない。」


レザードは考える様に窓の外をみる。

今レザードはレティシアを思い浮かべているのだろう。

過去に彼とレティシアに何かあったのかは分からない。

でもレザードはレティシアの事を大切にしている。


「…ならば彼女を止めないのですか?レティシア様の事が大事なのでしょう?」


「…ナージャ嬢…貴女は優しい。でも俺が止めてもレティは俺を捨てて自ら動くよ。あの子はそれだけの力がある。周りを切り捨てても徹底的に行うだろう…奴の為に。それだけレティの心の傷は深いんだ。なら傍にいて見守ってあげるのが義兄というものだろう?」


「何も出来ないからって彼女の復讐に助長するなんて、正気の沙汰ではありません。これは国の問題に関わるのです。復讐の為に動けばレティシア嬢は捕まり処刑されるのですよ?それを貴方は分かっているのですか!?」


シリウスが怒鳴る。

それもそうだ。これは再び国同士の戦を引き起こすきっかけになるかもしれない。

それにルーベルト殿下がそうならない様に動いている。

捕まればレティシアは反逆罪として処刑されてしまうのだ。

大切な者ならやっぱり止めてあげないといけない。


「…レティが失敗するとでも?…しない為にあの子は色々動かしている。だからシナリオを教えたんだ。」


レザード様の目に狂気が帯びる。

その顔にナージャが怯むと、シリウスが守る様に隠した。


そんな中、リリーが表情を崩さずレザードを見据える。


「だからお姉様を利用しようと思ったのですね?直接手をだしたのはブロッサム家という事にしてレティシア様を隠せる。でも、それで思い通りになると思いますか?」


「…ふふ、どうだろうね?君たちの希望であるカルフェン・クラベルはどうやらロザリア嬢の元に行ったみたいだし、ルーベルト殿下もファシアンの第二王子を止める為に動いている。…でもレティはそれを初めから分かっている。…ルーベルト殿下はロザリア嬢の元には行かない、彼の代わりにカルフェン・クラベルが動く。」


「…お兄様を殺すつもりでレティシア様が動いても、お兄様は殺されはしませんよ?お兄様にはグレンがいます。マリアン様、マリオット様がいます。負けはしません。」


レザードの威圧に負けずにリリーは対抗している。

それだけ皆を信頼しているからこそだ。

3人は強い。王子の護衛として買われるぐらいの実力を持っている。


「そうだね、まさかここに来ると思っていたグレン君がいないのは驚いたよ?自分のナイトを外すなんて何て無謀なお姫様だ。ここにも危険もあることは分かっていたのだろう?戦えない騎士とお姫様2人…わざわざ捕まりに来たとしか思えない。」


レザードの言葉と同時に扉の方で数人の気配がする。

初めからシリウス達を捕えるつもりだったらしい。


「…単純に捕まりに来たと思いますか?」


シリウスはレザードに怯まず余裕の表情だ。


3人ともマリアン達みたいに戦えない。

でも、そんな事は初めから分かっている。

だからリリーはその為にある対策をした。

それを聞いた二人はかなり驚愕したが…。


「…そうか…君達も馬鹿じゃないか。捕えようとすれば、それこそ君たちの罠に嵌るかな?」


レザードが何かを感づいた様で苦笑する中、リリーは微笑む。


「はい。だからレザード様、もうやめましょう?まだ未遂のままです。レティシア様を止める為に力をお貸しください。このままではレティシア様も苦しんだまま復讐をするでしょう。お姉様が仰っていました。『大事と思うなら止めてあげる強さも必要』…大切な人ならば貴方も戦いましょう?」


リリーは小さい頃にロザリアに教えて貰い今でもロザリアの言葉を大切にしている。

この子を強くしたのはロザリアだ。


「ロザリア嬢か…あの女も俺は嫌いだ。レティはあの女に随分ご執心でね…正直な気持ち、あの場所で消えて欲しいぐらいだよ。」


レザードはロザリアの事を考えているのか憎らし気に表情を歪める。

レティシアがいくらロザリアに執着しているからって憎む理由はない。


この人は恋愛ではないと言ってもレティシア様が誰かに心を向ける度に嫉妬するぐらい、レティシア様の事が好きなのだわ…。


「レザード様…その気持ち、レティシア様に伝えましょう?」


自然に前に出る。


「…ナージャ嬢?」


レザードは言われた意味が分からないっている表情している。

それでもナージャは言葉を紡ぐ。


きっとこの人はレティシア様への想いを諦めている。

だから味方になるしかないと思ったのだわ。

そうする事でレティシア様が自分を見てくれると思った。

子供が親に嫌われたくなくて従うのと同じ。


「…貴方はレティシア様を大切に想っている。ならば貴方がレティシア様を止めるべきです。その想いをレティシア様に言い、もう復讐しないでと伝えましょう?復讐を望むほどレティシア様が深く傷ついているなら、貴方がその傷を癒してあげて下さい。貴方がレティシア様の大切な人になってあげて下さい。」


「…。」


レザード様の表情が急に硬くなった。


大切な人を失い傷ついたレティシア様の傍に居れるのも、支えて上げられるのもレザード様しかいない。

この人は自分も犯罪に手を染められるほど、レティシア様を想っている。

レティシア様にはこの人がいる。

諦めずに立ち向かわなければならない。


「レティシアの苦しみを救えるのは、レティシア様を愛するレザード様だけなんです。私達も貴方に協力します。だから一緒にレティシア様とロザリアを止めましょう?」


レザード様の目がナージャを映す。

そこには狂気は無かった。ただ表情もなく呆然とナージャを見ている。


やっぱりこの人はレティシア様を常に考えている。

でも彼女が悪い事をしている事に本当は心を痛めているのだわ。


「…ナージャの言うとおりです。今度は貴方の本当の望みの為に動きましょう?」


レザードに言い、シリウスはナージャに微笑む。

その眼は優しい、労わってくれるような目だった。


「…参ったな…愛じゃないって言っているのに…。君の言葉はまるで包み込むような温さがあるね?まるで母親みたいだ。」


「…母親?」


「それはナージャ様が聖母様ですからね。」


「ええ、二人の弟を面倒見ていたから余計にそう思えるのでしょう。」


レザードが苦笑しているし、リリーとシリウスが嬉しそうに微笑む。

突然、何故その話になるのだろうと目が点になった。


そして緊張感からほんわかなムードになる。


「…悔しいな…こんな年下に諭されるなんて…。いいよ。君たちが知りたいことを教えてあげる。…その代わりレティが執着しているシーマの影を消してほしい。」


ようやくレザードが分かってくれたらしい。

止めれる味方が増えるのは心強い。


「そのシーマという人の死が、レティシア嬢を動かしている原因なんですね?」


「そうだよ。当時シーマはレティの従者だった。彼は10年前ロザリア嬢と同じように攫われては死んだ。レティはずっとシーマの事で悔やんでいるんだ。」


シリウスの質問にレザードは頷く。

レサードは座って話そう言い、ナージャ達はカウチに座った。


そしてレサードは話を続ける。


「当時、レティは我儘を言って従者を使いに行かせたらしい。その所為でシーマは死んだとレティは嘆いた。完璧令嬢と言われたレティが壊れるぐらい…その出来事で没落寸前の伯爵家である俺がヴァンデル家に跡継ぎとして養子になったんだ。」


当時は騒然としていたらしい。

完璧を求めるヴァンデル家で、レティシアは常に完璧にこなしていた。

でも自分が我儘を言った事で大切な人が死んでしまう。


大切な人を失い悲しみに暮れるレティシアを家族は見放し、伯爵家の三男であるレザードが養子に来た。

レザードは没落寸前で貴族から平民なるところを養子にして貰ったそうだ。

そしてレザードはレティシアに出会い一緒に生活するにつれレティシアに惹かれ、何とか元気を出してほしくて前世の記憶にある乙女ゲームの話をした。

でもそれが彼女を狂わせる切っ掛けになってしまうとは思わなかったそうだ。

そして今に至る。


「目標が出来たレティは日々日々にロザリアに執着したよ。『必ずロザリアと共に復讐を果たす。それが自分の全てだ』と…それだけレティは亡くなった従者の為に全てをかけている。…せめて彼女の望みが叶った時、自分がレティの次への生きる理由に成れればいいと思っていたんだ。」


「…なりませんよ。聞いている限りに恐らくレティシア嬢はその後、死を選ぶ…それだけシーマさんの気持ちで心を占めているなら、やはり止めるべきです。」


シリウスの話を聞きながら、ナージャは少し考え事していた。


レティシア様は亡くなった従者を心から愛していた。

レティシア様がまるでロザリアみたいに思えた。ならこれから起きる事はロザリアにとって最悪な事になり兼ねない。


「…なら、猶更急がなければなりませんね。レティシア様とお姉様はどちらに?」


リリーも同じことを思ったのか、焦りの表情を見せる。


「…ロザリア嬢とルーベルト殿下の攫われた場所…かつて人攫いの拠点だった港町だよ。」


「僕たちも行きましょう。恐らくもうカムさんたちも向かっているはずです。」


レザードの言葉にシリウスが席を立ち向かう様に促す。

リリーもナージャも頷いた。


「なら、行きながら話の続きをしよう。…馬車の手配をする。少し待っててくれ。」


「分かりました。でも護衛達に少し伝言があるので僕たちも一緒に行きます。」


レザードに頷き皆で部屋を後にして玄関に向かうと玄関の外に驚く相手が待っていた。

リリーはその相手の顔を見るとすぐさま駆け寄る。


「お義父様、来てくださったのですね?」


「リリー、急ぎと聞いて来たが無事だったようだね?」


ニッコリと微笑む顔に見覚えがある。

笑顔なのに周りを圧倒させる事が出来る威圧、先ほどのレザードなんて比べようのない程だ。

そう、リリーが戦えない自分たちの為に対策として呼んだのは…グレイス・マーカス侯爵。グレンの父。


誰もが驚く相手にリリー以外の全員が唖然とする。

それもそのはず、グレンとリリーにとって一番苦しめられた相手だ。

その男がまさかここに来るとは誰も思わないだろう。


「…まさか、この御方が来るなんてリリー嬢は容赦ない子だね?流石に俺が勝てる相手ではないよ?」


レザードは苦笑しているが、顔は青ざめている。

シリウスもナージャも心の中でレザードに同情した。


その気持ちも分かる。相手は休職中だけど大臣で“元英雄”、そして国王陛下、宰相、そして妻のシルヴィアの実家である大公爵家を後ろ盾に持つ人だ。

肩書きだけじゃあなく自身もその名に相応しいほどの実力を持つ。

まさしく最強、いくら名高い公爵家でも容赦なくやられるだろう。


周りの人達はマーカス侯爵をみて頭を下げているが、明らかに怯えている。

誰よりも強い威圧を放つ者が、この場に居るだけでも絶大的な効果を発揮している。

何かをする様な馬鹿はいない。


「…もう少しで君がこなければ、お邪魔したけど必要なかったようだね?」


「有難うございます。お義父様、何とかなりました。…我儘を言ってごめんなさい。」


リリーが頭を下げるとマーカス侯爵はそんなリリーの頭を撫でる。

あの時みたいに禍々しい雰囲気ではない。


話は聞いていたけど、マーカス侯爵はグレン様とリリーに謝罪したらしい。

そしてグレンは多少引きずっている様だが、リリーはグレンの為に去年の出来事から少しずつ会話できるよう努力している。

少しずつ改善して、いつかは仲のいい家族になれればいいと思って。


「君を困らせる相手なら容赦なく潰せるよ?例え相手が外務大臣だろうが、その子息と公爵家そのものを潰すなど私には容易い事だ。そうだろう?」


マーカス侯爵は狂気を混ぜた目をレザードに向けて見据える。

直接見られていないのに、体が震え血が凍りそうになる。

明らかに脅しだ。でも誰もがその言葉に青ざめ動けない。


「お義父様大丈夫です。私はそんな事を望みません。それより今から私はある所に向います。お義父様にもまたお願いがあるのですが聞いてもらえますか。緊急なんです。」


「…いいだろう。話してみなさい。」


リリーがマーカス侯爵に話している間、レザードは馬車の手配をする。

マーカス侯爵から逃げる様に…。


「…リリー…今から行くところは危険だ。私が兵を連れて行けば、すぐ解決できる。君たちが行くのは止めなさい。」


「いいえ、大事にしたくありません。それよりルーベルト殿下の方をお願いしたいのです。ルーベルト殿下が無茶をしない様に、お義父様には出来るだけ時間を稼いでほしい。これはお義父様たちにしか出来ません。隣国相手では私たちは何も出来ない。…お願いします。」


マーカス侯爵のいう事は確かだ。

向こうは殺そうと待ち構えている。その中で自分の身を守れない者が行っても足手まといだろう。

でも自分達でも出来る事はある。

マーカス侯爵はブロッサム公爵と共にルーベルト殿下の足止めをしてくれればルーベルト殿下の方も何とか出来るかもしれない。


「…分かった、向こうに私の従者たちがいる。王家の近衛兵並みに強さを持つ、君たちの護衛に連れて行きなさい。決して無理しない様に。」


マーカス侯爵は何とか納得してくれた。


「お義父様、有難うございます。」


リリーも嬉しそうだ。


「私も今から王城へ赴く。ずっと休みだったから城の輩はさぞかし喜ぶだろう?何せ、ファシアンの会合に何度も出席してほしいとずっと連絡が来ていたからな。」


「‥マーカス卿、申し訳ありません。また父は貴方を頼るでしょう…」


シリウスは頭を下げる。

マーカス侯爵は先の戦争を止めた人物…誰もが彼に助けを求める。

“英雄”として白羽の矢を立てるだろう。


「構わん。そんなのは今までずっとだ。そいつらのごますりより義娘のお願いの方が嬉しい。それに事が済んだらリリーから素敵なものを見せてくれる約束になっているからな?」


素敵なもの?


シリウスとナージャは不思議そうに首を傾けると、リリーは少し引きつった笑みになる。


「…はい。楽しみにしてくださいませ。」


マーカス侯爵はそれを聞くと満足そうにニッコリと微笑み王城へ向かった。

それと同時にレザード様も準備が出来たと伝えに来る。


「リリー…、マーカス卿に何を言ったのです?」


馬車に向かう中、シリウスがリリーに質問する。


「…学園祭のダンス…私のクラスは去年のお姉様の所みたいに男女交換で『姫と騎士』をするのです。」


まぁ、リリーとジュリアは去年のロザリアと一緒で騎士の男装をするのね?

そう考えるとナージャはウキウキしていた。


「それがマーカス卿に何か関係あるのですか?」


それでもシリウスは疑問になる。…確かに言われてみればそうだ。


「…ダンスの時、私は何故か当時のお爺様の衣装に似たせたものを着る事になりまして…グレイス様はそれが見たくて、話をした日から凄い期待を寄せているのです。」


レベンスが第三王子だったころに着ていた正装をする事になったリリー

一人の生徒が提案した事により、リリーの衣装はすぐ決まった。


それを知ったグレイスはものすごい笑顔だったらしい…。


「…まだ学園祭でもないのに凄いプレッシャーです…。」


苦い顔して呟くリリーに、つい憐みの目を向けてしまう。


…それはご愁傷様というべきか?


そんなこと考えて馬車に乗った。



読んで頂き有難うございます。


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